血と炎の京 私本・応仁の乱 (文春文庫 あ 85-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167916114

作品紹介・あらすじ

 行間から血の匂いが立ち上ってくるかのような迫力。
 応仁の乱を描いた小説中の最高峰だ。――田中芳樹

 応仁の乱――それは地獄の戦さだった。
 かつて栄華を誇った都は燃え落ち、縦横に走る塹壕に切り刻まれ、泥と屍に覆いつくされた。連なる屋敷は高い土壁に守られて砦と化して、中枢は地下の壕内に設けられた。日が沈めば夜襲が行なわれ、矢が飛び交い、兵どもは無造作に殺されてゆく。そこにあったのはあたかも近代戦争のごとき総力戦、終わりの見えぬ中で人間がひたすら消費されてゆく戦だった。

 行軍中に東軍・細川勝元が拾った瀕死の男。額に「犬」の文字の刻まれた男は、西軍の山名宗全に虐殺された集落の生き残りだった。男は宗全への憎悪を胸に、地獄の戦場に血路を切り開く。しかし敵方には中国渡りの最新兵器たる投石器を駆使する軍師がおり、苦戦を強いられる。一方、この大戦さの中にあって、これを収拾しようという姿勢もみせぬ将軍・足利義政の妻・日野富子は、渇いた心の救いを希い、戦火のなかを蓮如に面会すべく動き出そうとしていた。

 京を灰燼に帰した応仁の乱とはいかなる戦争であったのか。その血みどろの風景を壮絶に描きつくす書き下ろし歴史伝奇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 【胸焼けのする戦】

    これまで気になる武将から読む本を選んでたんだけど
    戦国時代の始まりと言われる
    応仁の乱をテーマにしたものを読んでみようと
    思ったのが選んだきっかけ。

    思惑や欲望が渦巻いてぐっちゃぐちゃ。
    今までは
    やれ○○曲輪が〜とか
    本丸が〜とか
    地形を利用して○○の陣形〜とか
    そういう戦略的な戦を描いたものを読んでいたので…
    霹靂車(投石機)が登場すると、

    戦の様子が今までと様変わりして
    読んでるのもしんどくなってくる。
    まさに胸焼け。

    「これは俺の知っている戦ではない」

    最終的には骨皮道賢Forever

  • 骨皮道賢の応仁の乱、戦いの軌跡。伝説として名を引き継いでいくと言うのは良かった。

  • 血と炎の京 私本・応仁の乱
     第1篇 春の渇き 富子と蓮如(Ⅰ)
     第2篇 地の底の戦場 道賢と宗全(Ⅰ)
     第3篇 南無卒塔婆八万本 富子と願阿弥
     第4篇 異形の夏 宗全と勝元
     第5篇 山名宗全を討て 道賢と宗全(Ⅱ)
     第6篇 白く長い道 富子と蓮如(Ⅱ)
    文藝春秋社「血と炎の京 私本・応仁の乱」 2020年12月

  • ホラーアンソロジー、『異形コレクション 蠱惑の本』に収録されていた『外法経』が前日譚*と言うことで、そっち方面のホラー・オカルトチックな応仁の乱、特に物語冒頭で主人公である骨皮道賢の事を細川勝元が不死身の鬼と評していたため、彼がペルシア渡来の外法の術を使うのかと思っていたが、全然違った。あるいは、応仁の乱東西の首魁である細川勝元と山名宗全が共に外法に憑かれて京を狂気の渦に巻き込むのかと思っていたが、それも違った。この両名は何者にも憑かれず正気で狂気なのだ。ある意味似た物同士。
    というわけで、この作品は何を描いているかというと、一つは細川勝元と山名宗全という二人の狂気で様変わりした戦、主人公の道賢言うところの「これは俺の知っている戦ではない」兵器による殺戮、使い捨ての兵、塹壕戦、市街戦。なんだか現代の戦争みたいな事を応仁の乱の時代でやっているんだけど、史書にも記録が残っていて本当にこんなことやっていたみたい。この後に続く戦国時代で足軽が主戦兵力となるのは確かにそうなんだけど、ここまで陰惨な戦いやってないような……とふと考えてみたところ、この異常な印象の原因はおそらく戦闘地域と範囲。京都という特殊な市街の異常に狭いところに凝縮されてるから一層異形の戦いに感じるのだな。まさに血と炎の京。
    そしてもう一つ描かれているのは骨皮道賢という実在記録はあるものの、詳細不明の男について。実は応仁の乱のわけのわからなさを群像劇的に描いていると思って読み始めたので、400ページ余のこの作品の冒頭100ページを割いて骨皮道賢とその仲間について語られた際「なんで???」となってしまったが、先にも書いたようにこの男が主人公のヒロイックストーリーだったのだ。敵の大量殺戮兵器を破壊し、一族を皆殺しにした山名宗全に復讐するため、西軍本陣に潜入する工作員、骨皮道賢!ハリウッド映画や。ただ、その最期は捻りが効いていて、改めての道賢のプロフィール開示に「!?そうきたか……」となってしまった。実は十歩の出身地はちょっと気になってたんよな……
    3つ目は禁忌を犯し救いを求める日野富子について。上記の道賢のストーリーと掠りながらもほぼ交わらず並行しており、こちらもなかなか面白い話なのでもうちょっと絡んでくれてもよかったかな……いや、このくらいが丁度良いのか……などと思ったり。
    しかし、この蓮如のキャラデザwww想像(日野富子の、そして読者も日野富子と似たような想像をしていたはず)と全然違ったwww違うことに意味があるのだが。

    *とは言うものの、前日譚とほぼ同時に購入した本作品、前日譚の方だけ読んだ後3年も積読で寝かしていたため、前日譚の内容をほぼほぼ忘れてしまっていて……バアルだけは記憶に残っているのだが……

  • 室町無頼で今までノーマークだった室町時代に興味が出て読むことに。

    骨皮道費は湖族、堅田衆の若頭・通武との設定。
    残念なことに蓮田兵衛は出てこなかった。

    他の室町時代、応仁の乱の話を読んでみたいけど少ない。やっぱり他の時代に比べると歴史的なヒーローが少ないし、人気がないのかな。

    鎌倉時代、戦国時代より血生臭い、ものすごい時代だったという迫力が伝わってくる。

  • 【応仁の乱、それは地獄の戦さだった】花の都は塹壕で切り刻まれ、唐渡りの殺戮兵器が疾る戦場。復讐鬼・道犬と、地獄の都で救いを希う日野富子を描く書下ろし歴史伝奇。

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著者プロフィール

一九五六年、北海道生まれ。東洋大学文学部仏教学科卒業。
国書刊行会に入社し、ラヴクラフト作品などの企画出版を手掛ける。八六年、『魔教の幻影』で小説家デビュー。オカルト・伝奇小説を中心に幅広く執筆し、近年は室町時代を題に取った作品を精力的に発表している。二〇〇五年、短編「東山殿御庭」が日本推理作家協会賞候補。アンソロジストとしても高い評価を得ている。

「2023年 『一休どくろ譚・異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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