- Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167911676
感想・レビュー・書評
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杉村三郎シリーズの第4弾。ドラマで小泉孝太郎が演じていて、すっかりファンになっている杉村三郎シリーズ。
第4弾は短編集で、時系列がちょっとややこしくて、
「聖域」「希望荘」は、実家から東京に帰って古家で探偵事務所をしている時の話で、「砂男」は離婚して実家に帰っている時の話、そして「ニ重身」は3.11の震災で、古家が危険になったので、新しく大家さんの竹中宅に間借りしてからのお話、になっています。
今回、とても思ったのは、杉村さんが底なしのお人好しなので、周りでフォローしてくれる人たちがどんどん増えて、とても人間関係が面白く、魅力的になって来てるなぁということです。
オフィス蠣殻の所長さん、ネットに強い木田ちゃんをはじめ、ビッグマムの竹中夫人、その息子のトニーこと冬馬くん、依頼者の息子の相沢幹生くん、私が気になっているのはオフィス蠣殻の調査員で折り紙マイスターの南さん。その他たくさんの人が杉村さんを支えてくれている。あ、「侘助」のマスターもいますね〜
割り切れないお話もあるけど、そういう魅力的な人たちが、少し癒してくれるように思います。
次の第5弾も楽しみです♪♪詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「誰か Somebody」「名もなき毒」「ペテロの葬列」に続く、杉村三郎シリーズの4作目。短編というには長い中編4作で構成されている。中では、「二重身(ドッペルゲンガー)」が、私は一番好きだった。ミステリーとしても、一番よく出来ていると思った。
前作「ペテロの葬列」で離婚した主人公の杉村三郎は、しばらく、郷里の山梨県で過ごすが、あるきっかけで上京し、私立探偵となる。新米私立探偵に多くの依頼がある訳ではなく、依頼は知り合い、知り合いの知り合いといった人たちからのもの。しかし、それらのうち、いくつかは思わぬ大きな事件に発展してしまう。
杉村三郎シリーズは、次作の「昨日がなけらば明日もない」が最後だと思う。早く読みたいような、読むのを先延ばししたいような。 -
安全、安心の杉村三郎シリーズ4作目。
Audibleナレーター井上悟さんの声が、馴染んだ布団のように聴き心地が良い。この作品に触れている間、脳内は幸せいっぱいに満たされる。
小説を読んでいると、ふと老後の準備をしているような気分になることがある。宮部さんの作品は特にそう。別に具体的ではなく気持ちの問題で、将来像から逆算して自分の現在地を測っているような錯覚に陥る。これはなぜだろう。
主人公は離婚、転職と人生ステージを変え、選んだ道は私立探偵。おかげで苦手な短編仕立てにはなってしまったけど、探偵・杉村三郎という宮部さんが好き(と信じている)理想キャラを通して人との接し方を見ていると、どうしようもなく楽しくなるのだ。
杉村は絶対に人を貶めない。相手との間にきちんと線を引き、またぐことなく同調していく。私は弱いので簡単に人を切ってしまう。コイツは嫌ってくるな、とか自己中だな、とか理由は何でもいい。自分が守れればそれでいいからだ。こうやって書いていても彼我の差には愕然となる。
ところで公立探偵っているの。警察のことなのかしらね。
人間臭くはあるのだが、内なる成熟、とか謙虚というのかなあ。言葉にするとごく当たり前のようでも、そこには言外の深い広がりがあることを教えている。
そんな気がする。 -
「誰か」、「名もなき毒」、「ペテロの葬列」に続く、私立探偵杉村三郎が主人公のシリーズの4冊目。「聖域」「希望荘」「砂男」「二重身(ドッペルゲンガー)」の中篇4本が収められています。
一読して最初に思ったのが、ちゃんとハードボイルドしてる!こと。主人公杉村三郎は、過去に負った心の傷をずっと引きずっているという一点を除き、心優しく「冷酷非情」「強靭な肉体・精神」などの言葉とは対極にいる、およそハードボイルドに主演するキャラクターではないので、文章の力だけできびきびと引き締まったハードボイルド感を盛り上げる作者の筆力はさすがです。
これまでに長編3冊を使って、まったく私立探偵に向きそうにない主人公がどのように心に傷を負い、どうして日本で私立探偵なんかをはじめることになったのか語られてきたのを読んでいたので、すぐに世界に入り込むことができました。シリーズであることがサブタイトル等に謳われていないため、本作を最初に手に取る人もいるかもしれませんが、できれば「誰か」から読むのをお勧めします。
ところで、このシリーズがマイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンシリーズ、とりわけ「A型の女」に大いに触発されているのは、「誰か」の後書きや、折り込まれている「杉村三郎シリーズガイド」に掲載されているインタビューで繰り返し語られており、さらにカバーイラストを描いているのは「A型の女」のカバーイラストを描いている杉田比呂美さんであることなど、作者の「アルバート・サムスン」シリーズへの傾倒が伺えます。
ですが、残念なことにこの「A型の女」、自分には翻訳が古すぎて、まったく楽しめませんでした。この際ですから、宮部みゆきさん、翻訳も始められてはいかがでしょうか。村上春樹とフィッツジェラルドの例もあることですし…。
もうひとつ、興味深いのは、この本に載っている4つのエピソード、それぞれ具体的な日付――2010年11月~2011年5月――が設定され、明記されています。もちろん震災について語りたかったのでしょうし、それは、主人公の言葉として(いや、蛎殻所長の言葉だそうですが)「あの震災で世の中が変わったところ、変わらなければならないのに変わり得なかったところ、変わりたくないのに変えられてしまったところ――それらのせめぎ合いから生じるゆがみが案件となって現れたものを扱うことになるだろう」と語られます。
これ、よくわかります。自分も、直接被害を受けたわけではありませんが、あの地震の前と後で物の見え方が変わったと思っています。作者ほど上手に言葉にできませんので、作者の言葉に激しく同意しておきます。
以下、各話に一言ずつ。
「聖域」
杉村三郎探偵事務所の記念すべき初仕事は着手金5,000円、報酬はごみ置き場掃除を半年代わってもらえる権でした。
一度は聖域で共に赦しを求める生活を送っていたはずのスターメイトに向ける早苗の悪意…お母さんの勝江さんと、鹿ノ倉風雅堂の人々、そしてサンクチュアリに暮らす人々が基本的にいい人たちであるだけに、際立っているその悪意に、この仕事を続ける以上これからもさらされるであろう杉村さんに同情してしまいます。
「希望荘」
妻に裏切られ、家を追い出された孤独な男、杉村三郎と共通点があって、すでに死んでいる人がこの話のキーマンです。不幸な生い立ち、不幸な人生に心折れることなく、憑き物に憑かれたようにして罪を犯してしまった青年すら大事にする、善意の塊のようなじいさんは、孫と心を通わせることもできました。
一方で、どこにも行くことができない田中帽子店の田中さん…。
暖かい気持ちに触れることができたかもしれませんが、やりきれない気持ちをも浴びせられる杉村三郎。上にも描きましたがこんなに激しく心を揺さぶられたら、普通の人ならしばらく人の人生に首を突っ込むことができなくなるんじゃないかと思うのです。
「砂男」
少し日付を遡ったときにおきた時間が扱われています。いったんは故郷山梨に帰った杉村が、どうして東京に戻って探偵事務所を始める気になったのかが語られています。時系列的に一番古い頃、杉村の傷口から血が流れる様子が傍目に見ても辛そうです。
人をいたぶることに喜びを感じるサイコパス、自らの身を滅ぼすことになったとしても嘘を吐いて生きていくことができない人たちなど、作者のお話に頻出するキャラクターが、いないにもかかわらずお話を盛り上げます。
なかなか鮮やかなどんでん返しがあり、また、解説に書かれている「管見に入る」感じがよくわかる一遍でした。
「二重身(ドッペルゲンガー)」
探偵事務所を訪れるのが若い女性(女子高生)であるのが「A型の女」と共通しており、ひときわ強く「アルバート・サムスン」シリーズの影響を感じます。杉村が明日菜にかける言葉に、年上の大人として、クライアントに対する探偵としての気持ちが混じり、距離感が微妙なのが読んでいて面白く感じます。まさに杉村と明日菜の会話を呼んで、「A型の女」宮部みゆきが翻訳したらいいんじゃね?と思うようになりました。
もうひとつ、震災に関して杉村(を通じて作者)が語る言葉に久しぶりにしみじみしてしまいました。自分はあの経験がなかったら今こうしていることはなかっただろう…と思います。
最後に。
宮部みゆきのインタビューが載っている「杉村三郎シリーズガイド」は初版限定付録のようです。できればこんなリーフレットではなく、ちゃんとこの本の巻末に載せてほしかったのになあ。ちなみにこのインタビューは「文藝春秋BOOKS」で読むことができます。なかなか面白いのでお早めにどうぞ。
あと、もうひとつだけ。
なかなかいいことのない杉村さん、早く親娘で探偵事務所ができるようになるといい、なあ。 -
人が殺されたってところから始まらないミステリー。杉村や周りの人のやさしい気持ちにじんわりしてたら、突如ミステリー。人間の善悪が入り乱れて、宮部みゆきは、現代もんがええのだけれどー。
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久々の宮部みゆき。シリーズ第4作。
前作ラストが後味悪すぎてかなり残念だった想いをさせられたにも関わらず、続編が文庫化されたのを見かけたらやっぱり思わず買ってしまうという(笑)。安定の宮部ブランド。
・・・読間・・・
【聖域】
宗教、怖っ。(作中の人物は「宗教じゃない」と言い張ってはいたが。)
バカ娘は、宝くじで(母が)当てた3億円を、何ヵ月で使い果たすのやら…(笑)。
今どき、家建てて高級ホテル住まいして、身なりも派手に暮らしていたらあっという間に無くなる額だろうに…。
【希望荘】
孫くん、可愛い。じいちゃん、恰好良すぎ♪またもや電車で落涙(恥)。
罪に走る人間の心の闇、、、一瞬の隙につけこまれる"どうしようもなさ"って表現……いつもの宮部節だぁ、と嬉しくなる♪
「遠山の金さん」が片肌脱いだ瞬間のような心地よさ。
【砂男】
杉村三郎が探偵事務所を設立するきっかけとなった事件。蛎殻の坊ちゃん、いい味出てる。
おハナシは・・・、いい感じにハラハラドキドキできたかな。ちょっと膨らませればこのネタで長編一本作れそうな内容で。
そのうち、後日談といおうか、続編といおうか・・・“杉村三郎の物語”として大きなエピソードがやってくる時のための伏線ともなりえるような。。。
【二重身】
大震災ネタ。発表は3・11より4年後だということと、こうして文庫化を待って読んだのが7年半後だということで緩和されはしたが、東北出身者としてはどうしてもやっぱり身構えてしまうネタだな。
幸いにして親類・知人に犠牲者はいなかった自分ですら"こう"なのだから………と考えると、心が痛すぎる。
★4つ、8ポイント。
2018.11.20.新。 -
杉村三郎シリーズ第4弾。
読み始めで探偵になっている杉村さんに出会いこんなだったっけと調べてみるとペテロの葬列を読んでなかった!読んでみてどうしようもなかったらペテロから読み直そうと読み始めたが結果問題なかったし、杉村三郎がどうして探偵になったのかもさり気なく描かれており助かった。さすが宮部先生。
4話からなる短編集なのだが、これだから短編は…となる感想がまったくないギュッと詰まった短編4話。
杉村三郎や周りの人は個性があり魅力的で素敵がゆえに、調査依頼の対象者、その周辺者の悪というか毒が強調される感じで良い。
警察がほぼ関わらないミステリーなのに面白くかけるのも流石です。
このあとペテロの葬列読みます。 -
宮部さんは、人の気持ちの描写、表現が凄いと思う。
短編集なので、事件の規模も謎解きもものすごく凝ってるわけではないのに読みごたえがありました。