不貞の季節 (文春文庫 た 81-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167808013

作品紹介・あらすじ

貞淑な妻を部下に寝取られ、独り自慰に耽る中年男の妄執。若気の至りの稚児趣味と、その無残な結末。快楽教に堕ちた男女の、狂宴の一夜。ロマンポルノの女王・谷ナオミの、哀しいほどに潔い半生。倒錯した性を描きながらも、なおも飄逸味を失わない傑作四編。緊縛の文豪が老境にして切り拓いた新境地を見よ。

感想・レビュー・書評

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  • 谷ナオミさんの映画を梅田で観たのを思い出した。なぜか卒論で使うという女友達と、京大生男子と三人で…。貴重な体験でした。いたってまともな人なんだなという印象。ドキドキしながら読めました。けど再読はないかな

  •  先日読んだ『赦す人――団鬼六伝』の中で、タイトル作の短編「不貞の季節」について、かなり紙数を割いて言及されていた。それで興味を抱いて読んでみたしだい。

     「不貞の季節」「美少年」「鹿の園」「妖花 あるポルノ女優伝」の4編を収めた短編集である。

     「不貞の季節」は、団鬼六の最初の妻が不倫に走り、それが原因で離婚に至るまでの顛末を元にしたもの。『赦す人』と併せて読むと、どのあたりが脚色されているのかがよくわかる。
     古い言葉で言えば「コキュ(cocu=妻を寝とられた男)もの」、流行り言葉で言えば「NTR(ネトラレ)もの」である。

     団は妻の不貞を知って見苦しいほど動揺するのだが、それ以前に自分はさんざん不倫をしたり愛人を囲ったりしているのだから、妻に対する激しい怒りは身勝手と言うしかない。
     それはともかく、「NTRもの」としてはなかなかよくできた小説である。映画にもなったそうだ。

     他の3編も自伝的な作品であり、元ネタになった話が団のエッセイの中に登場している(『一期は夢よ、ただ狂え』など)。エッセイと読み比べてみると、それぞれがかなり脚色されている。

     団鬼六の作品にはSM小説と一般小説の二系列があるわけだが、本書に収められた4編にはそれぞれ強烈な性描写があり、一般小説とSM小説の中間に位置するものといえる。

     団が私生活においても長く交友を結んだ、ポルノ映画における「SMの女王」――谷ナオミを描いた「妖花」が、際立って面白い。もう少しふくらませて長編にしてもよかった気がする。谷ナオミの波乱万丈の半生自体がドラマティックだし、彼女は女優としても、一人の女性としても魅力的だ。

  • 面白い。人間が、苦しむのも歓ぶのも、エロだってことがわかる。団先生のエッセイも好き。

  •  SM文学の巨匠として知られる団鬼六の自伝的小説を集めた短編集。

     
     読了して、多用される四字熟語やふんだんに使われる漢字、引用されるマゾッホの著作などにより、団鬼六の書く物はエロ小説ではなく、やはり官能小説なのだという印象を受けた。


     人間の心情描写や生き様に焦点を当てた構成とソフトな性描写のため、純粋にエロティックな文章が読みたい人にはお勧めしない。
     団鬼六作品の入門編としてか、団鬼六氏はどんな人だったのかと自伝的小説を求める人に薦めたい。

  • 初団鬼六小説にトライ。

    「ポルノ小説」というよりは、むしろ普通の小説を読んでいる感覚に近かった。
    きっと、作家ご本人と小説の主人公の経歴や女性遍歴がかなり重なっており、
    私小説に近い分、「作られた」感が無いからと思われる。
    女性の着物の柄や、ビジネスに絡む人間関係におけるそれぞれの登場人物の
    心理等、「エロ」とは関係無い描写も、細部まで丁寧にされており、結果的に
    小説全体における「エロ」の度合いが減っているものと思われる。

    確かに、これを勧めてくださった人の評どおり、充実した性的描写も存在する。
    しかし、それ以上にヒューマニズム、つまり人間の心の葛藤等、
    そのエロに到達するまでの必然性が力強く描かれているため、単純な官能小説に
    終わっていないところが団鬼六小説が評価される所以かと思われる。

    性的対象とされる女性の登場人物の美しさ、魅力も、かなり読ませる
    一因となっている。性に興味のある方なら、女性にもオススメできる。

  • 「美少年」目当てで。ノンフィクションじたてというか、実体験と虚構の織り交ぜが団鬼六らしい諧謔みがありました。
    表題不貞の季節、リベンジポルノでは?と思われかねんが、というか女優と寝たのも打ち明けてるしそれで飯食ってるんだからさすがというかなんともはや…
    「美少年」は性同一性障害じゃないかなぁ。という感

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著者プロフィール

団 鬼六(だん・おにろく):1931年滋賀県彦根市生まれ。57年、文藝春秋「オール讀物」新人杯に「親子丼」で入選。執筆活動に入り、SM官能小説の第一人者となる。89年に断筆宣言。95年『真剣師 小池重明』で執筆再開。代表作に『花と蛇』『不貞の季節』『美少年』『落日の譜――雁金準一物語』『死んでたまるか――団鬼六自伝エッセイ』『一期は夢よ、ただ狂え』、秘書を務めた長女・黒岩由起子との共著『手術は、しません――父と娘の「ガン闘病」450日』ほか小説・エッセイ・評伝等著書多数。2011年逝去。

「2024年 『大穴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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