女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)

著者 :
  • 文藝春秋
3.50
  • (29)
  • (135)
  • (134)
  • (25)
  • (2)
本棚登録 : 1210
レビュー : 129
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907082

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 文庫で読み返し。私が「村上春樹ってどれから読んだらいい?」と聞かれたときにオススメするうちの一冊。
    分かりやすくて、村上春樹らしさも詰まっている。この二つはなかなか相反するものなのですが、この短編集だったらわりにバランスが整ってるのかなぁと。

    何年ぶりだろうか、オススメしてるくせに内容はほとんど忘れてしまってましたね。イエスタデイが好きだった覚えがあるんだけど、今回は「ドライブ・マイ・カー」と「独立器官」が良かった。
    妻に不倫をされている俳優の「別の人格になる」というワザは私も少し使えるような気がする。また元の人格に戻って、でも戻ってきたときは、前とは少しだけ立ち位置が違っている。私ももしかしたら家福みたいに、そういう風にしか自分を動かすことができないのかもしれない。
    また、独立器官の渡会医師みたいに独立した器官を用いてしか恋もできない。自分のなかのどこかにある独立器官に想いを馳せる。

  • 村上春樹は男性なので、その作品は男の方が共感しやすいと思っている。今作はタイトルからして「男たち」で終わっているので、まさに男を描いた物語であり、一応、自分も男なので愛着と興味をもって読めた。自分は男が「去られた女」の話など、あまりするようなものじゃないと思っているので(獲物を取り逃がした能力の低い男)、この短編集はいわば語られなかった話の集まりで、秘蔵品であり、とても貴重なもののように感じた。男も傷ついた場合は、その傷から目を背けるだけでなく、オレは傷ついているんだと外に訴えても良いのだと思う。

  • 「木野」と「女のいない男たち」が好き。
    どの話も始終読んでいてずっと小雨の中にいるような気持ちがした。大雨でもくもりでもなく、小雨。

  • 村上春樹らしい、安心して読める完成度。どれも女性を失った男の話だが、それぞれに違う味付けで読める。
    個人的に、「木野」みたいに(いつもの)ファンタジーに持っていくものよりも、あるいは表題作のようにただただ繰り出される比喩の嵐に身を任せるようなものよりも、現実から離陸しきらない最初の三本が、いい意味で村上春樹らしくなくて好きであった。その点、シェヘラザードはバランスが良かったようにも感じられた。
    いないということでむしろその女性の存在が無限に膨れ上がるという痛切な気持ちに呑まれてしまった。

  • 村上春樹作品に出てくる独特で、孤独感のある男たちを様々な角度から見ることができた。

    誰も悲しませたくはないけど、こんな風に思われてみたいと思ってしまった。

  • 本書は「いろんな事情で女性に去られた男たち、あるいは去られようとしている男たち」を主役に据えた6篇からなる短篇恋愛小説集。

    いずれの話も、その料理のされ方は様々で、すべて異なった料理が作り出されている。小難しく言えば、同工異曲な作品集。音楽業界で言うところのコンセプトアルバム的短編集と言った方がわかり良いかな。

    この6つの短編をごくごく簡単に解説。
    ⑴ ドライブ・マイ・カー
    死別した妻の若い恋人とバーで語り合う舞台俳優の夫

    ⑵ イエスタデイ
    好きゆえに手を出せず友人に彼女を差し出す超の字がつく純情浪人生

    ⑶ 独立器官
    独身で人当たりもよく、常に複数のガールフレンドがいるプレイボーイが思いもかけず深い恋に落ちるも、自分ばかりか夫も棄て第3の男と失踪したと知り、無惨に転落していく整形外科医

    ⑷ 木野
    同僚に妻を寝取られ退社し、都心の一角でバーを始めるも、ある時を境に怪しい気配が店を包み旅に出る男

    ⑸ シェエラザード
    週に一度の逢瀬の後、「千夜一夜物語」よろしくベッドで聴かされる彼女の奇譚を心待ちにする一方で彼女を失う不安に苛まれる男

    ⑹女のいない男たち
    夜半過ぎかつての恋人の夫から電話で彼女の自死を告げられて以降の男の困惑と心象風景を淡々と描く

    何れもこの設定-主に女性が去る・先立つ・自殺する-は、村上春樹の作品-ノルウェイの森・国境の南、太陽の西・ねじまき鳥クロニクル-等でも見られる。本書も含め共通して言えるのは、女性側が不実を働き、男がその現実を淡々と受け入れ、自身の非を探し、認め、諦念する。

    村上春樹の小説は、裏切られた側からの「ほとばしる激情」「憤怒」といった、負のエネルギーの発露はなく、海の向こうの戦争を眺めるかのような他人事的距離感を取り、時間をかけ再生を図ろうとする。そのあたりを「文学性の欠如」と指摘する向きもあるが、「風の歌を聴け」以降、一貫して登場するのは、虚無的で孤高な主人公であり、その生き方に「強さ、逞しさ」を見出し励まされている読者もいるわけで、はたして「“文学性”とは何ぞや?」という原理主義的疑問は文芸評論家の専権事項レベルの話だと思う。

    村上春樹の得手とする舞台設定ゆえにか、奔放な筆致で書き進めた感じがびしばし伝わり、どの作品も不幸な男の話で身につまされずにいられないのに、終始ニヤニヤしながら読んだ。

    いかにもこれぞ村上春樹ワールド全開あり、変態性を帯びたエロチカあり、関西弁横溢あり、久々の村上春樹の短編の妙味を楽しめた。

  • 不在を描いている
    影になっているのは悲しみ
    あるいは寂しさ

    この人がいないまま進んでいく人生の
    そこはかとない 虚しさ

    影が闇にならないように
    自らの物語に光を照らす

    不在が産んだ夜の中で
    自分という星を探す物語

    一つの気づきで物語は終える

    傷ついたという痛みと
    悲しみが影となって対となる光が射し込むこの世界は

    なんて美しくも優しいのだろう

  • 春樹さんはもっぱら長編派だけれども、短編ながら夢中で読んだ。まえがきがあるのは珍しい(特に本編への影響はなし)。どれも読みやすい。相変わらずのまわりくどい(でも個人的には好ましい)言い回し。誰も彼も、居なさそうで、でも居そうな人物達が魅力的です。ほんとに居たら面倒くさそうだけど。

  • 村上春樹を読むと、世の中には男と女しかいなくて、その間のセックスと言う行為は人生において大きな意味を持つんだなと思わされる。

  • 【村上春樹による最新短篇集】「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」他全6篇。最高度に結晶化しためくるめく短篇集。

全129件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。
1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴があるが、芥川賞は候補に留まっただけで受賞しておらず、賞に対する批判材料となっている。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年の発表時期は日本国内でニュースになっている。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。
フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけており、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家として成長を続ける。
代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。

女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)のその他の作品

女のいない男たち 単行本 女のいない男たち 村上春樹

村上春樹の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印

女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)を本棚に登録しているひと

ツイートする