女のいない男たち (文春文庫 む 5-14)

著者 :
  • 文藝春秋 (2016年10月7日発売)
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 自分にとって、一番身近な存在だった女の人に裏切られていたことを知る男の人の物語。

すべての女性には嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつき具わっている。…一番大事なところで嘘をつくことをためらわない。そして、そのときほとんどの女性は顔色ひとつ声音ひとつ変えない。なぜならそれは彼女ではなく、彼女に具わった独立器官が勝手におこなっていることだからだ。(『独立器官』)

「女の人にはそういうところがあるんです。」
「頭で考えても仕方ありません。こちらでやりくりして、吞み込んで、ただやっていくしかないんです。」
(『ドライブ・マイカー』)

 女の人の裏切りに、この物語の男の人たちは、感情を表に出すことがない。怒ったり、泣いたりすることはない。居場所や仕事を変えて淡々とした日々を送るように見える。(渡会医師の最期はかなり悲しいものになってしまったが)
 感情を表に出すことのない人との間にある、埋められない何かが、嘘や裏切り行為へと向かわせてしまったのかと思った。決してすべてを理解し合うことのできない人間関係の中の、どうしようもない孤独感のようなものを感じた。頭で考えようとしないで、人にはいろいろな感情があることを受け入れていくしかない、ということかなと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説 日本
感想投稿日 : 2022年5月13日
読了日 : 2022年5月13日
本棚登録日 : 2022年5月13日

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