コンビニ人間 (文春文庫 む 16-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167911300

感想・レビュー・書評

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  • 「普通な人であること」とは何なのか、普通であることに何の意味があるのか。
    「同調すること」って何なのか、読者にトコトン突き付ける強烈な作品。

    この主人公、聴覚が突出して強く、次に視覚が強く、逆に味覚と触覚が弱いんだろうな。。。コンビニ店内のさまざまな音や商品の陳列に敏感で、人の話し方や服装をコピーすることに長けている一方、自分が飲食するモノには全く無頓着で、物理的な痛さやメンタル面の痛さにも鈍感。普通の人なら傷つくことも、平気で受け入れる。

    不思議なのは、感情を排除する性格ゆえに、相手の言葉やふるまいを、実に論理的に分析・解釈しているところである。「普通の生き方」という世の中の仕組みには馴染まないが、コンビニという「システム」には「1つの機能」として馴染んでいて、喜びを感じている。それでも、本人が喜びを感じているのなら良しとすべしなのか。本書の結末は、ハッピーなのかバッドエンドなのか評価しがたく、複雑な気分である。

    特に、コンビニの常連客である老女が、主人公に対して何度も発した「ここは変わらないね~」という言葉は、恐怖である。老女にとっては、主人公がコンビニというシステムの一部なのかも知れない。もっと言うと、店員(人間)ではなく、AIロボットに見えていたのかも知れない。



    自分のレビューを書いた後でビックリ!!
    フォローさせていただいているブク友様方、みんなこの本を読まれていました。
    いやはや、皆様方の素晴らしいレビューを拝読し、今回も二重三重に小説を楽しむことができました。

  • 引き込まれる文章だった。
    恵子の観察眼というか視点が、必ずしも間違っていないのが面白い。例えば、白羽さんのどういうところが論理破綻しているのかを的確に捉えているところ。白羽さんと比べると、真面目に悩む恵子はマトモなような気がしてくる。
    でも、自分の話し方や声のトーンを観察して周りに合わせる所や、感情が欠落している所は、あまりにもユニーク。

    物語としては、救いようのない話だった。
    恵子の家族だったら辛いと思う。
    世にも奇妙な物語でドラマ化されそう。

    これといって気づき等が見当たらず、あまりに捉え所が無かったので、正解を求めて、他の人の感想を検索してしまい、作者の術中にはまった気分になった。

  • 多様性が認められる現代だけど、外れた生き方や考え方を持つと爪弾きにされる。普通であること、常識的であることとは何か、ということを考えさせられた。
    人に迷惑をかけなければ、どんな人生の選択をしても良い筈なのに、極々普遍的な人生観を強要してくる人達に、果たして普通とか常識とかの境界線が不明瞭というか曖昧なものになってくる不思議な感覚を途中覚えた。
    確かに主人公や白羽さんは特殊な考え方を持っているな、と思うけど、ややもするとその通りかも、って共感するところもあった。
    割と少ないページ数であるものの、コンビニを舞台にコミカルでありシリアスであり、とても考えさせる良書と思った。

  • 軽妙な文章かつ約150ページとページ数も少ないため、あっという間に読了。

    最初の印象は、なんか不気味やしカタルシスも何もないし登場人物誰にも共感しづらいし、しんどー。
    やっぱ私には芥川賞受賞作は読みづらいな〜…ともやもやもや。

    でも気づいたら、なんだかこの本のことを考えてしまう。気になる。

    この本の主人公は、言ってしまえば明らかに発達障がいの特性を持っていて、幼い頃から「普通じゃない」と周りから見られています。

    そんな彼女がコンビニでアルバイトを始めてから、「コンビニ店員」として生まれます。彼女の感覚では、本当に生まれるのです。

    「私は人間である以上にコンビニ店員なんです」という主人公。

    人間としては「普通」でいる方法がわからない主人公が、声の出し方から笑顔の作り方、やるべきこと、人との接し方まで決まっているコンビニ店員としては「普通」を考える必要がない。

    ということは、たぶん彼女は強く「普通」でいることを願っているのかな?いや、そんな単純な話でもないか…

    そもそも「普通」ってどうあれば普通なのかな。
    「頼むから治してよ」と妹に懇願される彼女は、とはいえ何を治すべきなんだろう?

    この本は読む人によって、本当にいろいろな感想を抱きそうな気がします。

    読み終わったときに「面白かったー!」と手放しで感じられる本では決してないかもしれないけれど、読んでみて損はしない。
    そんな作品なんじゃないかと思います。

  • 突拍子もない登場人物のキャラ設定は理解に苦しんだが、社会の同調圧力や価値観の相違から来る生きにくさは共感出来る点も多々あった。

    親しみ易いキャラにせず安易に読書に迎合せずに世界観に引きずり込んで行く著者の筆力に圧倒された。

  • 「普通」という言葉の曖昧さを考えさせられた。
    生き方に正解はないのに、普通とそうじゃないって線引きをするのって確かにおかしいよね。
    自分は「将来の夢は何ですか?」と聞かれるのが今も苦手だな。

  • 人間は何を目指して生きてるんだろうな、遺伝子を残すことが目的であるのならなぜ働かなければならいんだろうか、と色々考えた。
    「普通の人間」がこの世における大多数の方であるという定義であるのならきっと自分は「普通の人間」では無いんだろうと思ったし、自分の遺伝子を残す理由もないなと感じた。
    世の中の人はみんな自分が解釈したいように解釈して幸せな匂いにまみれたいだけ。本当は他人理解になんて興味はないし、他人の幸せになんて興味がない。くさい匂いにまみれないようにくさい匂いであることを認識してない。真実なんてなんだなと。あるのは解釈だけだなと頭の片隅で思う私もいた。

    少なくとも私はひたすらにコンビニ店員として生きる恵子をかっこよく思ったし変人だなんて思わなかった。

  • 2回目の読了、やっぱり面白かった。。
    主人公の考え方は遠回しに言うと社会的にマイノリティの部類だと思うので、「こう言う考え方になるのかー」と新鮮で面白さを感じる反面、マジョリティに迎合しなきゃいけない、社会の一部にならなきゃいけない焦燥感はすごい共感できるので、この作品に引き込まれてしまうんだろうなと感じた。

  • 主人公に全て共感は出来ないけど、所々わかる部分もあった。どこからが普通のレールをはみ出すことになるのだろうか?若干飛び出してるくらいが自分らしくて良いよね?

  • 主人公は発達障害なのだろうなと思うけれども、社会不適合者などではないという感想。高機能自閉かな。コンビニに特化している。
    この本を読んでいる間、終始モヤモヤとあまり気持ちの良くない感情がついて回っていた。
    あちら側の人間とこちら側の人間、どちらに対しても、不気味な印象だ。
    まともだと思っている周囲の登場人物も、それはまともなのか?となる、考えさせられる小説だった。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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