JAPANサッカーに明日はあるか (文春文庫 く 33-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167773731

作品紹介・あらすじ

岡田武史監督の言う「ベスト4」は希望的観測ですらない。プロリーグ発足、W杯共催でサッカー大国に名乗りをあげたはずの日本だが、南アW杯の結果次第ではサポーターの支持を一気に失うことさえ考えられる。世界のサッカーに通じたジャーナリストが、日本サッカーの現在を冷静に分析し、明るい未来への展望をリポートする。

感想・レビュー・書評

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  • 「JAPANサッカーに明日はあるか」
    岡田監督の言う「ベスト4」は希望的観測ですらない。世界のサッカーに精通するジャーナリストが、日本サッカーの現在を冷静に分析し、明るい未来への展望をリポートする。


    南アフリカで行われるW杯で、ベスト4を目指すと声高らかに宣言した岡田監督率いる日本代表が、東アジア選手権で3位に終わったとき、私は「これはベスト4はかなり厳しいな」って思いました。


    もともとベスト4に入ること自体、かなり難しい。過去18大会で72チームがベスト4に進出しているけど、72チーム=72ヶ国ではもちろんなく、72チーム=24ヶ国と捉える必要がある。さらに、その内訳は、W杯優勝を経験しているウルグアイ(2回)、ブラジル(5回)、イタリア(4回)、ドイツ(3回)、アルゼンチン(2回)、フランス(1回)、イングランド(1回)の7ヶ国だけで、実に44回を占めているんです。これは、改めてみても、凄い。


    特に、ドイツ、ブラジル、そしてイタリアは、ほぼ2大会に1度はベスト4に食い込んでいるんです。とてつもない安定感で、これぞ、強国にふさわしい実績です。しかし、見方を変えると、これだけ強い国でも2大会に1度はベスト4進出を逃しているということになります。そのときは、国民やメディア、OB代表選手や監督から、一斉に非難をされるとき。その凄さは、日本とは比べ物にならないわけです。以上、これがベスト4進出の難しさ。これほどハードルの高いベスト4を岡田監督は掲げていたわけです。


    では、岡田監督は、ベスト4を目指す具体的なプロセスと根拠をファンやメディア、選手に提示し、それを実践してきたのか。もっと言えば、日本サッカー協会は、ベスト4を目指すことに対して本気で取り組んでいたのか。これらについて、著者である熊崎氏は言及しています。


    また、日本代表のことだけではなく、Jリーグベストイレブンや中村俊輔選手とトゥーリオ選手、国見高校、流通経済大学、海外のスポーツ新聞などにも触れていますが、一番印象的な箇所は「責任の所在が曖昧な体制」という所です。


    06年W杯、日本代表は日本歴代最高とされる才能達を抱えて、ドイツに乗り込みました。しかし、直前で行った親善試合では、ドイツと互角の勝負を演じたかと思えば、マルタに押さえ込まれる2面性を改めて露出し、チームの方向性は固まらないまま、本番に挑み、そして、初戦では、ヒディングとジーコの監督としての力の差を思う存分見せ付けられ、そのまま、体制を立て直せずに、グループリーグ敗退。


    その失敗を日本サッカー協会は本気で反省し、検証することなく、川淵氏が「あ、オシムって言っちゃったね」というまさかの形で、次期日本代表監督を発表しました。これを聞いたとき、正直がっかりが底をつき、呆れてしまいました。トップがこの様だから、日本サッカーは強くならないんだと、メディアを誘導して、本筋はほったらかしではいかんだろうと、これじゃあ、ドイツで戦ったチームは何を思えばいいんだろうと。


    そして、オシムが代表監督を退任せざるを得なくなったときも、確か川淵氏は「岡田しかいない」と言っていましたよね。あれも、「メディアにそんなこと(きっと、俺はトップとして仕事しているぞ、健在だぞと振舞いたかったんだろうと思っていますw)と言う前に、岡田監督と真っ先に話し、全てを決定してから、公式会見でメディアに言えばいい」と未だに思うんですよね。それが、プロとして代表を率いて戦う岡田監督への信頼だし、選手への敬意だと思うんです。まぁ、話は逸れましたが、そんなところにも触れています。


    ちなみに、10W杯のベスト4は、ウルグアイ、ドイツ、スペイン、オランダ。ウルグアイは通算5回目、ドイツは12回目、スペインは2回目、オランダは4回目のベスト4進出でした。

  • 南アフリカW杯も、残すところ、3位決定戦と決勝戦の2試合になってしまった。僕の住んでいるタイでは、ほとんど全ての試合を一般チャンネルで放送しているので、ここ1ケ月は、かなり寝不足の日々が続いている。日本代表の試合を除くと、これまでで最も印象的な試合は、オランダ対ブラジルの試合。前半は、ブラジルの楽勝という様子の試合だったけれども、オウンゴールを境に全く様子が変わってしまい、逆転はされるし、退場者を出してしまうし、ブラジルにとっては悲劇的な試合になってしまった。ブラジルほどのチームが、ここまでガタガタになってしまうのは驚きだったけれども、サッカーもかなりメンタルの占める割合が大きなスポーツだな、とあらためて感じた。ドイツ対アルゼンチンの試合も、開始早々に先制されたアルゼンチンが時間が経つにつれてあせりを見せ始め、2点目を決められた後は、やっぱりチームとしてはガタガタになってしまった、という似たような、しかし、同じように印象的な試合だった。日本代表は下馬評を全く覆す活躍で、嬉しいサプライズ。デンマーク戦の本田と遠藤のフリーキックは、すごかった。残念ながらパラグアイ戦は負けてしまったけれども、評価に値する結果だったと思う。ところで、先週、日本に出張で帰国し書店を覗いた際に、この本もそうなのだけれども、日本がW杯で惨敗することを前提に書かれた、と思える本がいくつか目についた。書籍の場合には、雑誌と違って、企画・執筆・出版に時間が必要なため、W杯期間中に日本代表や日本サッカーを論じる本を出版しようとすれば、事前に結果を想定しておくしかなく、その予想が見事にはずれた、ということなのだろう。残念でした、という他ない。今回のW杯で日本代表が良い結果を残せたのは、もちろん、選手が頑張ったからということなのだけれども、岡田監督の戦術と選手起用、それから直前のコンディションづくりを含めた事前準備が、見事に、はまったことも大きな理由の1つだと思う。しかし、例えば、カメルーン戦で攻められている時間帯に先に点をやってしまっていたら、あるいは、実際にカメルーン戦で勝ち点3を奪えなかったとしたら、ブラジルやアルゼンチンに起こったようなことが、日本にも起こっていた可能性はある。勝負事は紙一重なのだな、とあらためて思った。

  • サッカーの本を読み漁った人間には基礎的な意見が多く、食い足りない内容。
    文庫本で買える手軽さだし、初心者向け。
    読後感はとても淡白。

  • デンマーク戦に3-1で勝利した後読みました。もっともな納得のいく内容で読みやすかった。私個人はサッカーファンの一人で、岡田監督についてはフランス大会の時、カズ・北沢をメンバーからはずしてから全く評価していません。JAPANサッカーとはとあらためて考えてみると、イビチャ・オシム氏の著書を読みたくなりました。

  • 20100611読了。文庫らしくさくっと。水捌けいい人工芝がきになる。

  • 読むまいと思ってましたが、文字デザインが可愛いくて、つい。明日からの、少なくとも2週間くらいについては、シビアなことは言わない。とにかくがんばるのみだ(笑)。

    例の「ベスト4」をはじめ、今の日本代表とその報道を見ていて、たいていの日本人が思うことのいろいろが、現状に対するダメ出し満載で解説された、思いっきり季節・企画もの(笑)。かといって筆致は攻撃的ではなく、腹の立たない範囲。記事の中で指摘される、「体力の浪費」ってのはシンプルでわかる気がするなー。

    総花的で、消化不良なところもあるような。カメルーン・エトーのピッチ外のチームの支配ぶりって、ちょっとやっかみ入ってる?「もっと世論を作れ」という主張もわかるけれど、日本は「サッカーが法律を越える国ではない」(←あたりまえっぽいけど、『W杯に群がる男たち』で、南米などとの違いを端的に表していて、ほーっと思った)から、そこまで行くのは難しいんじゃないかなぁとも思ったり。この国は「道楽」でくくれる活動に関して、結構シビアだから…野球でも、そこまで行ってないと思いますし。

    基本、日本代表は、Jリーグ創立後に拍子抜けするほどあっさりと「世界」に乗り入れる機会を得てしまったために、各国や人種ごとのフットボールスタイル、「得点と天秤にかけて、アリかナシか」的なピッチ上の行動など、処理しきれないことがダーッと押し寄せてきて、アップアップしているという感じに近いのかなぁと思います。あっさり読めちゃって、もうちょっと掘り下げて勝負してほしかった印象の本でした。とりあえず、最初の3戦では、「あのプレーはよかったねぇ」といえるプレーが1つでもある試合を熱望…って、この本の感想なのか、W杯の感想なのか、どっちなんだよー、私!

  • 100606朝日新聞書評

  • 2010/5/28 Amazonより届く
    2010/5/31~6/1

    アジア代表のワールドカップでの戦績から岡田監督のベスト4がいかに難しい目標か、と論じているのは説得力がある。ただ、まあ「ベスト4」発言についてはいろんな意図もあると思いたい。
     世界でも有数の資金をもつJFAに対して、マスコミや我々はもっともっとモノ申さないといけない、という意見には大賛成。そういう意味でもツイッターはブログ以上に影響力を持てるのではないか。

  • なんともバランスの悪い内容でダメでした。
    ブラジル大好き~が表出し過ぎ。

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著者プロフィール

1971年生まれ。岐阜県出身。ライター。30年近くサッカーを中心としたスポーツの取材を続けており、これまで訪れた国と地域は約50。行く先々でスタジアム巡り、草サッカー観戦に加え、サッカーにまつわる壁画の探索を精力的に行なっている。好きな選手はマラドーナ。好きなお菓子は柿の種。趣味はまったく打てない草野球。著書に『日本サッカーはなぜシュートを撃たないのか?』(文春文庫)、『ゴール裏で日向ぼっこ』(駒草出版)、『カルチョの休日』(内外出版)などがある。
FC ROJIマガジン http://fcroji.com

「2018年 『サッカーことばランド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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