風柳荘のアン (文春文庫 モ 4-4)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167914332

作品紹介・あらすじ

●日本初の全文訳・訳註付『赤毛のアン』シリーズ第4巻アン22歳、プリンス・エドワード島の港町で学校長となり、風柳荘(ウィンディ・ウィローズWindy Willows)に下宿する。アンに敵対する町の有力者プリングル一族、冷淡な副校長キャサリン、隣家の孤独な少女「小さなエリザベス」に心痛めるも、アンの明るさと誠実さ、グリーン・ゲイブルズのうるわしさと住む人々の慈愛が、幸せな明日へ導く。アンから、婚約者ギルバートへの恋文で綴る、幸せな3年間の小説。●アンの幸せな生き方「あなたは、美しいものとロマンスから出来ている小さな魔法の国に住んでいるみたいだもの。『今日の私は、どんな喜ばしい発見をするのかしら』……これがあなたの生きる態度よ、アン」『風柳荘のアン』二年目第5章●特徴1)日本初の全文訳モンゴメリが愛読者に捧げた「献辞」に始まる、日本初の全文訳。従来訳で省略・改変された部分を、モンゴメリの原書通りに翻訳。●特徴2)巻末訳註で380項目について解説ギルバートへの手紙にアンが書いている19世紀のファンタジー小説『北風のうしろの国』(ジョージ・マクドナルド著。C・S・ルイス著「ナルニア国物語」の結末に大きな影響を与えた)と本作との関連について解説。また作中に登場するシェイクスピア劇、テニスン、キーツ、ポー、ロングフェローなどの英米詩、聖書の句、移民国家カナダにおける登場人物の民族、人名の意味、19世紀カナダの料理と菓子、手芸、草花、服地、風習、プリンス・エドワード島の地理、カナダの歴史、キリスト教、ケルト族とアーサー王伝説など、全章から380項目について、75頁にわたる訳註で、わかりやすく解説。当時のカナダの暮らしとモンゴメリの知的な仕掛けがわかり、本作の奥深い魅力が楽しめる。●特徴3)口絵写真12点と地図2点小説の舞台プリンス・エドワード島サマーサイドで、訳者が撮影した本作ゆかりの写真を12点掲載。アンが下宿する「塔のある家」の一例、サマーサイドの大通りと港、プリングル一族の邸宅を思わせる豪邸など。また雪景色のグリーン・ゲイブルズ、モンゴメリが1935年に本作を書き始めたオンタリオ州ノーヴァルの牧師館など。カナダ東海岸と島の地図も収載。●特徴4)あとがき……小説をより深く、楽しく読むために……一、『風柳荘(ウィンディ・ウィローズ)のアン』と『北風のうしろの国』二、アンの下宿の屋号「風柳荘」三、小説の舞台サマーサイドとモンゴメリ四、アンが暮らす塔のある家「アン女王復活様式」五、本作の構成--アンの物語に織りこまれるスピンオフの短編小説六、三つの文体からなる小説七、スコットランド系カナダ人の小説八、風柳荘と風ポプラ荘九、アン・シリーズが書かれた順番十、本作執筆前後のモンゴメリと日記十一、アンの誠実さとグリーン・ゲイブルズの魔法で生まれ変わる人々日本初の全文訳・巻末訳註付『赤毛のアン』シリーズ、待望の第4巻!

感想・レビュー・書評

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  • 今作品もとても素敵な時間を楽しめました!
    アンのギルバートへの愛情や、変わらない人柄にまたアンの世界に惚れました☺️
    アンがキャサリンの本当の心を取り戻したシーンでは、決して人を見捨てないアンの優しさやユーモアに感動しました。

  • 赤毛のアンシリーズの第四作。アンの人となりによって周囲の人々に幸せが訪れる様がよく描かれています。

    コロナ禍の今、人々が分断される世の中なので人と人の繋がりを描いた本作のような作品が大切と思います。

  • 赤毛のアンシリーズも早くも4冊目。前作でアンとギルバートの気持ちが通じあったところで終わりました。本作はアンとギルバートの婚約時代の3年間を書いています。
    と言っても、お互い離れて暮らす3年間なのでギルバートは殆ど出てきません。
    この本はどうも事情で書いた順番があべこべらしくて、5冊目が書かれた後、二人の婚約時代を読みたいという声を受けて書いた作品だそうです。
    道理でいきなり電話が登場したりするはずです。書かれた時期が20年程後なので、その間に普及したんでしょうね。
    本作はアンが色々な人の人生に手を貸して、道を示していくという方向性なので、評価が分かれるかもしれませんが、登場人物が前2作より魅力的だと僕は思いました。
    下宿先の口は悪いけれどハートがとても暖かいレベッカ。隣家のさみしい少女エリザベス。冷淡で孤独な副校長キャサリン。彼女たちとアンのからみが僕は大好き。
    個人的に古い本の言い回しが苦手なのですが、赤毛のアンは村岡訳も松本訳もどちらも読みやすいし、とても情景が思い浮かびます。これはアンの持つ魅力によるものなのでしょうか。
    ちなみにアンの愛情までは普通に本屋さんに並んでいるのですが、この本から急に手に入りにくくなってきました。やはり読者もアンとギルバートがくっつく事が確定したあたりで卒業している人も多いのかもしれません。僕はどうだろう、次作までは絶対読もうと思っていますが・・・。

  • 赤毛のアンシリーズ4作目
    医大に進学したギルバートへ向けて綴るアンの手紙が綴られるスタイルで始まる。
    アンはプリンスエドワード島サマーサイドで校長職につく。
    新天地でも素敵な街を存分に楽しみながら困難も打ち勝っていく。
    風柳荘に下宿し、家政婦のレベッカと2人の夫人に可愛がられ、ここでも可愛いニャンコ登場。
    モンゴメリさん本当猫好きなのね!
    日々の暮らしや出来事、街の人たちのキャラクター、やはり安心して読める。
    三年の任期を務めたアンが、心残りなくサマーサイドを離れられて良かった。次回作はギルバートと結婚かな?

  • 『アンの幸福』の邦題で知られる赤毛のアンシリーズ第4巻。村岡花子訳は子どもの頃から愛読してきたが、松本侑子の新訳では初めて読んだ。松本訳は『赤毛のアン』『アンの青春』と読んできたので次は第3巻『アンの愛情』を読むのが順当なのだけど、個人的にこの第3巻は(あくまで大好きなこのシリーズの中では、という範囲でだが)あまり好きではない。不遇で美人でもないが明るさと想像力を失わない健気な少女だったアンが、当時としては珍しい大学生となりインテリ然として、求婚する男性を結構上からな態度で断るようになっているところが嫌なのかもしれないが、おそらく本作がもうひとつ魅力に欠ける一番の理由は、カナダ本土での大学生活が描かれていることだと思う。アンの物語はやはり、プリンス・エドワード島を舞台にしてこそ輝くのだ。

    その点、本作はプリンス・エドワード島のサマーサイドという実在の町が舞台で、島の美しい自然とゆったりした雰囲気が描かれつつ、アボンリーとはまた違った港町特有の空気が全編に流れていてそれがとても魅力的。そして、アンが大学卒業と同時に幼なじみでライバルにして運命の人ギルバートとめでたく両想いとなり、医学生の彼が医大を卒業するまでの婚約時代の物語のため、ロマンスやら奨学金獲得やらで忙しかった大学時代と違い、希望に溢れていながらある種のモラトリアムである時間を描いていて、こちらも一際のんびりした気持ちで脇道の多い(というか脇道がすべての)作品を楽しむことができる。

    本作はシリーズ第4巻とは言っても、書かれた順序で言うと7作目、描いた時代で言うと前作となる『アンの愛情』から20年の歳月を経て執筆・出版されている。著者モンゴメリはその間に40代から60代になり、作家としての充実期は過ぎて体力的にも衰えていたかもしれないが、その筆には円熟と余裕も感じられる。

    それが最も顕著に現れているのが、アンが下宿する家の家政婦レベッカ・デューだと思う。彼女は温かく敬虔だが頑固で滑稽な人物として描かれており、その描写は主に書簡体で綴られる本作ではアンからギルバートへの手紙の中に表されている。つまりアンはレベッカを滑稽な人物として少しバカにしている風があるのだ。

    しかしアンの失敗談、特に思い込みが激しく中身のない若い女性ヘイゼルと彼女の浮薄な婚約者テリーをめぐる一幕では、ヘイゼルに対するレベッカの見立ての方が、アンのそれより正しかったことが証明される。またジェラルドとジェラルディンという外見は天使で中身は悪魔、は大袈裟でも手のつけられない乱暴者の幼い双子についても、レベッカの忠告を受け流したアンの見立ての甘さが露呈し、それに対しレベッカは「言わんこっちゃない」とは言わずアンを労ってくれるのだ。

    老年に差し掛かったモンゴメリは、文学士として学校長として周囲の敬意を集め自身も誇り高いアンより、教育はなく彼らの住む社会で特に重要視されていないレベッカの方が、人間洞察において優れていることがあることを描き出し、まだ若く完璧ではないアンの未熟さを浮かび上がらせている。もちろん、アンが優しさと善意で幾人もの人々を幸せにするケースの方がずっと多く描かれてはいるのだが。

    訳について言うと、本作に関しては、村岡花子の旧訳の方がいいと思う。題名に込められた著者の意図を汲み取った点はよいと思うが、あまり必要のないところに訳注がある一方で必要と思われるところになかったり、文章もほとんどの箇所で村岡訳の方が自然で且つ流麗。が、「いとこのアーネスティーン」の章は、松本訳の方がユーモラスで雰囲気もよく伝わっていると思った。

  • そうそう、英語版もこればかりじゃないのよね。そして、これと炉辺荘のアンのほうが後からだったんだよね。いろいろ忘れていたことが書いてあって、懐かしくなった。訳で結構違うのが楽しい。

  • 12年待ちましたですよ、侑子さんのアン・シリーズ第4巻を。記憶もかなり薄れたけど、そう、アンのあの「想像の余地」がサマーサイドの景観や風土を多彩な風に乗せて届けてくれる。しかしウインディー・ウィローズの周りは、なんてやっかいな人であふれているのか。攻撃的、卑屈性、自信家、皮肉屋、自閉症、主張癖を備えた老若男女が、よくもまあ次々とアンを襲う。いくらアンでもさすがに今回はと案じるが、レベッカ・デューの思いに違わずアンに解決できないことはないのか。ただ、テディ・アームストロング坊やはあまりに可哀そう。アンも神ではないのだし。シリーズは続くようなので、楽しみに次を待ちたい。

  • 第109回アワヒニビブリオバトル テーマ「かしこ」で紹介された本です。ハイブリッド開催。
    2024.1.9

  • アンの活き活きとした生活が印象的で、文学作品の表現が会話や文章に現れていて、良かった。

  • あとがきを見て納得。だから、こんな不思議な構成だったんだ。
    大人になって、落ち着きを得ながら、ますます成長するアン。失敗から学ぶ姿勢が素敵。

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