女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 668
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167907082

作品紹介・あらすじ

村上春樹による短編小説集。

舞台俳優・家福を苛みつづける亡き妻の記憶。彼女はなぜあの男と関係したのか…(「ドライブ・マイ・カー」)。
妻に去られた男は会社を辞めバーを始めたが、ある時を境に店を怪しい気配が包み、謎に追いかけられる(「木野」)。

ほか、「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「女のいない男たち」など。

封印されていた記憶の数々を解くには、今しかない。見慣れたはずのこの世界に潜む秘密を探る6つの物語。

濱口竜介監督・脚本の映画『ドライブ・マイ・カー』(2021年公開)原作。

感想・レビュー・書評

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  • 第94回アカデミー賞 国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」を観に行くため、再読する。

    映画そのものはアカデミー賞を受賞したとは言え、400字詰めで80枚分の短編小説を、なんと179分という長い尺に引き伸ばしたものだから、そんなに期待はしていなかった。
    でも、いい映画でした。
    感想を一言で言うと、「小説とはぜんぜん違うものになってるけど、なかなかいける」という偉そうな感じになる笑

    映画と小説との違いで気になったのは、主に以下の3点。
    ①主人公・家福がたばこを吸うこと
    小説内では吸っていないと思う。村上さんが昔吸っていて禁煙した人だし、ヘビースモーカーだった僕が禁煙したのも村上さんの影響を少し受けているので、とても気になった。
    家福が吸うのなら、サーブの中を禁煙にする意味がわからないし。

    ②妻の死因
    小説では子宮がん。映画はくも膜下出血。
    子宮がんはHPVの感染が原因で発症することが多い。だから、ある意味、不倫の代償的な意味合いが感じられる(最近読んだ吉川トリコさんの「余命一年、男をかう」で主人公が子宮頸がんになった原因は上司との不倫だ、みたいなくだりがあったので、なおさら)。

    ③映画では車の中でロックを聴かないこと。
    だって、タイトルが「ドライブ・マイ・カー」ですよ…と、思っていたのだが、小説の中でも家福はビートルズのこの曲を聴いているシーンが出てこない。聴いているのは、ビーチ・ボーイズやラスカルズやクリーデンス、テンプテーションズといったアメリカン・ロックだった。

    「ドライブ・マイ・カー」は人の多面性を受容することがテーマ。理屈ではなく、ただあるものとして受け止めること。それは自分自身を深くまっすぐ見つめることでもある。だから、とても難しい。

    なお、映画では短編集のうちの「シェエラザード」と「木野」のエピソードも散りばめられている。だから、予習としては短編集全体を読んだ方がいい。

    • aoi-soraさん
      たけさん、始めまして。
      フォローしていただき、ありがとうございます!
      本棚拝見しました。
      色々なジャンルの本を読まれていますね。
      「...
      たけさん、始めまして。
      フォローしていただき、ありがとうございます!
      本棚拝見しました。
      色々なジャンルの本を読まれていますね。
      「ドライブ・マイ・カー」映画観ました。
      かなり長編なので、寝てしまうかと心配しましたが、とても引き込まれる作品で良かったです。
      原作はまだ未読なのですが、たけさんのレビューを読んで、是非読むべき作品と思いました。

      どうぞ宜しくお願いします♪
      2022/05/28
    • たけさん
      aoiさん、はじめまして!
      あまり統一感のない本棚ですが、フォローありがとうございます!

      映画長かったですよね笑
      この短編集を読むと、また...
      aoiさん、はじめまして!
      あまり統一感のない本棚ですが、フォローありがとうございます!

      映画長かったですよね笑
      この短編集を読むと、また違う味わいを感じるかと思います。ぜひ読んでみてください!

      今後、本棚ちょくちょくのぞかせていただきますね!
      こちらこそ、よろしくお願いします!
      2022/05/28
  • 話題の「ドライブ・マイ・カー」を含む短編集。村上春樹さん読んだのは何十年ぶりかだったが独特の春樹節がいい感じで意外とするすると読めた。「イエスタデイ」「独立器官」「シェラザード」「木野」が印象的。愛すべき孤独な大人達のお話。

  • 映画、ドライブマイカーが話題になっていた為、かなり久しぶりに村上春樹先生の書籍を購入した。

    村上春樹先生なのだから、キッパリとした起承転結があるのではなく、自分でかなり考えなければいけない結末なのだろうなぁと勝手に想像していた。

    期待は裏切られなかった(笑)
    久しぶりに読んでも、村上春樹は村上春樹!
    何というか、文章が濃厚なんだな(笑)

    解釈は、人によってかなり変わるような気がするのは私だけかな??

    この映画も気になった。

    私は村上春樹先生が得意なわけではないけれど、やっぱり文章力というのは圧倒的で、読み始めたら取り憑かれたように読み終えてしまった。

    何だろうな?私は感想を書くのは本当に不得意なのだけど、この本には、大きな愛を感じた。

    本当に人を愛したことのある人は、この本に没頭してしまうのではないかな。。。と。

    村上春樹作品で、こんな陳腐な感想しか書けない私なんかが読む本ではないかもしれないが、やっぱり村上春樹先生って、凄い作家だわ。と思うような一冊だった。

  •  自分にとって、一番身近な存在だった女の人に裏切られていたことを知る男の人の物語。

    すべての女性には嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている。…一番大事なところで嘘をつくことをためらわない。そして、そのときほとんどの女性は顔色ひとつ声音ひとつ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女に具わった独立器官が勝手におこなっていることだからだ。(『独立器官』)

    「女の人にはそういうところがあるんです。」
    「頭で考えても仕方ありません。こちらでやりくりして、吞み込んで、ただやっていくしかないんです。」
    (『ドライブ・マイカー』)

     女の人の裏切りに、この物語の男の人たちは、感情を表に出すことがない。怒ったり、泣いたりすることはない。居場所や仕事を変えて淡々とした日々を送るように見える。(渡会医師の最期はかなり悲しいものになってしまったが)
     感情を表に出すことのない人との間にある、埋められない何かが、嘘や裏切り行為へと向かわせてしまったのかと思った。決してすべてを理解し合うことのできない人間関係の中の、どうしようもない孤独感のようなものを感じた。頭で考えようとしないで、人にはいろいろな感情があることを受け入れていくしかない、ということかなと思った。

  • 男性の悲哀を淡々と静かに描く短編集。
    身近な女性を様々な理由で失った男性たち。
    失った理由や過去の幸せだった日々に思いを巡らせ、悔やんで感情を押し殺す。終わることのない迷路をただぐるぐるとあてどなくさ迷う。
    側にいると気付かなかったことも、失って初めて気付く。この後の祭り感が男たちの情けなさを一層煽る。

    この悲壮感たっぷりの男たちを、映画『ドライブ・マイ・カー』主演の西島秀俊さんを見立てて読むと、熟成された男の色気を感じてしまうから不思議。
    「男と女が関わり合うというのは、なんていうか、もっと全体的な問題なんだ。もっと曖昧で、もっと身勝手で、もっと切ないことだ」
    こんな情けない男の世迷い言も、西島秀俊さんが言えば好意的に受け止められる。
    誰を役に当てるかで印象も違うもの。ちょっと贔屓目に見てしまった。

    映画『ドライブ・マイ・カー』の原作として読了。
    この他『シェエラザード』『木野』も原作として加わったらしい。

  • 久々の村上春樹。「ドライブ・マイ・カー」、「イエスタデイ」、「独立器官」、「シエラザード」、「木野」、「女のいない男たち」の6篇収録。

    何れも、男女の交わりと別れを男の目線で描いている。恋情とセックスの残り香が漂う作品達。

    「イエスタデイ」のエセ関西弁を操るナイーブな木樽の行く末、「シエラザード」で羽原が置かれたシチュエーションと(高校時代恋い焦がれる男子の家に空き巣に入ったという)中年女性シエラザードの現在が妙に気になった。「木野」は難解なファンタジー、「女のいない男たち」は抽象的でフワッとし過ぎてる。

  • 読書会課題図書

    ついでに、アカデミー賞云々で話題になったDVDもみた

    久しぶりの村上春樹
    私に音楽の素養がないので、いつも置いてけぼりをくう

    短編五編ともそれぞれ面白かった

    特に「イエスタデイ」が興味深かったな

    「読書会」では男性陣から
    「結局男は女性がいないとあかんねえ」
    「孤独やねえ」
    など……

    特に、印象に残ったのは
    「本当に他人を見たいと望むなら、自分自身を深くまっすぐ見つめるしかない」

    ≪ 深い愛 女のいない 男たち ≫

  • 本と出会うための本屋「文喫」映画「ドライブ・マイ・カー」コラボ展示「ある映画のための補助線」8月13日より開催 濱口竜介監督出演のトークセッションも | 日本出版販売株式会社のプレスリリース
    https://www.dreamnews.jp/press/0000241805/

    『ドライブ・マイ・カー』公開記念!今チェックしたい村上春樹原作の映画BEST7|カルチャー|ELLE [エル デジタル]
    https://www.elle.com/jp/culture/movie-tv/g37264719/harukimurakami-movie-select7-210812/

    村上春樹の短編小説「ドライブ・マイ・カー」映画化、西島秀俊が主演&“喪失と希望”の物語 - ファッションプレス
    https://www.fashion-press.net/news/66277

    映画『ドライブ・マイ・カー』公式サイト
    https://dmc.bitters.co.jp/

    「女のいない男たち」書評 祟りのように拡散、喪失の物語|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11615363

    文春文庫『女のいない男たち』村上春樹 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167907082

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      村上春樹と上田秋成 - 内田樹の研究室
      http://blog.tatsuru.com/2022/04/13_1712.html
      村上春樹と上田秋成 - 内田樹の研究室
      http://blog.tatsuru.com/2022/04/13_1712.html
      2022/04/14
  • なんだか疲れる。

    村上春樹作品を読むのは本当に久しぶりだった。もうウン十年前、大学生の時に、立て続けに読んでいた記憶がある。「ねじまき鳥・・・」や「羊をめぐる冒険」など、おもしろく読んでいた気がする。
    それから、ある時、パタっと読まなくなり、新刊が出ても特に興味を持てず、読まなかった。「海辺のカフカ」くらいまでは読んだ記憶があるけど、当時は読書記録なんてつけていなかった。

    久々に読んだ感想は、「あぁ、村上春樹だな」という気持ちと、「なんだか疲れる」だった・・・。

    構成や表現力や言葉の選び方は「さすが」と言わざるを得ないけれど、今の私には特におもしろみもなく、読むのに疲れた。「今の私には」に、村上春樹風に傍点を振りたい。

    ただ、繰り返しになるけれど、「さすが」とは思った。

  • 村上春樹さんの短編集はやっぱり面白い。
    特に本作はまえがきにも書かれているように、「女のいない男たち」という同じモチーフで、別々の話でありながら連作として捉えても面白いし、早くページをめくりたくてあっという間に読めてしまう。かと言ってサラッと読めてしまうのかというとそれはまた違って、村上春樹さんの作品を読むときのあのなんとも言えない感情、感覚をしっかり味わえる。読むこと自体、読む過程も楽しいし、読んだあともずっとじわじわと心に残る。

    この本をあんな風に映画にした濱口監督は凄い。

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著者プロフィール

1949年 京都府生まれ。著述業。
『ねじまき鳥クロニクル』新潮社,1994。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』新潮社,1985。『羊をめぐる冒険』講談社,1982。『ノルウェイの森』講談社,1987。ほか海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、2011年カタルーニャ国際賞、2016年ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞を受賞。

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