Fの悲劇

著者 :
  • 徳間書店
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198628833

作品紹介・あらすじ

絵が好きな少女・さくらには、不思議な力があった。空想で描いたはずの場所や物が、そのまま実在しているのだ。ある日、描いたのは、月光に照らされ、夜の池に浮かぶ美しい女性の姿。手には花束を抱え、胸にはナイフが突き刺さっていた。不吉なことと、母に絵を描くことを禁じられ、大人になったさくらは、祖母から叔母の話を聞いて愕然とする。女優だった叔母・ゆう子は、20年前、京都の広沢の池で刺殺されたというのだ。その死の様子は自分が昔描いたあの絵とそっくりである。さくらは、ゆう子が当時下宿していたペンションを捜し出し、部屋を借りて叔母の死の謎を探ろうとする。次第に明かされるゆう子の凄絶な人生。そして驚くべき死の真相とは…。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終えて、タイトルの「F」って何だったんだろう?と思いました。
    しばらく考えて、「ああ、そうか」と分かった時、あまりに単純な事なので「何か思わせぶりやな~」「大げさすぎる」と思ってしまいました。
    作中にも思わせぶりと思われる事がいくつかあって、ちょっと荒唐無稽な発想やなと思ったのがあったからだと思います。

    この話は過去と現在の物語が交錯する形式で書かれています。
    現在の話の主人公は、さくらという女性。
    彼女は映像記憶という、見たものを写真のように細部まで記憶する能力をもっている。
    そんな彼女が描いた、潜在記憶の中から生まれた3枚の絵。
    それは、家の絵、女性が刃物で刺されて池に浮いている絵、赤ん坊にタオルケットをかける母親の絵。
    その絵を見たさくらの母親は顔色を変える。
    特に3枚目の赤ん坊と母親の絵を見た時はショックで寝込んでしまう。
    その後、自分に叔母がいる事を知り、その叔母があるペンションで殺されていた事を知ったさくらはそのペンションに向かう。
    そのペンションは自分が描いた家の通りの建物だった。
    そして、殺された叔母は自分の描いた通りに殺されていた。
    誰が何のために叔母を殺したのか、さくらは真相を探っていく。

    そして過去の話の主人公はそのさくらの叔母にあたるゆう子。
    彼女は若い頃から家族と疎遠で高校生の頃から一人暮らしをしていて、その頃に一人の同級生の少年、芳雄と出会う。
    やがて成長した二人は芳雄の働くペンションで出会うこととなる。
    その時ゆう子は妊娠しており、超能力をもつ集団から追われているので一時ここにかくまってほしいと芳雄を頼ってきたのだった。
    美しいゆう子はモデルや女優として活躍していたが5年前に華やかな世界から姿を消したのもその集団の影響だと言う。
    そして、常に追っての影におびえるゆう子と芳雄、ペンション住民、従業員たちとの生活が始まった。

    この年代の違う二つの話が交互に進んでいくストーリー形式となっています。
    最初はゆう子を殺した人物はもちろん、ゆう子を追う集団の存在がどういうものなのか?
    何故、そこまでゆう子を執拗に追うのかが気になって夢中になって読んでいました。

    このペースだと数時間で読み終わるな・・・と思ったんですが、途中他の事をして読書を再開すると以前ほど中に入っていけず、おかしいと思う事がポロポロ見えてきました。
    一番、荒唐無稽だと思ったのは、ゆう子が追われる原因となった大切なものを会った事もないケニアの人に預けようなどという発想。
    カムフラージュにしたってそれはないだろう・・・という感じ。
    それって、このままじゃ限られた世界での平坦なストーリーになると感じてつけ足したエピソードじゃないのか?と感じました。

    半分くらいまでは一気に読めましたが、そのまま一気読みした方が良かったと思える話でした。
    おかしい所がありながらもその事を気にしなければ面白かったと思うので・・・。

  • 一度見た光景を写真みたいに細部にわたって記憶するという不思議な力を持っている少女が描いた不思議な絵・・・と何やら面白そうな内容。楽しみにしていたんだけど、ゆっくりペースで進む謎解き。なかなか盛り上っていかなくて、途中で退屈になってしまった。あぁまどろっこしい!

    さくらには映像記憶という能力があったんでしょ?ならば、これは禁じ手かもしれないけど、思い浮かぶまま、次々と絵を描いたてみたらよかったのに。もしかしたら、まだ秘めたる潜在記憶の中からヒントになるような絵を描いたかもしれないじゃない?・・・なんて、私は物語を台無しにするイジワルなことを考えていた。

  • 入りやすくスラスラ読めたけど後半の謎解きがなんとも残念な感じがした。

    でもゆう子の気持ちを考えると辛く、9ヶ月の子供がいるからか途中泣けた。

    初めての岸田るり子作品。
    レビューを参考にあと1冊読んでみようかな。

  • 話は、2008年のさくらと、1988年のゆうこの話が交互に進行していく。
    この両者が、うまくシンクロしており、前半は非常に興味深く読めた。
    が、後半の謎解きがおそまつ。
    前半が、面白かっただけに、謎解きを読んでいてがっかりだった。
    具体的には、20歳そこいらの社会経験も、ろくにない若者が、20年前の追い込まれていた被害者たちの心情をすいすい読み解いていく。
    ゆうこが知人を頼ってやってきた住み込みのペンションに、たまたま追う側の組織の人間が暮らしているという偶然。
    警戒していた被害者をおびき出す手法が、あらかじめ録音していた赤ちゃんの泣き声が入ったカセットテープ。
    ちょっとね。
    がっかりだよ、って感じでした。

  • 本屋さんのPOPを見て読んでみようと思った本。
    結果…、ビックリするほどつまらなかった(-_-;)
    最初の方は謎もあって話に入っていけるんだけど、なにせ結末部分がグタグダ…。
    あーあ、ガッカリ。

  • 結末が気になって一気に読んだけど、最終的に微妙なオチ。
    どうしても無理矢理な感じがするのが非常に残念。
    伏線が多くて、引っ張る割にあっさり片付けられてがっかりさせられたり。
    そこそこ面白いけどミステリーとしてはどうなの?ってなる。

  • 藤野木さくらは子どもの頃から絵を描くのが大好きだった。
    しかし彼女が空想で描いたはずの絵は実在している情景だったのだ。
    ある日彼女は夜の池に浮かぶ女性を描いた。
    その手には花束を抱え、胸にはナイフが突き刺さっていた。
    そして大人になったさくらは、祖母から叔母の話を聞いて愕然とする。
    女優だった叔母・ゆう子は、20年前、京都の広沢の池で刺殺されたというのだ。
    さくらは、ゆう子が当時下宿していたペンションを捜し出し、部屋を借りて叔母の死の謎を探ろうとする。。。

    岸田さんの新刊が出ておりました。

    20年前のゆう子目線と、謎を追う現在のさくら目線が交互に描かれ、徐々に真相が明らかになっていきます。
    結局のところは読者しか知ることはできないのですが、少しずつでてきていた小さな謎までもきれいに回収してくれており、丁寧な仕事に満足させていただきました。

    本当に、久しぶりに岸田作品で納得して読み終わることができましたよ。
    岸田作品では『出口のない部屋』が一番好きなのですけど、今回はその次かな。
    無理やりな密室トリックもありませんでしたし。

    とにかく美しい仕上がりとラストに満足して読み終えることができました。

  • 昔と現在の章が交互に続く形式だったけど、とても読みやすかった。
    やっぱり、新興宗教って怖いなぁ。

    最初に部屋の見取り図があったので、なんかトリックでもあるのかと思ったけど、案外関係なかったので、肩透かし。

    真犯人の予想は外れてしまった。。

  • 現在と過去が交錯しつつ、過去の事件の真相を探り出すミステリ。やや超常現象めいた要素もありますが、全体としてはかなり論理的にきっちりとしたミステリでした。
    真相は半分くらい読めば見当がつくかも。でも面白さが殺がれることはありません。事件は確かに悲劇ではあるけれど、奇妙な美しさを感じました。そlして読後感は穏やかです。

  • あさい。

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著者プロフィール

1961年、京都市生まれ。パリ第七大学理学部卒。2004年に『密室の鎮魂歌』で、第14回鮎川哲也賞を受賞。著書に『密室の鎮魂歌』『出口のない部屋』『天使の眠り』『めぐり会い』ほか。

「2021年 『味なしクッキー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岸田るり子の作品

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