愛の宿 (文春文庫 は 55-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167914769

感想・レビュー・書評

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  • 花房観音『愛の宿』文春文庫。

    ラブホテルを舞台に様々な男女の姿を描いた6編から成る短編集。全ての短編が「もし、あの夜、あのホテルに泊まらなければ ーどうなっていた……」という後悔とも取れる一文から始まる。ラブホテルで女性の死者が出たことから、多くの男女が足止めを食らうという特異なシチュエーションが面白い。様々な男女の姿と各々の未来が垣間見える。

    『嘘の宿』。ラブホテルで不倫を重ねる男女。将来、男と一緒になることを夢見て来た独身の女と巧みに女の騙しながら関係を続ける妻子ある男……

    『初の宿』。初体験を迎える19歳の女の子と2つ歳上の男。男の初体験の相手という歳上女性に嫉妬する女の子。初めての相手に抱くのは幻想か……

    『悔の宿』。44歳の既婚の女性が同級会で再会したのは初体験の相手。盛り上がった勢いでラブホテルに行き、体の関係を持つが……良い思い出は心の奥に仕舞っておいた方が良い。

    『買の宿』。出会い系サイトで知り合った女子大生とラブホテルに入った34歳の素人童貞。意外にも救いのある物語だった。

    『母の宿』。冒頭で死んだ女性について詳細が明かされる。前の4編とは異なり、ラブホテルの経営者の女性の物語が描かれる。経営者の女性の過去と事件をきっかけに広がり始める未来……

    『愛の宿』。完結編。ラブホテルで死んだ女性の真相が全て明かされる。

    本体価格700円
    ★★★★★

  • 〝 もし、あの夜、あのホテルに泊まらなければーどうなっていたでしょうね。 ”


    ラブホテルを舞台に様々な事情を抱えた男女の6つの物語。

    このラブホテルで起きた事件に苛立つ者、後悔する者、感謝する者、前に進めるきっかけになった者など、それぞれの感じ方も全く違っていて面白い。

    最後の「愛の宿」で事件の発端が分かってゾッとしてしまった。。


    2020年読了、31冊目。

  • 5人の女と1人の男目線で描かれる情愛を通した「人の弱さ」の話であったように思う。

    単純に1〜10で人の心を強弱つけるとしたら、6から上が強いと言うことになるのだろう。
    だとするとこの世界の人たちは1か2だと感じた。でもすべての話を通して見上げるように読んでしまった。

    嘘の女も、初の女も、悔の女も、買の男も、母の女も、愛の女も。

    明らかに少数派の人たちを眩しいと感じた。それが花房観音氏が描く上品な色気やどこか既視感を覚える描写故なのかはわからない。

    6人に共通することは、総じて褒められるような人たちではないということ。人格者でもなければおよそ等身大でもない。が、読み終えたときこの6人を責める気持ちや卑下する気持ちは自分の中になかった。

    ただ達成感というには霞がかかったような気持ちと、胸の奥を握られたような焦燥感にも似た気持ちがあった。

    「桜色の、ほどよく上品で、うるさくなく、少女趣味一歩手前のピンク」

    これは舞台のラブホテルの内装を描写した一文だ。この文が一番強く印象に残った。自分の中でこの本を表す一文だと感じた。
    ここから先は自分の目で確かめてほしい。
    大したレビューじゃないが参考までに。

  • ラブホテルから始まる様々なストーリーが描かれた作品。登場人物一人一人に共感するところがあった。短編集で読みやすかった。「愛の宿」でこの一冊のネタバレがあり、ゾクッとした。

  • 【もし、あの夜、あのホテルに泊まらなければ――】京都の繁華街にひっそりとたたずむラブホテル。ある夜、偶然泊まり合わせた男女の性愛の営みを、官能と情念の名手が描き出す短編集。

  • 久しぶりに官○小説的なものを読みました。内容も一つ一つ、充実していました。女性作家が描く○能小説は、結構深い!

  • タイトルそのまんまですが、なぜか愛を感じないのがいい。女性目線だからこそ成り立つ一冊なのか。ワケありもいろいろ。最終話でキッチリ締めくくられるとは思わなかった。

  • もし、あの夜、あのホテルに泊まらなければ。ラブホテルで女の死体が発見され、捜査のため足止めされる不倫関係の男女、大学生どうし、同窓会で再会したかつての恋人どうしなど。それぞれの関係、人間模様がラブホテル(愛の宿)を通し描かれている。愛とは、セックスとは、一体何なんだろう。

  • 男女のリアルな描写がうますぎる。

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著者プロフィール

兵庫県豊岡市生まれ。
京都女子大学文学部中退後、映画会社や旅行会社などの勤務を経て、2010年に『花祀り』で団鬼六賞を受賞しデビュー。男女のありようを描く筆力の高さには女性ファンも多い。
著書に『寂花の雫』『花祀り』『萌えいづる』『女坂』『楽園』『好色入道』『偽りの森』『花びらめぐり』『うかれ女島』『どうしてあんな女に私が』『紫の女』など多数。
現在も京都でバスガイドを務める。

「2020年 『京都に女王と呼ばれた作家がいた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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