暴走老人! (文春文庫 ふ 29-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167773267

作品紹介・あらすじ

役所の受付で書類の不備を指摘され、突然怒鳴り始める。コンビニで立ち読みを注意されて逆ギレし、チェーンソーで脅しをかける。わずかなことで極端な怒りを爆発させる老人たちの姿から、その背後にある社会や生活意識の激変を探り、人間関係の問題を指摘して、「暴走老人」の新語を世に定着させた話題の書。

感想・レビュー・書評

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  • 時代背景もあるんだと思います。物珍しさとか思想が。
    本の中身全てが老人について触れているわけではない。偶然出くわした迷惑な老人と老人に対する偏見が書かれているように感じた。暴走老人なんて過激な言葉を使ってはいるけど暴走若人もたくさんいる。どうしてこの内容で本の題名を暴走老人にしたんだろう。うやむやな感じのまま読み終えました。

  • この本が出た10年前はきっと驚きを持って受け止められたのかもしれない暴走老人、今や珍しくないものとなってしまった・・

    P47 「待つこと」が何もない人生は、間違いなく不幸である。

    P182 透明なルールはおおむね他者への関与を回避することで成り立っているともいえるからだ。【中略】「知らないと恥ずかしい」「知らないと損をする」という真理は、見えないルールをキャッチしようとこの内側に仕組まれたアンテナのようなものだ。【中略】暴走する新老人とは、新常識に順応できず、うまく乗り切れないために情動を爆発させるしかないシステム化社会の鬼っ子ともいえるのではないだろうか。

  • 【本の内容】
    役所の受付で書類の不備を指摘され、突然怒鳴り始める。

    コンビニで立ち読みを注意されて逆ギレし、チェーンソーで脅しをかける。

    わずかなことで極端な怒りを爆発させる老人たちの姿から、その背後にある社会や生活意識の激変を探り、人間関係の問題を指摘して、「暴走老人」の新語を世に定着させた話題の書。

    [ 目次 ]
    序章 なぜ「新」老人は暴走するのか
    第1章 「時間」(暴走する老人たち;待つことをめぐる考察;変容する時間感覚;ネットワーク)
    第2章 「空間」(凶器の選択;独居する空間;膨張するテリトリー感覚)
    第3章 「感情」(透明なルール;丁寧化する社会;警笛としての新老人)

    [ POP ]
    役所で怒鳴り続ける老人を目にしたことをきっかけに、公共の場で争いを起こす、時代に取り残される新老人の怒りを考察した。

    「『待つ』から『待たされる』へシフト」の章が印象的。

    3年前の単行本の時とは世の中が変化している。先端部分が淀みを見せる今、年配者の経験が活きる場面が増えるのでは。嵐山光三郎の解説「暴走老人は私である」も力強い。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • これはなかなかに面白い本だった! と思ったのだった…

    ヽ(・ω・)/ズコー

    本書が文庫化されたのが2009年なんですけれども、当時よりもさらに情報化社会へとなりつつある現代に警鐘を…僕は鳴らしたいのだけれども、人々はそんな僕に構うことなくスマホに夢中だし…この先、どうなっちゃうの!?

    みたいな危惧を抱かずにはいられないですね、本書みたいな優れた書を読むと…。

    まあ、そんなわけでいかにも老人だけが酷くなっている、みたいにタイトルだけ見れば感じるかもしれませんけれども、全世代、情報化社会に取り込まれちゃって知らず知らずのうちに内面が変わってるよー、みたいな主張の本でした。おしまい。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • この言葉、池上彰が石原慎太郎に対して使ってました。いきなりキレる老人、犯罪に走る老人、ゴミ屋敷等の問題を、時間・空間・感情という3つのキーワードで分析しています。
    確かにテレビのニュースでも、この年齢で?と首をかしげたくなる犯罪が多いのは事実。決して老人は枯れていないという事でしょうが、徒党を組んだ物はほとんどなく、孤独な犯罪が多いのが哀れを誘います。

  • 「時間」「空間」「感情」それぞれの領域に於いて、今の老人が若い頃に過ごしてきた環境との乖離があまりにも大き過ぎるが故に、老人がそれに順応できずにイライラしている。斎藤美奈子女史の書評にある通り、老人は暴走してもこの本はあくまで暴走はしない。というか、もっと暴走してほしかった。
    藤原氏の指摘の中には、別に新老人「だけ」が暴走する根拠にはならないのでは?と思う点も。例えば第三章「感情」、若者が薄氷を踏む思いで他者との関わりを持っているなら、それと対比される老人はむしろ心が広くて、キレ得るのは若者ということにならないか?また現代のやり方を解さない新老人はトラブルメーカーにはなるかもしれないが、それはあくまで単なるトラブルメーカーに過ぎず「暴走」まではいかないのでは?そして藤原氏自身、文庫版での追記で、「暴走老人」は「暴走現代人」と容易に言い換えられるとしている。だとしたらこの本は、暴走老人とのタイトルではあるものの、実際にはもっと幅広い人に"適用"できる内容なのかもしれない。
    「暴走老人」という言葉はこの方が作ったものだろうか?だとしたらこの言葉を作った功績は大きいと思う。なぜって、今現在暴走している老人があまりに多いように思えるから。(→追記:石原慎太郎に「暴走老人」と言ったのはどうも田中眞紀子らしい。)

  •  近年、若者の凶悪犯罪の減少とは反対に、65歳以上の高齢者の刑法犯が増えている。(1989→2005で高齢者人口が約2倍のところ約5倍)分別があってしかるべきとされる老人が不可解の行動で周囲と摩擦をおこし、暴力的な行動に走ることがある。筆者は、こうした高齢者のことを「新老人」とよび、時間・空間・感情の観点からその背後にある社会の変化を読み解く。

    *時間
     情報化社会の進展で、待つ時間を極力排除するようになり「待つことは待たされることになった」。待つことに対する許容の範囲が狭くなり、特に体が時間に追いつかないという焦燥感を抱えた高齢者にとって待たされることは耐え難い。

    *空間
     川の字文化から個室文化へ。単独世帯では家自体が個室空間となり、家の壁がテリトリーの堺として意識され、敏感になる。個を守る家族という緩衝剤を失って隣家との諍いが直接ぶつかり合う。

    *感情
     丁寧化していく社会。社会学者アーリー・ラッセル・ホックシールド『管理される心』で述べられた「感情労働」に関する話が興味深い。「体は売っても心は売らない」「笑顔はただ」「またのお越しを心よりお待ち申し上げます」「患者さま」「生徒さま」・・・いかなる状態においても笑顔を絶やさない演技力が評価され、人間の表情があらかじめ「心」とは分離されたテクニックとして捉えられているのだと指摘する。

  • 面白いかどうかは置いといて、ちょっと思っていたような内容ではなかった。

    内容として老人が取り上げられてはいたが、決して老人問題を論じる内容ではないというか・・

    というわけで申し訳ないのですが★2つで。

  • 平成24年5月24日読了。

  • 数年前、突然、キレる老人が増えてきた、というニュースがよく流れた。
    「暴走老人」という言葉があちこちで使われたが、本書は、その言葉を世に定着させた本らしい。
    老人の暴走を「時間」「空間」「感情」をキーワードに考察している。

    「老人」だけを問題にしているのかと思っていたが、読み進めていくうちに「老人」だけに当てはまる話ではない事に気がつく。
    突然、キレるのが目立ったのがたまたま「老人」というだけなのだ。

    「暴走老人」という言葉が先か後だったかは忘れたが「クレーマー」「モンスターペアレント」等という言葉もある。
    また、そういう言葉にはなってないが、「子供」「青年」「中年」も突然、キレる事がある。

    その根っこになる原因の一つとして、一番、印象に残ったのは
    「コミュニケーション能力の不足」

    「キレる」という事は、一方的なコミュニケーションの断絶、対話の拒否。

    インターネットや携帯電話が普及し、コミュニケーションの手段は格段に進歩したはずだが、皮肉にも直接、人と対話する能力は低くなってしまったのだろうか。
    コミュニケーション能力、と言われたら、自分は高い方ではない、というより低い方に分類されるので、あまり偉そうな事を言えた義理ではないが・・・。

    やろうと思えば、かなりの事がメール等、人と面と向かう必要なく、話をする事ができるが、人と直接、話をする機会とメールで済む機会があったら、直接、話をする方を選ぶようにしたい。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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