- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198639112
感想・レビュー・書評
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源頼朝の少年時代を描く日本史ものファンタジー。
「風神秘抄」の続編で、前作の主人公達も活躍します。
頼朝は伊豆の流刑地に流されてきた。
一族をほとんどすべて失い、あるいはすぐに処刑される決定が出るかもしれない身の上。
生きていく意味を感じられないでいた。
監視役だった伊東佑次は頼朝にかなり優しかったが急死してしまい、頼朝は蛭が小島へ移されることになる。
川の中州にあり大水でもあれば流されそうな小さな島。大蛇が出てきて人を食うといわれている場所だった。伊東の郎党に死ぬことを望まれている身と知りつつ、暮らしていこうとする頼朝。
そんなとき頼朝の乳母を名乗る女人が訪れ、伴っていたのは草十郎だった‥!
草十郎は、舞姫の糸世と新婚の身。
頼朝を守りながら、伊豆の山の地下深くおわす神竜との邂逅にまでこぎつける。
頼朝は生きる道を見出せるのか?
か弱い傷心の少年がこの時期の頼朝では、思いっきりいじいじしていても無理はない設定ですね。
そこからだんだん人に囲まれ、危機を乗り越えて、生気を取り戻し、本音が出てくる展開。
北条時政のまだ幼い娘との出会いもあり、その無邪気さが微笑ましい。
頼朝や一族のその後を思うと、のちのちの波乱の展開が重過ぎて、ちょっと、なんですが‥
和風なしっとり感とファンタジーが融け合っていて、面白く読めました☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平安末期の平治の乱の時代を舞台にした歴史ファンタジー『風神秘抄』の続編が10年ぶりに出版されました。『風神秘抄』で源一族の父・義朝、兄義平は打ち首となりますが、三男頼朝は打ち首をまぬがれ、伊豆へ流刑となります。この作品は伊豆に流刑になった少年頼朝が主人公です。『風神秘抄』で主人公だった坂東武者の草十郎や死者の魂鎮めの舞を舞う少女糸世なども登場し、頼朝が伊豆の土地神である神竜と対峙し、この地に根を下ろしていく姿を描いています。この作品は史実を下敷きに描かれたあくまでもファンタジー作品なのですが、日本史の授業で、平安末期の乱世から、源頼朝による平氏討伐と鎌倉幕府成立のあたりを勉強すると、作品の舞台が生き生きと立ち上がってきて、面白いと思います。歴史の好きな中高生にはぜひ手渡したい作品です。
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流刑地・伊豆、少年は竜と出会い己を知る。
平時の乱後、伊豆に流された少年・源頼朝は、土地のものからうとまれ、希望のない日々を送っていた。命さえ危うくなった時、意外な客が彼のもとを訪れる。
「風神秘抄」の主人公・草十郎や糸世が登場するので、既読者としては楽しめる。読んでなくてもそれなりに楽しめるだろうが、あくまでそれなりなので、「風神秘抄」の読後に読むことをお勧めしたい。
荻原規子さんが描く物語は、どの登場人物も嫌いになれない魅力にあふれている。また別の時代でもいいので、続いてほしいなと願わずにはいられない。 -
しばらくこういう小説ものを読んでいなかったので入りこむのに少しかかったが面白かった。
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著者の久し振りの歴史ファンタジー新作!ということで勇んで読みました。内容は「風神秘抄」の番外編というか続編というスタンスなので、その内容をある程度覚えておいたほうがキャラクタにもなじみ深く楽しめると思いました。
とかくいう私もあまり覚えてなかったので…、いやだからこそ、覚えておいたほうが良いかなと思えたのです。
物語は若き頼朝が敗北にうちひしがれていた状況から、一つの生き方をつかみ取っていくまでが描かれています。
竜という人のちからのかなわないものと対峙すること、出会うことで己の小ささと己を支えている人々のかけがえのなさを知り、そして亡くした人のために未来を生きていく決意を持つ。頼朝の歴史上の立ち位置を知っているからこそ、打ちひしがれていた少年が立ち上がったまさにその瞬間を知れたという感慨を抱けました。
人ではないものの偉大さを知り理解し、敬いつつも畏れ、それらの住まうところで生きさせてもらっているというありがたみをもって、日々を生きる。
日本人ならばこそ、その心根はわかるべきものだと思いますし、さまざまな天災に襲われているからこそ、必要な想いだと、そう思いました。 -
(15-23) 頼朝は助命された後伊豆に流され北条時政の庇護の下育ち、時政の娘を妻にむかえ平氏を打倒し・・・っていうのが私の知ってる頼朝のこと。本来殺されても仕方ないのになぜ?「それはこういうことがあったから」でも不思議じゃないほどの珍しい展開だと思う。題名の「あまねく神竜住まう国」。意味を知ると厳粛な気持ちになった。
出来れば「風神秘抄」を読んでから本書を読むのが良いと思う。 -
この人の描く日本的なファンタジーが好き。
今回は源頼朝を主人公にする鎌倉の話。コンパクトにまとまっているけれど、雰囲気は変わることなく根底にある。 -
荻原さんはこっちのほうが私は好き。
こういう歴史物に題材をとったファンタジーは勾玉以来。
ちょっと硬めの文の中に少年の成長が描かれて、その硬さが心地よい。
風神秘抄との繋がりは知らなかったので、こちらを先に読んでしまったのはちょっと残念。
でも、風神秘抄を読みながら、その後の草十郎と糸世に思いをはせるのも楽しみ!