- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198638788
作品紹介・あらすじ
学園の一角に建つ壁には日暮れると生徒たちの影が映った。そしてある宵、壁は映し出した、恐ろしい場面を……。京の名門高校に次々起こる凶悪事件。古生物部の部長にして化石オタクのまりあが、たった一人の男子部員をお供に繰り出す、奇天烈な推理の数々とは?
感想・レビュー・書評
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化石オタクの女子高生と振り回される後輩くん、おかしな凸凹コンビが学園の殺人事件に挑む! #化石少女
■あらすじ
私立ペルム学園の古生物部の部長、化石オタクの神舞まりあと後輩である桑島彰。学内の生徒会勢力と、様々な事件に巻き込まれてしまう連作短編ミステリー。
■きっと読みたくなるレビュー
さすがベテラン先生です。
化石をテーマにしつつ、ラノベ風の学園ミステリーを書かせてもお上手。面白かったです。謎解きミステリーというより、エンタメの魅力がたっぷり詰まった作品でした。
一番の読みどころはやはり、ホームズ&ワトソン役である主人公、まりあと彰の二人の会話。ライトな会話や関係性の中にも、気の利いた日本語表現が小気味よく、読み手をぐいぐい惹きつける。
先輩後輩でありつつも、変な主従関係が微笑ましい。
特にまりあが大好きで、美人で金持ち、でも圧倒的に口も成績も悪いっていうトンデモキャラ。やたら我儘で化石オタクのまりあに振り回される彰に同情しつつも「まりあ、もっとやれ」と思ってしまうんですよね。
また、ありえないような学園社会が背景にお話が進むんですが、やたら説得力のある設定や魅力あふれる登場人物が、世界観をリアルさせてくれています。
生徒会の面々も、確かに学生時代こんな奴いたかもなぁ、と思わせてくれるような人物像。特に推したいのは荒子生徒会長ですね。もっともっと主人公との会話や対決シーンを読みたかったな~
本作、化石を小道具にして、うまくお話が進んでいくところがいいですね。
せっかくならもう少し化石自体の解説もしてくれると、さらに厚みが増したのではないかと思いました。
エンタメ力が素晴らしい本作ですが、謎解き要素としても後半には、ぐぐぐっと来きますね~。主人公二人と、私立ペルム学園のこれからが楽しみになってくる作品でした。
■ぜっさん推しポイント
ホームズ&ワトソン役の二人が推理を進めるミステリーはたくさんありますが、本作の二人の能力や関係性はとても興味深いです。
自分都合で摩訶不思議な推理をするホームズ、それを事件解決には導かないワトソン。どんな探偵役なんじゃ。
しっかりとした謎解き要素がありますが、ミステリーや探偵役はこうあるべきというよりも、肩肘張らずに、気軽に楽しめるところが素晴らしいですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
神様ゲームが面白かったので期待したけれど残念。まともなストレートでは来ない作家だとは思っていたけれど、でもねえ、これはちょっと捻り不足だな。もっと驚かせてほしいよなあ。変人化石少女の無茶苦茶推理に、茶々を入れる桑島彰だが、その茶々が最後に効いてくるのは分かるけどね。
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名門高校で次々に起こる事件を、古生物部の部長が推理する連作短編集。毎回、部を廃部にしようとする生徒会の面々を犯人と決めつけて暴走推理する部長と、それを止めるお目付役の後輩という構図。
学園ミステリーというにはひねくれていて、後味の悪さはさすが麻耶雄嵩だが、全体としては地味である。
一番面白かったのは次々に現れる変なクラブ名で、そりゃこんなに乱立してたら部室も足りなくなるわ。 -
快感絶頂!とまではならない本作だが、これで貴族探偵ドラマ化前の麻耶ドーパミンの準備は万端。素人探偵&ワトソンが蔓延るこの時代に、既存の枠に収まらない相棒関係を見せてくれた。まりあの推理は、琥珀に閉じ込められた蟻んこよろしく、ひっそりと価値あるものに違いない。
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推理小説としては胡散臭く、青春ものとしては中途半端、化石のうんちくはなるほどなのでしょうがこちらに興味がないし、主人公二人にも魅力がない。どちらかというと否定的な要素満載なんだけど、(安易に人が死にすぎる)、最後薄ら寒い怖さが良かったです。
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マイナー文化部に所属する高校生が
部の存続をかけて生徒会と丁々発止を繰り広げながら
身の回りで起こる事件を推理していくという
手垢がつきまくりの学園ミステリー。
キャラ立ちを優先された造形で
やたらとエネルギッシュなホームズ役の女の子と
その女の子に振り回されるやれやれ系のワトソン。
涼宮ハルヒとキョンを彷彿とさせる掛け合い。
事件も推理も凡庸というか平凡で目新しさはなく
凡作としか言い様がない作品。
最後に麻耶雄嵩らしさがあるのだが、
エピローグの数ページでオセロのように
すべてがひっくり返って良作になるかというと
当然そんなはずはなく、
どちらかというと作者から信者への餌としか感じられなかった。
「ほら、お前らこういうのが好きなんだろ」と
主人から与えられた餌に、よく飼いならされた犬が
「さすがご主人様。わかっていらっしゃる。
このブラックさがたまらないんです!」と
尻尾振って喜んでる、そんな図式を感じた。
まあ、それでも2015年の各種ミステリーランキングの
TOP10にはしっかり入ってくるんだろうなと思うと
やれやれという気持ちで読後を締めくくる思いだった。 -
最初は麻耶雄嵩らしからぬ爽やかな青春小説といった趣ながら、事件が発生すると『らしさ』が全開になる。そして、どうにもきな臭い雰囲気が漂い始めたところでとても『麻耶雄嵩らしい』エピローグで終了。いや〜、堪能した。
しかし、何が嬉しいって、ずーーーーっと新刊が出ていなかったのに、ここに来て何冊も新しい本が読めることだ。新刊ラッシュまでは望まないが、この先もコンスタントに新しい小説が読めますように……。