作画汗まみれ 改訂最新版 (文春ジブリ文庫 3-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (393ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168122002

作品紹介・あらすじ

伝説的アニメーターによる名著を文庫化!高畑勲・宮崎駿が兄貴分として慕い、『ルパン三世』など数々の傑作アニメを作ってきた職人的名アニメーターによる貴重な証言録。

感想・レビュー・書評

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  • 「大塚康生さんを偲ぶ会」6/28開催 « ANIDO official website
    https://www.anido.com/information/4903

    文春ジブリ文庫『作画汗まみれ 改訂最新版』大塚康生 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784168122002

  • ずーっと読みかけのままだったのですが、朝ドラ見ているうちに再開。まさに東映動画でのアニメーション黎明期の話で2倍面白く読めました。最近仕事をしていて思うのは、誰も見たいと言っているわけでもない、作ってくれと言っているわけでもないものを作り出して世に出す仕事とはどんな思いで向き合っているのか?仕事としてどのように成立させるのか?自分の欲求を満たすためだけなのか?問題解決型の使命感とはまた違ったモチベーションなのだろうと思うのでますます興味深く思えてきてます。こういう仕事をしている人と話てみたい!

  • 単行本も持っていたような気もするが…

  •  一般的にいって、原画という仕事にはいろいろな時期があります。はじめの頃は演出やコンテの指示どおりに絵を描いてしまう結果、案外、サッサと仕上がっていきます。しかし、その内容は「言われたとおり」に描いた以上のものではありません。場合によっては演出家の期待以下ということもあるでしょう。これがしばらくたつと、作品のテーマやシーンなりカットなりの技術的な構成やキャラクターの性格について、自分なりに考え始めます。それまでのように、早のみこみに絵が描けなくなってしまう時期に出会うのです。
     以前に比べるとはるかに注意深くなり、動きと演技についてさまざまな角度から考えるようになります。考えすぎると失敗することもありますが、とにかく原画をはじめた頃よりもスピードは落ち、その代わりに厚みのある動かし方が生まれます。
     この時期を通過すると、ある程度自信をもってカットに向かうようになりますが、同時にマンネリズムとワンパターンな動き、自分では意識していないが、前にも一度ならずやったことのある動き、クセが出はじめます。
     このクセというのは、絵を描く人が必ずもっている個性、美意識から来るものです。動画をやっているあいだはあまり目立ちませんが、白紙から原画を描くようになると、だれの目にもはっきりするようになって、その優劣が問われます。

     宮崎さんは鈴木清順さんのシナリオをチラッと見ただけで、新たに構想を練ることで藤岡さんの了承を得て、テレコムの物置きのような小部屋に引っ越してきました。
     彼は映画の主人公たちを、生きている人間のように自分に引きつけて考え抜きます。ルパンは彼の中で歳を重ねていて、おっちょこちょいではあるものの、老成したやさしさと思慮深さがあって、クラリスへの距離のおき方にも中年らしい分別があり、まるで彼自身が若い女性に対してとっているスタンスを感じさせるものでした。

     技術講習会はハリウッド通りのドまん中に建つハイランドビルで週2回行われ、フランクとオーリーが交代でアニメーションの具体的なテクニック、あるいはキャラクター・アニメーションというよりも
    ●自分に欠けているものを与えてくれる人々に頼るべきである。
    ●知識を具体化するためにものごとを学ぶのではなく、独創的に応用するために、原理から学ぶべきである。
     といった心構えを中心に話され、週1回、バーバンクのディズニー・スタジオでスクリーニング(映写会)が行われました。

     まずディズニー作品が示していた方向は、要約すれば、次のようになるだろう。
    a.ファンタスティックな要素の多い題材を選んで、絵でしか表現できない世界と人物を創造し(ファンタジーまたは動物もの)
    b.ストーリーは、あらすじを話しただけで興味を持ってもらえるように、できるだけシンプル・強力な「幹」に整理し(ハリウッドの原則)、
    c.そこに笑いあり歌ありの楽しいエンターテインメントの「枝葉」を繁らせて、
    d.個々の人物の性格を身振りや表情でしっかりと描きわけつつ、アニメーションならではの流動感ある動きやリズム、ヴォードヴィル的な誇張された面白い演技によって画面を活気づける。
    e.その画面は、人物たちが縦横に活躍できる舞台(世界)としてきちんと三次元の空間を作るが、絵画スタイルとしては現実的であるよりは夢のあるおとぎ話的雰囲気をかもしだす。
    f.表現は高度なものを目指すが、内容的にはあくまでもユーモアのある明るく楽しい、児童向けでありながら同時に大人をも満足させる大衆的な娯楽作品として作る。

     主人公の運命に一喜一憂するとなれば、主人公に感情移入して見ていけるように作ることは当然だった。そしてそのために東映動画の漫画映画のほとんどの作品で主人公は「子ども」になった。たとえ元の素材の主人公が大人であっても、それを「児童向け」に作る以上、とりあえず「子ども」にするしかなかった。これが前述の「アクションシーン」中心主義と結びつけばどうなるか。
     現在に至るまで以後連綿と日本で生産され続ける感情移入タイプの超人的子どもヒーロー像、すなわち、勇気や行動力があり、特に腕力の点で大人たちをはるかに凌駕し、社会の中で活躍する子どもヒーロー像の誕生である。そして『少年猿飛佐助』以来、東映動画は続々と子どもヒーローを生み出していく。
     ただしこれは、東映動画のというよりは、戦後日本のマンガ・アニメの最大の特徴に違いない。『鉄腕アトム』も子どもである。アメリカでのヒーローは西部劇でも『バットマン』『スーパーマン』でも大人であることは当然で、それを見る子どもたちは「はやくああいう大人になりたい」とヒーローに憧れた。日本でもその影響で始まった『黄金バット』『月光仮面』や東映時代劇ではヒーローは大人(青年)だった。しかし、子どもが子どものままで社会に出て、自分たちの代表として大人を相手に活躍すれば、見る子どもたちはそれに感情移入し、心をくすぐられ、夢中にならないはずはない。これは美空ひばり以来の大発見・大発明だった。驚くべきことに日本では少年ガンマンさえ許容されたのだ(『荒野の少年イサム』)。そしてこれは結局は「メカ物」などで世界の子どもたちの心さえとろめかすことになる。

  • 「未来少年コナン」「カリオストロ城」等の作画監督である大塚康生の自叙伝、というか、宮崎・高畑等と東映時代を友にした同時代証言集である。Amazonで評判がよかったので購入したが、ジブリの「仕事道楽」等と比して、一般人には、難しいし歯ごたえがありすぎ、「痛快」を期待する者には不向き。ただ、アニメの基本は、静画を動かすということにあることがたくさんのラフ画とともに実証されている点、アメリカアニメとの比較論等、興味深い記述もある。しかし、前職がなぜか麻薬取締官であるところは凄い。

  • 購入して読み。
    アニメ「SHIROBAKO」で、アニメ業界、日本のアニメ史についてちょっと興味を持ったので。

    日本アニメの黎明期から活躍してる大塚康生さんの本。
    知らない作品がたくさんある割に、結構ボリュームの多い本なのでちょっと途中で投げ出しそうになった。

    手塚治虫の人柄や、アニメ制作現場に与えた功罪みたいな話は興味深かった。
    人よりうまくなりたかったらやっぱりとにかく描くしかないんだな。
    宮崎駿の若いころの話なども面白かった。

  • 15/07/25、ブックオフで購入。

  • 麻薬Gメンから、『ムーミン』や『ルパン三世』、『未来少年コナン』などを手掛けるアニメーターになった大塚康夫の回想録の改定最新版(2013/04/10発行)。

    非常に資料性の高い興味深い回想録でした。 平凡社から出版されている同氏の「ジープが町にやってきた」と合わせて読むと、さらに興味深い本になると思います。

  • 文庫版は初めて。「増補改訂版」以来久しぶりに読んだ。本文もさることながら、巻末の高畑勲の論文が素晴しい。

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著者プロフィール

1931年7月11日島根県生まれ。
1956年、東映動画(現 東映アニメーション)に第1期生アニメーターとして入社。『白蛇伝』(1958年)『わんぱく王子の大蛇退治』(1963年)などの原画を担当。『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)で作画監督を務めた。
1968年、東京ムービー(現 トムス・エンタテインメント)傘下のAプロダクション(現 シンエイ動画)に移籍。テレビシリーズ『ムーミン』(1969年)『ルパン三世』(1971年)の作画監督を担当。
1977年、日本アニメーションに出向し『未来少年コナン』(1978年)の作画監督を担当。
1978年、東京ムービー新社傘下のテレコム・アニメーション フィルムに移籍。映画『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)『じゃりン子チエ』(1981年)の作画監督を歴任。

「2023年 『道楽もの雑記帖』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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