想い出すのは 藍千堂菓子噺 (文春文庫 た 98-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167919078

作品紹介・あらすじ

『藍千堂』に特別な「誂え菓子」を依頼する客が次々とやってきて……。
藍千堂謹製、想い出に色を添える菓子三品。

父の死後、江戸でも名店と謳われる菓子屋「百瀬屋」の晴太郎と幸次郎兄弟は、叔父に実家を追われ、小さな菓子司「藍千堂」を営む。
晴太郎が佐菜と結婚して男所帯だった藍千堂の暮らし向きは華やかになったが、そんな折に、叔父の百瀬屋清右衛門が病に倒れた――。

清右衛門は静養のため、内儀のお勝と共に愛宕山の診療所で暮らすことになった。
娘のお糸が父母の代わりに『百瀬屋』を取り仕切るはめになったものの、当のお糸は落ち着いたもの。『藍千堂』の兄弟、晴太郎と幸次郎が手を貸し、新たな『百瀬屋』はなんとか滑り出した。
だが、ほっとしたのもつかの間、『藍千堂』に難しい「誂え菓子」を頼む客が、立て続けに現れた。ひとり目は、「目を悪くした祖母にも『見える』梅の菓子」を、二人目は、「南の故郷を懐かしむ大切な女(ひと)に、南蛮菓子のかすていら」を。
偶然にしては妙だと感じた幸次郎が調べると、『百瀬屋』の贔屓客だった旗本が浮かび上がった。

感想・レビュー・書評

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  • 美しく、美味しいお菓子を作る藍千堂を舞台に兄弟の物語です。
    気弱だけど心優しい菓子職人で菓子馬鹿といわれる藍千堂の主・清太郎と、切れ者で店を仕切る番頭の弟・幸次郎が、兄弟の父の片腕だった菓子職人・茂市と菓子作りに奮闘していきます。清太郎は、佐菜と祝言を挙げ。佐菜と佐菜の連れ子・さち5才が、新しい家族として加わり今まで以上にしっかりしてきます。

    【梅薫る「ちいさ菓子」】
    京橋近くの材木問屋「相模屋」の跡取り息子・喜助が、目が悪くて明かりしか感じない祖母に梅を見せたくて、梅のように匂いがして、味がする菓子を作ってほしいと行ってきます。試行錯誤の結果、食べただけで梅がかおる梅の薯蕷(じょうよ)饅頭「梅重ね」が出来上がりました。

    【秘めたる恋の「かすていら」】
    清太郎は、中村座の役者・岩崎八重丞から最愛のお美智のために、思い出の「かすていら」を作ってと依頼される。土佐出身のお美智に会って話を聞くと、甘味は砂糖でなく自宅で取れた蜂蜜を使ったものであった。清太郎は、何回も試して満足のいくものを作ると。お美智は、あまりにもそっくりで幸福であった家族と一緒に過ごした国元がよみがえる。

    【いまひとたびの「白羊羹」】
    百瀬屋の得意客である旗本小姓組組頭の高見敏藏の弟・功之介は、藍千堂があまりに高い評判なので嫌がらせにと喜助と八重丞と謀り、藍千堂に無理難題の菓子を注文させる。それを南町奉行所の定廻り同心・岡丈五郎に見つかり藍千堂に謝りに来る。そして帰りに茂市の練羊羹を渡したところ甚く気に入ったらしく買いに来る。

    【読後】
    図書館で借りて字をチェックすると、字が小さすぎて返却しましたが。どうしても読みたくなって、再度予約をして借りて来て、すぐ読み出しました。今回は、単行本が出ず、文庫本しか出ていません。この物語を読んでいると、心がほっこりして、笑顔になって来ます。甘いものが好きな私は、いろんな美味しそうな菓子が出てくるので唾が出て来ます。2022年のベスト本です。
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    想い出すのは 藍千堂菓子噺シリーズ4作目
    2022.07発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。
    2022.12.08~11読了。★★★★★
    梅薫る「ちいさ菓子」、秘めたる恋の「かすていら」、いまひとたびの「白羊羹」、の短編3話。
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    《藍千堂菓子噺シリーズ一覧》
    04.想い出すのは《文庫本》      2022.12.11読了
    03.あなたのためなら《単行本》    2019.04.10読了
    02.晴れの日には《単行本》      ブクロク登録前
    01.甘いもんでもおひとつ《単行本》  ブクロク登録前 再読2019.05.04読了
    ※1話と2話は、ブクロク登録前に読みました。
    ※なお、1話は、3話を読んだ後に再読した時にブクロクに登録しました。


    「参考」
    ※参考は、私のメモ書きです。本の感想ではありません。
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    「著者紹介」
    田牧大和(たまき やまと、1966年7月2日 - )は、日本の小説家。東京都生まれ。明星大学人文学部英語英文学科卒業。市場調査会社に勤務しながら、ウェブ上で時代小説を発表していた。2007年『色には出でじ、風に牽牛』(『花合せ』)で第2回小説現代長編新人賞を受賞。

  • 安定した面白さがあるこのシリーズ。
    前作で病に倒れた「百瀨屋」主人の叔父が愛宕山に療養に行く事になり、母親もついていくと言う…

    職人も辞め傾きかけている「百瀨屋」をお糸に丸投げで、ちょっとイラッとします。

    前向きに店を変える決意のお糸は本当に強くなったなぁと…「藍千堂」の兄弟や周りの人達からの助けを素直に受け入れるお糸。
    今後二つの店が助け合う話になって行くのかな?

    毎回和菓子が食べたくなって困るわ…
    カステラが食べたい…ザラメがついたやつ(-_-)

  • 人に喜んてもらいたいと様々な工夫をして菓子を拵える晴太郎。「食べなきゃよかった」は随分辛かっただろうなと思いますが、晴太郎を見守るお佐菜とさちちゃんはじめ幸次郎や茂一の存在が、また晴太郎を和ませ、力になり成長させてくれるのかなと思います。読むほど、次の物語が愉しみになります。

  • 【収録作品】晴太郎、怒る/梅薫る「ちいさ菓子」/秘めたる恋の「かすていら」/いまひとたびの「白羊羹」

  • シリーズ第四弾。

    前作からかなり間が空いたので、シリーズ1~3をザザっと再読してから本書に臨みました。
    佐菜と前夫の件や、お糸と彦三郎のくだり等、ほぼ忘れていたのでその辺り復習できて良かったです。

    さて、何かと〈藍千堂〉の邪魔をしてきた〈百瀬屋〉の主人で、晴太郎と幸次郎兄弟の叔父・清右衛門が病に倒れ、店を離れて療養することに。
    〈百瀬屋〉はお糸が継ぐことになり、晴太郎たちの協力も得ながらなんとか滑り出します。
    そんな折、〈藍千堂〉に訳アリ癖アリ注文が相次ぎ、どうも何らかの思惑が蠢いているようで・・・。

    ピンチに陥った〈百瀬屋〉ではありますが、これを機に質の良い砂糖を仕入れる等、真っ当な菓子司に再生して頂きたいですね。
    お糸はここが踏ん張りどころだと思いますが、人員補充として〈百瀬屋〉で働くことになった双子の兄妹・尋吉(千尋)とお早(千早)もなかなか良いキャラですし、〈藍千堂〉とも協力関係が築けるようになったので、もっと周りを頼って、あまり一人で背負い込まないようにね・・と、つい老婆心ながら心配してしまいます。
    今回は、とある旗本の思い込みによって、難しい注文が相次いでしまうなど、相変わらず面倒くさいことに巻き込まれがちな〈藍千堂〉でしたが、ラストは丸くおさまって良きでした。
    勿論、出てくるお菓子はどれも美味しそうで、本当にこのシリーズは読むと和菓子が食べたくなりますよね・・。

  • 登場人物が増え次回も楽しみです。

  • 百瀬屋の叔父が病に倒れ、叔母も看病のために家から出る。
    残された従兄妹のお糸のために、人を補充。

    そんな忙しい頃、難しい注文菓子を2件立て続けに受けることに。

    どうやら喜んでもらえる工夫ができたのも束の間、その2件の注文の裏には。

    美味しそうな菓子の作り手たちの思いと、菓子に寄せる思いが交錯する。
    今回もますます心が和むいいお話になっています。

  • 藍千堂菓子噺シリーズ第四弾。
    百瀬屋の叔父が病に倒れ、従姉妹のお糸が女主として頑張っていくことになる。
    藍千堂には、難しい誂え菓子の注文が相次いでくる。
    ほっこりした世界観が大好きです。

  • 文庫書き下ろし

    父と叔父が築いた上菓子屋「百瀬屋」が、父の死後叔父に独占され、追い出された晴太郎・幸次郎の兄弟が父の弟子茂市と興して、人を幸せにする菓子作りを目指す「藍千堂」シリーズ3作目。

    第1話 梅薫る「ちいさ菓子」
    材木問屋の若旦那が梅見に連れて行くと約束したものの、忙しさに取り紛れているうちに目の見えなくなった祖母のために「目を悪くしたものにも見える梅の菓子」を依頼してきた。
    晴太郎たちは、梅酒に使った梅を摺り下ろして白あんに混ぜた小さな薯蕷饅頭を作って花びらの形に並べて杉の折に入れる。触れて、嗅いで、味わって祖母は梅見ができたと喜ぶ。

    第2話 秘めたる恋の「かすていら」
    売り出し中の人気役者が、思いを寄せる専属の髪結いのために、江戸の者とは違う故郷のカステラを作って欲しいと依頼してくる。
    晴太郎は妻の佐菜に頼み、髪を結いを呼んで、雑談から身の上話をして故郷の土佐では蜂蜜を使っていたことを聞き出してもらい、再現に成功するが、食べた髪結いは幸せだった子供の頃を思い出して辛いと泣いたと聞かされ、晴太郎は落ち込む。

    第3話
    前の二人ともが、百瀬屋贔屓の旗本の弟の悪だくみで藍千堂を貶めるために利用されたことを、町廻り同心の岡が掴んできて、幕閣の有力者とつながる藍千堂贔屓の旗本から注意してもらったが、当の旗本兄弟が藍千堂に乗り込んで来る。
    前に百瀬屋として晴太郎が出した白羊羹、父が作りたかった白羊羹、自分が作っている白羊羹を並べて味わってもらい、もとより詫びに来た旗本兄弟は十分に納得して、大団円。

    最初に新たな登場人物が加わる。当時は忌まれた「双子」である兄妹尋吉(千尋)とお早(千早)は伊勢屋の紹介で、藍千堂が引き受け、叔父夫婦が去って手薄になった百瀬屋に入る。兄は事務能力に長け、妹は腕が立つ。今後活躍しそうなキャラクター。

  • 美味しそう。泡立てるの大変そうだったな。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『鯖猫長屋ふしぎ草紙(十) 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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