- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198640231
作品紹介・あらすじ
毎年恒例の「大局を読む」。百年に一度の北朝鮮の大干ばつ。崩壊寸前の金正恩政権と北の難民流入で経済破綻を恐れる韓国。一国二制度を無視して香港ドルを人民元に統合を試みる習近平政権。香港消滅、半島国家の破綻を尻目に好調な経済を持続する日米。その米国が2015年度中に利上げをする。金利高の米国に新興国の資金が流れ低迷するBRICSの経済に大打撃を与える。ギリシャ危機を克服(?)したユーロ。まだら模様の世界経済の行方を分析。
感想・レビュー・書評
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東アジアで起こる激動の正体…中国崩壊や日経平均株価の予測で疑問なところもあるけど、マクロ的視点での中長期に及ぶ分析は面白い。
世界経済を引っ張るアメリカ…ドナルド・トランプの予測は外れたけど、アメリカの利上げは当たりそう。
「日本買い」はオリンピックまで続く…国内問題はお先真っ暗なものばかりで気分が落ち込む。
ドイツ「第四帝国」はユーロの嫌われ者…イタリアといえば悪名高い脱税だが今は憲兵が取り締まりをして成果を上げているとは知らなかった。ドイツが平和的にユーロを支配しているのはベンツとかBMWのお陰なのかな。
ますます深刻化するBRICS経済…ブラジルが資源国でかなり深刻な状況で、ロシアがまだ完全には資本主義とは言えないとは初めて知った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一般的な話しかない
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明日から2016年が始まりますが、来年の世界経済の大局を解説した長谷川氏によって書かれた本です。この5年間の年末には、同じタイトルの本を読むのが毎年の行事になっています。
この5年間で、アメリカの復活が確実になってきて、中国の急成長に陰りが見えてきたのが大きな変化です。この本で解説されている特筆すべき点は、中国が北朝鮮を事実上見放してしまったので、ソ連が東ドイツを見放してから統一することになるのとおなじことが再現されるだろうと予言していることです。
それも遠い未来ではなく、私が社会人をしている間に、自分の目で見ることができそうです。彼の主張はいつもブレませんが、日本経済は盤石のようで、良い会社の業績は伸びていくようですね。
以下は気になったポイントです。
・上海証券取引所の上海総合指数が持ち直しても、その数値には全く意味がない。半数以上の銘柄が売買停止になっているので(p24)
・地方政府は上場時に企業に増資をさせて、その増資分を地方政府が負担した形にする。すると上場後に増資分の株式を市場で売れば売却益が入る。このようなことは中枢部の10省がやっている(p28)
・地方政府には地方債発行による資金調達が禁じられていたので、投資会社(投資平台)を資金調達のために設立した(p31)
・中国全土に鬼城は、最低でも200箇所あるだろう、1か所あたり30~50階建てマンションが25~30棟もある(p33)
・中国も人件費が上がって生産コストがあがり安い商品を生産できなくなった、品質はそれほど高くないので、価格が上がれば輸出は減る(p36)
・中国政府は、香港ドルを人民元に統合することを、2015年2月に決定した。現在香港はドルペッグ制をとっているので、発行されている香港ドル(77億ドル分の米ドル)が香港に置いてあるが、それを中国政府は欲しがっている(p42)
・中国は、AIIBを通じて他の参加国から米ドルを集めて中国の外貨準備を強化しなければならないほど切羽詰っている(p43)
・周永康が無期懲役になったのは、一審判決を認めて控訴しないことを受け入れたから。執行猶予がついても死刑宣告されたら、家族は都市戸籍剥奪されるので、家族のために一審判決に甘んじた(p47)
・習政権は、瀋陽軍区だけは辛うじて抑えているが、他(他の各軍区、海軍、空軍)はダメ(p52)
・安全法規では、一か所に置く化学物質は30トンまでと決めているが、実際には、3000トンもあった(p59)
・北朝鮮の大干ばつを正確に詳細に把握しているのが日本政府、2015.7.7に運用開始の「ひまわり8号」は以前の7号より、解像度は2倍、白黒からカラー画像へ変更、情報量は50倍(p63)
・ドイツは1990年から今日まで少なくとも1900兆円を投じている、韓国の2014年の名目GDPは175兆円を考えると統合にはすごくコストがかかるのが予想される(p68)
・大凶作になっても消費者の需要をまかなうコメが供給できるように1995年から制度化されたのが備蓄米。日本政府には150万トンを基本に50万トンの幅で備蓄している(p70)
・韓国側が徴用工への賠償請求を行うこと自体、国際条約に反しているので、日本は賠償に応じる必要はない(p77)
・北朝鮮を切って2年くらいで、中国も崩壊するだろう(p82)
・アメリカの利上げによって円は安くなる、日本では長期資金が余っているので、アメリカへ流れていくだろう(p101)
・TPPが大筋合意できずに閉幕したのは、医薬品の知的財産権ルールであった、アメリカは12年求めたが、オーストラリアなどが5年を主張した、乳製品も同意できず(p103)
・日本への訪日外国人数が2000万人を超えるだろうすると1971年以来、44年ぶりに出国人数を上回る(p132)
・上海株に投資している中国人と、日本に爆買いに来る中国人は違う。爆買いする中国人は、地方で働いている地方の小金持ち、日本の地方の小金持ちと同じで、株式投資はしないで、安全な資産運用をしている(p136)
・国産バターが減ってきたのは、原料の牛乳生産がここ10年間で12%減ったから(p157)
・2015.6.29、ギリシアはアテネの公共交通機関を無料にすると発表した、紙幣はあってもコインがなくなってきたから(p181)
・ユーロ圏3.1億人の市場規模は、ドイツの領土なのである。ドイツは、ユーロ圏内の貿易であれば、為替レートの影響を受けない、ユーロであればドイツの国力に比べて為替レートを低く保つことができる(p193)
・ドイツがユーロ圏にギリシアを入れておくのは、日本であれば沖縄や北海道を抱えているのと同じ(p194)
・世界貿易の1年間総額17兆ドルm、90日間の決済猶予期間を設けるには、4.2兆ドルの現金が必要、これを調達できるのはニューヨークのみ、なのでドルの基軸通貨は続く(p198)
2015年12月31日作成