Mr.トルネード 藤田哲也 航空事故を激減させた男 (文春文庫 さ 69-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913922

感想・レビュー・書評

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  • 藤田哲也氏という気象学者をご存知の方は少ないのではないでしょうか。アメリカで多発する竜巻のスケールを表す「Fスケール」という指標があり、そのFは藤田氏の頭文字なのです。竜巻研究で知られる藤田氏ですが、日本ではあまり知られていないもう一つの業績は「ダウンバースト」の解明でした。
    1970年代、アメリカでは離発着時の航空機の墜落事故が平均18か月に1度の頻度で発生していました。その多くが「原因不明」とされたり「パイロットの過失」として処理されていました。当時アメリカで竜巻研究で実績のあった藤田氏が事故原因究明に取り組み、「ダウンバースト」という局所的な下降気流が原因であると突き止めたのです。その後、パイロットへの研修、ドップラーレーダーなどの設置により「ダウンバースト」による墜落事故はほとんど無くなりました。
    ところが「飛行機による旅を安全にした」という巨大な功績を成し遂げているにも関わらず、アメリカの気象学会では当時は批判的な扱いを受けていました。新しい理論を公表し、それを認めてもらうには「査読」という他の研究者の厳しい目で検証されることが科学会のルールなのですが、藤田氏は「一刻も早く事故をなくさなければならない」との使命感から査読を経ることなく自説を広めようとしたために軋轢を生じていたのです。
    そのあたりのプロセスに関わった人達へのインタビューや、なぜこれほどの功績のある日本人科学者が日本ではあまり知られていないのか、藤田氏の生涯を辿りつつ解き明かしてゆくノンフィクションです。
    私自身もメソ(中小規模)スケールの気象に学生時代に関わっていたこともあり、身近なトピックスと感じて読んでみました。「予断をもって現象を観ない」、「研究に必要な装置は自ら設計する」など研究者として尊敬に値する数々のエピソード、「気象界のシャーロック・ホームズ」、「気象界のウォルト・ディズニー」、「視覚の科学者」等々の異名を持つ藤田氏の生涯を俯瞰できる1冊です。気象の知識が無くても全く問題なく読み通せます。

  • 書評サイトで高評価。興味ありのため

    藤田哲也、日本ではほぼ無名の気象学者。
    シカゴ大学教授、アメリカの気象界、世界の航空業界で名前を知らない人はいないくらいの有名人。

    竜巻の規模を示す「Fスケール」の発案者。FスケールのFはFujitaのF。

    飛行機が着陸寸前に失速、墜落する事故が相次ぎパイロットのミスとされていたが、これを気象現象の「ダウンバースト(マイクロバースト)」であることを発見し、証明した人。
    本書の副題でもある「航空事故を激減させた男」は大げさでも何でもない。

    残念なのは本書でも述べているが、気象学にノーベル賞がないことだ。
    もし、該当する賞があればとっていてもおかしくない偉人。

  • 289-S
    文庫(文学以外)

  • 興味深い。これから飛行機が着陸に時間がかかってもイライラしなさそう。

  • 竜巻の強度を示すフジタスケールの事は知っていましたが、それを考案したフジタ博士の事は全く知りませんでした。

    この本によれば、フジタは北九州の生まれで、のちにアメリカに渡り、かの地で生涯を閉じている。

    その生涯において、フジタスケールのほかに、ダウンバーストの発生を解明し、航空機事故を激減させたと言う事は知りませんでした。

    日本よりもアメリカで尊敬されている日本人。

    天才は変わった人が多いとも言いますが、フジタもその例に漏れない様です。本書中のエピソードには笑わずにはいられませんでした。

  • 素晴らしい研究者
    一気に 藤田氏の生涯を追いかけた最高

  • 3.85

  • すごい学者だな、という記録に残すための本だな。

  • 【ある気象学者の研究が、多くの人の命を救った】謎の飛行機事故が多かった七〇年代のアメリカで、事故原因をダウンバーストという気象現象だと突き止めたのは日本人天才科学者だった

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。東京大学文学部フランス語フランス文学専修課程卒業。同大学院人文科学研究科美学芸術学博士課程修了。埼玉大学助教授、東京大学文学部教授、日本大学文理学部哲学科教授を歴任。元国際美学連名会長。現在、東京大学名誉教授、国際哲学系諸学会連合副会長。文学博士。1982年、『せりふの構造』でサントリー学芸賞受賞。著書に『せりふの構造』『作品の哲学』『ミモザ幻想─記憶・藝術・国境』『美学辞典』『美学への招待』『日本的感性─触覚とずらしの構造』『ディドロ『絵画論』の研究』ほか。

「2016年 『講座スピリチュアル学 第6巻 スピリチュアリティと芸術・芸能』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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