- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167915940
感想・レビュー・書評
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朝比奈さんは、学校を中心にその周囲を描くのがとても上手いと感じる。
よくある出来事、人間だからこそ大きな何かは起こらないけれど、自分の今までのことを思い出すきっかけになってくれる。 -
2023年中学入試で出題された作品の原作を読む。出題されたとき、「翼の翼」の作者と知り、メンタル持ってかれそうだから心が健康なときに読もうと思ってたとおり、心の闇の部分をあらわに描いてた。伝統行事を守る学校と、子どもの意見を尊重したい先生と、学友同士で意見をぶつけあっても解決できないもどかしさが、エンドで別視点から鮮やかに映してた。「人間タワー」自分も昔体験した組体操のことだけど、社会の縮図ヒエラルキーのようだなと感じた瞬間。
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運動会の組体操「人間タワー」をどうするか。教師や生徒、親それぞれの思惑。自分の意見が正しい、自分の意見を通したい、と周りの反対派を批判する人たち。とても気持ち悪かった。アンバランスの危うさ。今の世の中にいっぱいいるなこういう人。耳を傾けどうすれば両方にとっていいか考える数少ない人たちの賢明さが際立つ。鈴子さんや安田さんや大津さんのお母さん。そっちになりたい。
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二つの小学校合併の象徴として、六年生全員で造る『人間タワー』。運動会の伝統となり、保護者のみならず地域の住民にも楽しみにしている人は多い。しかし、組体操が危険視される風潮の中、昨年は失敗に終わってしまった。
今年はどうするべきか。保護者、教員、そして当の児童たち。様々な意見に分かれる中、出された結論とは・・・。
賛成するにも反対するにもそれぞれの理由があり、どちらにも納得できるし反論する気持ちにもなる。実際に参加する子どもたちだってそうだ。上に乗る子、下で支える子、それぞれの立場で言い分がある。
私は運動は全然ダメなので、団体競技など嫌を通り越して恐怖でしかないけれど、観る分には団体競技の方が熱くなる気がするのは何故なんだろうか。
こういったことに正解はないと思う。当人たちが納得していればそれでいい。外部が、特に風潮なんて分からないモノが批判するのだけは間違っていると思う。 -
人間が関わって出来ることについて、関わるひとそれぞれの視点で書かれた内容。
他者に見える自分と自分がわかっている自分のギャップ。何歳になっても人間の本質は変わらない。
人間関係の中で日々不具合はあるが、向き合ってやっていくことで小さな幸せや達成感が得られることがある。そんな積み重ねが人生を豊かにする。が人間の一生は有限。日々を大切に終わりも豊かにありたいと感じた。 -
色々な視点から話が進められていて、新しい感覚を味わえた。
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朝比奈 あすかさんの長編小説。
タイトルから今時のカースト制がテーマかと想像していましたが
タイトルそのままに、小学校で行われる組体操「人間タワー」を描いた連作集でした。
読み始めの地味な印象から一転、どんどん惹きつけられ途中から夢中になって読みました。
一時、その危険性が取り上げられた組体操ですが、本作では親や教師、そして組体操の上に立つ子供、下で支える子供達の本音などが丁寧な人物描写で描かれています。
「人間タワー」が実施されるのか、無くなってしまうのか、
もし実施される事になったらどんな形で行われる事になるのか、結末が気になり、そしてそこに辿り着くまでの、それぞれの子供達、大人の感情の揺れや思いに寄り添ったり共感したりしながら読み進めました。
全6話で構成されており、一見独立した短編の様でありながら、登場人物が他の章でリンクしていたり、人間タワー=登場人物の連携と上手く掛けられています。
テーマ自体も新鮮で初めての感覚を味わえ、読み応えのある作品でした。
ひとつだけ残念なのはあの形になるまでの過程を読者の想像に委ねられたのかも知れませんが最終話の一つ前で1話増やして描いて欲しい気もしました。 -
特老ホームのおじいちゃん、教師、生徒、卒業生…と、次々と視点が変わりながらの展開。
学校伝統で楽しみにしている人も多い“人間タワー”に対するそれぞれの思い。視点が違うと見える景色も全然違ったものになる。
憧れ、期待、不安、焦り、葛藤…
年齢も立場も全然違うのに、どの視点も心理描写がとても丁寧でリアリティがありました。
小学生独特の世界の描き方が絶妙。
小学生の組体操が今身近にある人は、特に感情移入せずにはいられない作品だと思います。
『一人のおとなが一人のこどもの人生を、突然大きく拓くことがある。ささやかな敬意が、想像もできないほど一人を救う。』