女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1782
レビュー : 188
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907082

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。
    とくに「木野」は一流の現代版怪談だと思う。
    それぞれ結末は読者が想像するのだが、そんな結果もいらないと思うほど満足を得られた。さすが大先輩の村上春樹だ。
     ふと気がついたのだが、初期の春樹作品には解説があったと思うが、世界的作家になってからの作品には解説がないように思う。ノーベル賞候補作家には解説などおこがましくて誰も書けないのかなぁ。

  • 読みやすいと思う、と勧められて読んだ初めての村上春樹。面白かったです。
    「木野」が一番好きです。情景が目に浮かびます。根津美術館裏手のバー、灰色の猫、雨、蛇…
    悲しくも不思議でちょっとホラーなそのバランスが絶妙でした。
    また、男たちにとって女がいる意味が最もよく分かったのは「シェエラザード」でした。閉ざされた世界とやつめうなぎ。これから主人公は毎晩川底にいる夢を見るのだろうなと思います。

  • 久しぶりに読んだ。
    村上春樹は長編の方が有名だと思うんだけど、独特の言い回しと比喩、そしてずっとセックスがどうとかの話をしているイメージが多いから(実際にしているのだけど)敬遠する人も多いと思うんだけど、これは割と読みやすいと思う。

    「木野」は私の好きな村上春樹と言う感じ満載で、とても良かった。

    あとは「独立器官」が好きだ、読んでいてとても切ない。
    「好きになりすぎると気持ちが切なくなって、つらくてたまらない、その負担に心が耐えられそうにない」だとか「全てを取り去ったあとに残る自分は何者だろう」とか、心に刺さる言葉がたくさん出てくる。

    私も一度でいいから、理不尽な力に振り回されるような、そんな恋がしたかった。

  • 6人の「女のいない男たち」、あるいは「女にいなくなられた男たち」を描いた短編集。
    それぞれに繋がりは全くないけれど、どの主人公も皆どこか似ている。

    それぞれ死別なり浮気なりで女に去られてしまった男たち。取り残された男たち。
    皆、その喪失にうまく折り合いをつけることができず、日々の生活の中で彷徨っているよう。

    後半に進むにつれて、現実と非現実の狭間で浮遊しているような物語が増えた。あるいは、非現実の濃度が濃くなっていった。非常に村上春樹ワールドらしい作品群。

    最終編の「女のいない男たち」は、ほぼ非現実の世界だ。

  • ベトナム行きの飛行機とトランジットの韓国で。ちょうど読み終わったタイミングで朝日が昇った。よい本でした。

  • 「木野」と「女のいない男たち」が好き。
    どの話も始終読んでいてずっと小雨の中にいるような気持ちがした。大雨でもくもりでもなく、小雨。

  • 一番印象的だったのは「独立器官」。すべてを取り去った後に残る自分とはいったい何者だろうという問いが深い。
    読み終わって数日後、ふと情景がよみがえってきたのが「木野」。柳の木と猫とバーの風景。最後の木野の気付きが切ない。

  • 村上春樹だから、タイトルから普通に想像するモテない男をわずかながらに期待しながら読み始めて、やはりいつもどおり、気持ちにどこか余裕のある男達が主人公であることに落胆しつつもほっとする。
    これ以上なくピタリとくる表現で流れるような文章。気負いがなく読みやすく、語彙があり、洒落ている。そして大方に於いて興味をそそる展開。
    JAZZ好きの作者らしく所々に挿入してくる音楽を思わず聴いてみたくなる。氏曰くエレベーター音楽とやらをネットで聞き入ってしまった。
    シェラサードの挿話である空き巣は、その世代の人が読んだら実践してしまいそうな説得力がある。木野のようななぞが残る展開も好き。独立器官も、大袈裟ではあるがそんな一面を人間は持ち合わせていると思う。ただ、恋をすべき10代20代に強く発揮しそうな気もするが。

  • 「女のいない男」を描いた短編6作品。
    死んだ妻の不貞の相手と友情を育む『ドライブ・マイ・カー』。
    変わり者の親友に恋人の共有を依頼される『イエスタデイ』。
    スマートな独身貴族医師の恋煩い死『独立器官』。
    身体だけの関係の主婦が語る魅力的な過去の数々『シェエラザード』。
    自分の心を閉ざすことで悪運に堕ちるバーの主人『木野』。
    そして表題の『女のいない男たち』。
    どの作品の主人公も悪意なく純粋で魅力的ですが、闇が深い。その闇の原因を女に求めているようで、女性読者としては「ちがうだろww」と草生える。

    • 大野弘紀さん
      良くも悪くも男性視点ですよね。
      身勝手で、幼くも弱い。

      それも含めて慈しめるか、突き放すかで読んだときのニュアンスが変わってくるよう...
      良くも悪くも男性視点ですよね。
      身勝手で、幼くも弱い。

      それも含めて慈しめるか、突き放すかで読んだときのニュアンスが変わってくるような気がします。

      違うだろ、というのが個人的には面白かったです。
      確かに、と、頷きました。
      2019/06/08
  • 本書は「いろんな事情で女性に去られた男たち、あるいは去られようとしている男たち」を主役に据えた6篇からなる短篇恋愛小説集。

    いずれの話も、その料理のされ方は様々で、すべて異なった料理が作り出されている。小難しく言えば、同工異曲な作品集。音楽業界で言うところのコンセプトアルバム的短編集と言った方がわかり良いかな。

    この6つの短編をごくごく簡単に解説。
    ⑴ ドライブ・マイ・カー
    死別した妻の若い恋人とバーで語り合う舞台俳優の夫

    ⑵ イエスタデイ
    好きゆえに手を出せず友人に彼女を差し出す超の字がつく純情浪人生

    ⑶ 独立器官
    独身で人当たりもよく、常に複数のガールフレンドがいるプレイボーイが思いもかけず深い恋に落ちるも、自分ばかりか夫も棄て第3の男と失踪したと知り、無惨に転落していく整形外科医

    ⑷ 木野
    同僚に妻を寝取られ退社し、都心の一角でバーを始めるも、ある時を境に怪しい気配が店を包み旅に出る男

    ⑸ シェエラザード
    週に一度の逢瀬の後、「千夜一夜物語」よろしくベッドで聴かされる彼女の奇譚を心待ちにする一方で彼女を失う不安に苛まれる男

    ⑹女のいない男たち
    夜半過ぎかつての恋人の夫から電話で彼女の自死を告げられて以降の男の困惑と心象風景を淡々と描く

    何れもこの設定-主に女性が去る・先立つ・自殺する-は、村上春樹の作品-ノルウェイの森・国境の南、太陽の西・ねじまき鳥クロニクル-等でも見られる。本書も含め共通して言えるのは、女性側が不実を働き、男がその現実を淡々と受け入れ、自身の非を探し、認め、諦念する。

    村上春樹の小説は、裏切られた側からの「ほとばしる激情」「憤怒」といった、負のエネルギーの発露はなく、海の向こうの戦争を眺めるかのような他人事的距離感を取り、時間をかけ再生を図ろうとする。そのあたりを「文学性の欠如」と指摘する向きもあるが、「風の歌を聴け」以降、一貫して登場するのは、虚無的で孤高な主人公であり、その生き方に「強さ、逞しさ」を見出し励まされている読者もいるわけで、はたして「“文学性”とは何ぞや?」という原理主義的疑問は文芸評論家の専権事項レベルの話だと思う。

    村上春樹の得手とする舞台設定ゆえにか、奔放な筆致で書き進めた感じがびしばし伝わり、どの作品も不幸な男の話で身につまされずにいられないのに、終始ニヤニヤしながら読んだ。

    いかにもこれぞ村上春樹ワールド全開あり、変態性を帯びたエロチカあり、関西弁横溢あり、久々の村上春樹の短編の妙味を楽しめた。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月刊行。2019年9月10日発売の『文藝春秋』10月号で「至るところにある妄想 バイロイト日記」を寄稿。

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