金剛の塔 (文芸書)

著者 :
  • 徳間書店
3.20
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198648473

作品紹介・あらすじ

木造の五重塔は地震で倒れたことは無い! 
なぜか?

聖徳太子によって百済から連れてこられた
宮大工が創業した世界最古の建築会社、
金剛組をモチーフに描く連作長編。


「わしらは聖徳太子から四天王寺と
五重塔を守護するようにいわれた一族や」

美しい宝塔を建てるため、
百済から海を渡ってきた宮大工たち。

彼らが伝えた技術は、
飛鳥、平安、戦国と時代を超えて
受け継がれた。

火災や戦乱で何度も焼失したが、
それぞれの時代の宮大工たちが五重塔を甦らせる。

そして、その塔は決して、
地震では倒れなかった。

なぜなのか?

現代の高層建築、
丸の内ビルディングや東京スカイツリーにも
生きている「心柱(しんばしら)構造」の
誕生と継承の物語!

感想・レビュー・書評

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  • 何度焼け落ちても、地震では倒壊したことがない、五重塔。
    その再建の歴史を追った、連作短編集。

    心柱を使った、五重塔の独特の構造が、興味深かった。
    スカイツリーにまでつながっていくのも、意外。

    金剛組(作中では、魂剛組)は、実在する世界最古の会社ということも驚き。

    それぞれの時代の宮大工も、個性的で楽しかった。

    聖徳太子のストラップがしゃべるというファンタジー設定は、妙に軽く、やや浮いた感じだった。

  • 有志以来、地震で倒壊していない木造建築、それが五重塔。各時代の五重塔建立にまつわる八つのお仕事ストーリー。五重塔が、直接でないにせよ現代の高層ビルやスカイツリーの建設に影響を与えているという件りには、鳥肌でした。以前1000年以上の歴史のある金剛組の倒産の記事を新聞で見た気がしますが、こんな物語があったとは知りませんでした。目から鱗の読書でした。

  • 一度も倒れたことがない五重塔、その宮大工たちお話。飛鳥時代より現代まで、聖徳太子が見守り(!)、スカイツリーまでその「心柱構造」は続く、職人たちの熱い物語。
    聖徳太子により中国から仏教とともにやってきた金剛組の祖の大工。地震で倒れるのよう工夫を凝らした。火災や戦禍により消滅してもその時の宮大工により再建されてきた。建物の中心にある「心柱」、その構造がスカイツリーにもある。今もって技術的なことは解明されていないようです。1300年前にこの構造が使われ始めたというの驚きで。聖徳太子が随所に出て面白く、そして難しい解説なく、その時代での人間ドラマありで、興味深い物語でした。地震で倒れない技術を設計した人に解説してもらいたい。歴史が弱い私としては、この柔らかさが読みやすかったかな。

  • 幾度も焼け落ちては再建された五重塔についての、歴史をさかのぼりながらその時々のエピソードを綴る物語。

    語り手が聖徳太子とスカイツリーのストラップということで軽め。
    木下さんと言えば渋いながらも軽快な時代物というイメージだったが、これまで読んできた作品とはだいぶ雰囲気が違っていた。
    現代~初めて五重塔が建てられた飛鳥時代へ、その時々の職人たち、あるいは建設に関わった人々の思いやドラマを描くと同時に、この不可思議な建築技法についても語られていた。

    例えば五重塔を貫く心柱。これこそが肝心要の中心となる柱なのかと思いきや、そうではなく、塔を支える側柱と呼ばれる柱も繋がっているのではない。
    未だに完全には解明されていないというその建築技法によって、焼失はあっても地震で倒れたことはないという奇跡の塔が出来上がっているというのは興味深い部分だった。

    また飛鳥時代編では聖徳太子という人物について大胆な説が展開されている。
    山岸凉子さんの『日出づる処の天子』で聖徳太子に興味を持った私としては、聖徳太子がいてほしいという気持ちの方が強いが、不在説も強くあるのでどちらかは分からない。
    このストラップのように歴史を遡ることが出来たら面白いのに。

  • 金剛組のCMのような小説ですが。オビに「技能時代小説」とあり、なかなか的を射た表現だなあと。時代があちこちに飛ぶのも構成としてなかなか面白い。百済から渡来人として日本に来てからの金剛組の時代時代での奮闘と技の継承の物語は、事実に基づいているので説得力もあり面白かった。

  • 心柱がすっくと立つ五重塔の構造断面図を何度も何度も穴のあくほど見返しながら読んだ(断面図は冒頭部分に掲載あり)。たしかに美しい。古の匠が、理論を超えてその美のなかに真を見たのだろうな、すごいことだ、浪漫だ。
    この塔の構造の神秘の部分だけでなく、なぜ倭の国にこのような塔が建つことを求められたのかという歴史的存在意義まで含めるには、あらゆる時代から視点を変えて語る必要があり、“ストラップ”が各時代を旅して、その所有者に視点が移るという設定が、頭を切り替えやすくて、とても感心した。屋根や側柱などの支え、しなる構造は高度な数学や力学(わかってしまえば教わるだけならシンプルなのかもしれないが、数学の定理の道を切り拓いてきた知恵者たちもあらためてほんとすごい)の上に成り立ってるんだなー。伝右衛門の章が、いちばん心に残ったな。泣いた赤鬼の青鬼くんをおもいだした。

    “変わることをおそれるな”
    ”謎だからこそ知恵があつまる”
    ひとが未来へ歩みつづけるために。勇気をもらえるメッセージが詰まっている。頁を繰ってこの国のかつてのいつかを旅しながら、考えさせられた。
    学ぶ喜びのある1冊。良作です。

  • 五重の塔が地震に強いと言うのは、本作品で初めて知った。またこの時代においてなぜ地震に強いのかも十分解明出来ていない事にもビックリ。昔の人ってスゴイね。
    聖徳太子とスカイツリーのストラップがタイムトラベラーになって物語が進んでいく。
    この話でも出てくるが、五重の塔を伝えた技術者は朝鮮半島からやって来たと言われている。今の関係が残念ですね。

  • 火災や戦災で焼失しても、地震では決して倒れなかった四天王寺の五重の塔を千年以上にわたって、再建し、守ってきた歴代の匠工たちの物語、というと、硬そうに思うけど、これが出だしから軽く裏切られるというか、そうきたかと。ネタバレすぎるから詳しくはいわないけど、一歩間違えたら、安っぽくなりかねない設定を、五重の塔の建築技術などを絡ませながら、だんだんと違和感なく馴染ませていく構成には素直に感心。気軽に読めるのに、なんだかいいことをたくさん知ったような読後感が心地良い。

  • 五重塔をテーマとした歴史小説、という事で読んでみたが思っていたよりもファンタジー要素が強く、読みたいと思っていた内容とは少し違っていたので星3つで。
    それぞれの話は良いし、第六章で登場する聖徳太子こと厩戸皇子の正体の設定も面白い…のだけど、聖徳太子(ストラップ)がただの歴史の観察者として時を遡るのではなく、当時の人々に対して話しかける(相手にも直接声が聞こえる)、意識に介入して喋る点はちょっと…微妙だった。

  • 物語の語り手が四天王寺五重塔とスカイツリーを象ったストラップ、という斬新な設定。木下昌輝さんの歴史小説が好きで、いくつか読んできたけど、これまでとは一味も二味も違った軽妙な語り口で始まって、初っ端からビックリした。ただ、この設定のおかげで取っ付きやすい歴史小説にはなっていたかもしれないけれど、プロローグとエピローグの現代の部分だけが登場人物共々何だか浮いていて陳腐に思えてしまった。しかしながら、本編部分は文句なく面白い。ストラップの持ち主が時代によって変わるけれど、それぞれの持ち主の目線からの五重塔の建築過程が非常に興味深く読めた。

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著者プロフィール

1974年奈良県生まれ。2015年デビュー作『宇喜多の捨て嫁』で高校生直木賞、歴史時代作家クラブ賞新人賞、舟橋聖一文学賞、19年『天下一の軽口男』で大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で野村胡堂文学賞、20年『まむし三代記』で日本歴史時代作家協会賞作品賞、中山義秀文学賞、’22年『孤剣の涯て』で本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞。近著に『応仁悪童伝』がある。

「2023年 『風雲 戦国アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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