殴り合う貴族たち (文春学藝ライブラリー 歴史 29)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784168130755

作品紹介・あらすじ

優雅で上品な王朝貴族……それって本当?宮中での喧嘩、他家の従者を撲殺、法皇に矢を射掛ける。拉致、監禁、襲撃もお手の物。加害者は〝優美で教養高い貴公子〟だった! 『源氏物語』には決して描かれなかった、御堂関白藤原道長ら有名貴族の不埒な悪行を、「賢人右府」こと藤原実資の日記『小右記』などから丹念に抽出した意欲作。【貴公子たちの悪行の数々が半端ない!】・宮中で蔵人と乱闘(中関白藤原道隆の孫)・従者を殴り殺す(粟田関白藤原道兼の子息)・しばしば強姦に助太刀する(御堂関白藤原道長の子息)・法皇の従者を殺し、生首を持ち去る(内大臣藤原伊周) ほか「平安貴族とは、こんなにも破廉恥な、野蛮きわまりない者たちだったのか。これまで思い描いてきた、直衣姿や狩衣姿も美々しく、歌を詠み、恋にうつつをぬかしていた貴公子淑女は、いったいどこへいってしまったの? これでもかと暴かれる衝撃的な出来事のオンパレードに、読者は目を丸くするにちがいない」――解説・諸田玲子氏

感想・レビュー・書評

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  • 平安時代、藤原家が全盛を極めた貴族社会。
    「源氏物語」ち描かれる優雅な王朝文化の裏側で貴族たちは横暴を極め、殴り合いの喧嘩をしたり、相手を拉致したり、時には死なせてしまっとりしていた。
    貴族同士はもちろん、皇族、法皇や親王までもが、ほんのつまらない意地のために、従者を使って殴り込みを仕掛けたりしていたという事を、当時の貴族社会の一員である藤原実資の書いた日記「小右記」などの記録から取り上げる。

    「源氏物語」の中にも争い(行列見物のための牛車の場所取り争い)は出てくるが、そこまで荒れたものではない。
    しかし、紫式部は藤原実資の生きた道長の最盛期をともに生きた文人だから、「小右記」に書かれていたような事件や噂は耳にしていたはず。
    そういうところや、事件を物語の中に取り入れなかったのは、やはりそんな下賎な事がない貴族文化を望んだからなのか。

  • 平安時代の王朝貴族が、暴れる、暴れる……!
    王朝貴族といえば雅な世界だと思っていたが、現実は酷かったようだ。
    もう、目次の時点でヤバイ。修羅の国かよ。
    石をぶん投げたり、矢を射かけたり、袋叩きにしたり、正にやりたい放題。……これ、マシな方ですぜ。これ以上はここに書けないので、ぜひ書店や図書館で手に取ってほしい。
    『源氏物語』の光源氏が「理想的な貴公子」である理由について書かれた件では、そのあんまりな理由に頭を抱えてしまった。
    平安貴族の暴れっぷり、とくとご覧あれ。

  • 2023.2.28市立図書館
    なんとなく来年の大河ドラマ(光る君へ)の前に予習しといたほうがいいんじゃないかということで、ちょっと気が早いようだけど借りてみた。
    平安貴族、王朝時代というと、「源氏物語」からイメージされるようなおっとりみやびやか、きらびやかな世界がまっさきに想像されてしまうが、「光源氏」やとりまきの公家像はあくまでも紫式部がつくりだした理想の姿、当時の貴族が書き残した日記類をくわしく読むと貴族がからむ暴力沙汰はけっこうたくさんあり、弱々しくやさしい人ばかりではなかったのだとわかる。「鎌倉殿の13人」でもそういえば曲者源仲章や意外と武闘派の大江広元が活躍していたな、と合点がいく。
    道長周辺の事件は次の大河でもでてくるのかしら…とりあえず道長の二人の妻とその子どもたちの人間関係や立ち位置はなんとなく理解した。また、「小右記」を書き残した藤原実資(秋山竜次)もキーパーソンとして注目したほうがいいみたい。

  • 現代人がイメージする平安貴族の代表、光源氏。
    しかし、彼のモデルとされる藤原道長を始めとした貴公子たちは光源氏とは異なりしばしばとんでもない暴力事件を引き起こしていた。
    本書は『小右記』から不品行な貴族たちの姿を切り取り読み解いていく。


    自分の地位を振りかざし不適切な暴力や私刑を行使する王朝貴族の貴公子たち。
    彼らは天皇の御前で殴り合い、さらに場外乱闘でリンチに発展する。従者たちに指示して下級貴族を拉致監禁して一方的に暴力を振るう。仲間の強姦に手を貸す、債務で揉めて暴力沙汰に及ぶ。。
    そして、貴族に仕える従者たちもまた主の威光を笠に着て暴力沙汰を起こす。
    強盗による刃傷沙汰(強盗の仕業として処理されるだけのことも)、女性の暴行事件も記録に残っている。

    後妻打が見られるようになった平安時代では、同様に古夫が新夫に制裁を加えることが当然のことであったのだろうという推測が面白かった。
    藤原伊周が花山天皇に矢を射掛けた事件も(誤解があったものの)も同様だろうということ。

  • <目次>
    序    素行の悪い光源氏たち
    第1章  中関白藤原道隆の孫、宮中で蔵人と取っ組み合う
    第2章  粟田関白藤原道兼の子息、従者を殴り殺す
    第3章  御堂関白藤原道長の子息、しばしば強姦に手を貸す
    第4章  右大将藤原道綱、賀茂祭の見物に出て石を投げられる
    第5章  右大臣藤原伊周、花山法皇の従者を殺して生首を持ち去る
    第6章  法興院摂政藤原兼家の嫡流、平安京を破壊する
    第7章  花山法皇、門前の通過を許さず
    第8章  花山法皇の皇女、路上に屍骸を晒す
    第9章  小一条院敦明親王、受領たちを袋叩きにする
    第10章  式部卿敦明親王、拉致した受領に暴行を加える
    第11章  三条天皇、宮中にて女房に殴られる
    第12章  内裏女房、上東門院藤原彰子の従者と殴り合う
    第13章  後冷泉天皇の乳母、前夫の後妻の家宅を襲撃する
    結    光源氏はどこへ?

    <内容>
    平安時代の貴族たちもだいぶ乱暴だったぞ、という本。しかし、各章の話は若干誇張というか、語弊があり、正確には、彼らが命じて、その従者が暴れているのだ。天皇、皇族、貴族(合わせて貴公子か?)は自らは暴力には手を染めないのだ。身分の問題もあって、殴られているのは、中級貴族や受領層(ときどき違う話もある)。まあ、法治国家ではないので、報復に報復が重ねられ、暴力しか最終手段がなかったのだろう。

  • 小右記・権記・御堂関白記などから抽出された、平安時代中期の貴族社会における暴力事件の数々が紹介されている。一般的イメージとは異なる荒々しい社会の側面がうかがわれて面白い。

  • タイトルからしてセンセーショナルな感じですが、終始横暴な振る舞い(暴力的という意味で)が連ねられていて華やかな国風文化の裏を見た感じになる。光源氏が理想の(まともな)貴公子であるという意味がよくわかる本。あと、下手な人権教育教材よりも、人権大事だなと腹の底から思わせてくれる。

  • 冒頭から最後までめちゃくちゃ乱闘している…『応天の門』の登場人物たちが自ら拳を振り下ろしあってる感じですね…悲劇の皇女の悲惨な結末のエピソードが考察含め興味深かったです

  • 【「優雅で上品な王朝貴族」……それって本当?】宮中での喧嘩、他家の従者を撲殺、法皇に矢を射掛ける……藤原道長ら有名貴族の凶悪事件を暴き、平安の貴公子像の再考を迫る意欲作。

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著者プロフィール

1997年東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。2003年神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了、博士(歴史民俗資料学)。神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員、同大学外国語学部非常勤講師。著書に『陰陽師』(中央公論社)、『平安貴族と陰陽師』『呪いの都 平安京』(以上、吉川弘文館)、『殴り合う貴族たち』『王朝貴族の悪だくみ』(以上、柏書房)、『天皇たちの孤独』(角川書店)などがある。

「2008年 『王朝貴族のおまじない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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