OODA 危機管理と効率・達成を叶えるマネジメント

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198650179

作品紹介・あらすじ

アメリカ・シリコンバレーをはじめ、
欧米のビジネス界で採用されている
リスクマネジメント術!

OODAとはObserve―Orient―Decide―Actのループの頭文字で、具体的には、情報収集―状況判断-意思決定-行動の一連のマネジマントのこと。変化や想定外の事態などの非常時や危機管理に対応するための意思決定の思考術である。
日本に広く定着したPDCAは業務改善、効率化、品質改良などのマネジメントサイクルだが、これは平時のマネジメントサイクルであり、その決定的な違いは、PDCAは計画が出発点であるのに対して、OODAは観察(情報収集)と状況判断(状況認識)となり、一連のループ、マネジメントサイクルに要する時間には桁違いの差が生まれる。
OODAは朝鮮戦争を経験したアメリカ空軍のパイロットにより考案された、戦闘における意思決定のループである。敵機や周囲の状況を眼で見て、状況を把握・判断し、自機の採るべき行動を意思決定して操縦し、敵機を打ち落とす。撃墜するか撃墜されるか、生死を分ける意思決定であり、まさに危機管理における究極の意思決定のループであると言ってよい。
世界経済のグローバル化、発展途上国の成長、技術革新の目覚ましい発展などにより、今までの常識では予想がつかない出来事、激しい変化に対応する必要が生じてきている。こうした背景から欧米ではビジネスにおいても、1970年代に考案された戦時のマネジメントである、OODAが再び注目されるようになった。
その理由は変化の速さに対応するためには、即断即決で意思決定ができる体制を整備しておく必要があるからだ。そしてその整備とは、企業風土、組織体制、リーダーの人材育成、業務モデルなど、さまざまな角度からの包括的な変革を要する。
危機管理と危機対応能力。
政治家や官僚、また企業や個人、昨今のさまざまなインシデントやトラブル、不祥事への対応例から、OODAの仕組みを解説し、新時代に必要なリーダー像を構築していく。

第1章 リスクマネジメントの本質
 ――今、なぜ危機管理が必要なのか
第2章 事例で見る危機発生時のリーダー論
 ――組織の運命はリーダー次第
第3章 OODA時代に求められる役割遂行型リーダーシップ
第4章 OODAの概念
 ――リスクマネジメント・危機管理のための意思決定ループ
第5章 OODAループ① Observe「観察」する能力を鍛える
第6章 OODAループ② Observe―Orient「観察」「状況判断」をするために情報力を磨く
第7章 OODAループ③ Observe―Orient 悲観的に準備する
第8章 OODAループ④ Decide決断力を磨く
第9章 OODAループ⑤ Act楽観的に対応する
第10章 OODA時代を生き抜く リーダーに求められる条件
第11章 持続可能な組織運営のためにリーダーをどう選び、育てるべきか

感想・レビュー・書評

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  • 旧日本陸軍の大本営参謀を務め、戦後は第二次臨時行政調査会の委員などを務めた瀬島龍三氏は危機管理の極意をこう表現した。
    「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」

    (引用)OODA危機管理と効率・達成を叶えるマネジメント、小林宏之著、株式会社徳間書店、2020年、124

    ビジネスの世界では、PDCAサイクルがよく知られている。しかし、OODA LOOP(ウーダー ループ)は、まだあまり我が国には浸透していない。以前、私もチェット リチャーズ著の「OODA LOOP」(東洋経済新報社、2019年)で初めてその存在を知った。

    このOODA LOOPは、アメリカ空軍パイロットのジョン・ボイド大佐が考案したもので、

    ・観察(Observe)
    ・状況判断(Orient)
    ・意思決定(Decide)
    ・行動(Act)
    の4つのフェーズを回していくものだ。

    空軍兵士が考えたこともあり、当初は危機管理ツールという意味合いが強かったかもしれないが、次第にスピード重視のビジネスの世界にもOODA LOOPの考えが広まりつつある。

    このたびの小林宏之氏による著書は、OODAループを「危機管理」中心に書かれてはいるものの、OODA LOOPの入門書としても十分活用でき、即断即決が求められるビジネス界にも応用が効くものとなっている。

    先程の4つのフェーズごとで、それぞれ「何をすべきか」ということが最新の事例によって語られており、危機管理の出発点とされる「何を大切にするのか」といった視点をもとに、小林氏は、OODA LOOPを回していくことを分かりやすく教えてくれる。

    最近では、湖北省武漢市が発生源とされる新型肺炎コロナウィルスの感染が広がりつつあり、中国を始めとした経済活動にも大きな打撃を与えている。このコロナウィルスは、もはや対岸の火事ではない。我が国も感染拡大防止のため、関係機関と協力し奔走している。なにも、コロナウイルスは、国に全てお任せではなく、県や市町村が危機の未然防止をし、危機発生時の最悪の事態を防ぐ被害極限対応できる体制を整えることにより、国民、県民、市民からコロナウイルスの感染拡大を少しでも防ぎ、発生した場合は速やかに適切に対処していくことが求められる。

    OODA LOOPは、観察から始まる。そして、状況判断をして、意思決定をする。いま、「自分たちの置かれている状況はなにか」、そして、そこから「私達を守るには何をすべきか(危機管理の出発点である「何を大切にするのか」)」を考え、悲観的に(最悪のシナリオを想定して)準備していけばよい。そうすれば、もし、身近でコロナウイルスの疑わしき事例が発生したら、シナリオにそって(シナリオ通りにいかないケースもあるが)、落ち着いて行動を起こすことが肝要だ。

    しかし、悲観的と言われれば、そこで終わらないのかもしれない。今後、県内で多数の新型肺炎に罹患した患者が発生した場合、最悪のケースといえば、武漢で見られるように交通機能封鎖の措置がとられ、生活必需品が手に入らなくなることなども想定される。また、学校や会社も機能停止し、病院には、患者があふれかえる。まさに、今、中国でおこっていることが、私達の身近で発生するかもしれない。そのため、私達ができることは、いまの状況をしっかり観察し、あらゆる悲観的なシナリオを想定して、準備し、意思決定をし、行動を起こすことだ。

    私もかつて危機管理部署に所属したことがある。そのとき、東日本大震災が発生した。被災地に出向き、津波によって何もかも洗い流されてしまった跡を見て、人間の無力さを感じた。しかし、そんな状況でも、明るいニュースもあった。そのニュースは、いわゆる「釜石の奇跡」と言われ、当時、釜石市内の小中学校の児童・生徒たちは、地震発生時に自主避難して、学校管理下にあった児童・生徒らは全員助かった(生存率99.8%)。なぜ、津波を知らない子どもたちが悲観的な事態を想定して、命を守ることができたのか。それは、群馬大の教授だった片田敏孝先生が、津波からの避難訓練を8年にわたり続けてきたからだ。

    その子達は、「率先避難者」として、まず子どもたちが避難することで、大人たちもそれに引きづられる形で避難を始めることもできたという。まさに、観察(大地震発生)、状況判断(津波が来るかもしれない)、意思決定(高台に避難しよう)、行動(周りの人を呼びかけて避難)といった、即時即決を強みとするOODA LOOPがうまく機能した事例だと思った。行動を起こす際、すでに準備ができているから、落ち着いて(楽観的に)対処できる好事例だ。これが、従来のPDCAサイクル、つまり、PLAN「計画」から始めていては、子どもたちは助からなかった。

    危機管理は、なにもこのような大きな事例ばかりではない。私達の身近にも、危機管理事案は多く存在する。そのとき、OODA LOOPは最強のツールとなる。

    もう一つ、大切なことは、「悲観的に準備」することは、無駄が多いことだ。それは、小林氏も著書の中で指摘する。準備しすぎて、結局、何も起こらなかったということだ。私も、かつて危機管理部署の先輩から「空振りは大いに結構」と言われてきた。つまり、準備しすぎて、何も起こらなかったこと(空振り)は、危機管理の最優先される「人々の命と安全を守る」ためなら、歓迎すべきことだと言われ続けてきた。

    クドいようだが、私達が「何を大切に」し、それを守るため、常日頃から悲観的に準備し、いざというときには楽観的に対処できるようにしておくためにできることは、日常の仕事の中でも意識しておくことが必要だろう。

    小林氏によるOODA LOOPの本は、私も共感することが多々あった。多くの人におすすめしたい。

  • ウーダというワードがいくつか他の書籍で見かけ気になって購入。そうよね、という内容。わかってて行動できるかが大切なんだなと感じた。

  • 難しい

  • 元JALのパイロット、リスク管理の専門家による著書。説得力がある。
    OODAそのものよりも、リスク管理をどうするかが中心となっている。
    リスク=P リスクの発生確率× D 被害の大きさ

  • ●履歴
    ○2020.1 はじめにおわりにのみ流し読み
    ●概要
    はじめに
    ○OODA
    O 観察observe
    O 状況判断orient
    D 意思決定decide
    A 行動act
    ○PDCAとの違い
    ①出発点がpdcaは計画、OODAが観察・情報収集
    ②ループを完結するのに要する時間の単位がOODAの方が極めて短い
    P→月単位、年単位 O→時間単位、分単位、秒単位

    第1章
    ○リスクマネジメント=人間の活動に伴う不確実性、様々なリスクに対するマネジメント
    ○危機管理=生き延びること、種族の保存

    おわりに
    ○「徹底する」
    =行動態度思想が中途半端でない
    =すみずみまで行き渡ること

  • 危機管理とリーダーシップに関する自己啓発本、
    という印象が強く、
    OODAを前面に押し出すタイトルには違和感を覚えた。
    自己啓発本としては、自己啓発本らしく、
    著者の主張はごもっともです、という感じ。

    OODAを以下のように翻訳。
    Observe=観察
    Orient=状況判断
    Decide=意思決定
    Act=行動

    実際は危機管理とOODAは共存する概念だと思うし、
    著者もそういう考えでいることはわかるが・・・

    著者が元パイロットということもあり、
    危機管理のリーダーシップ事例として、
    「安全最優先」が求められる航空機ネタが多い。
    これがOODAの好事例と理解するのが、正直難しいと感じた。

    「悲観的な準備」としてリスクの洗出しと定量評価を紹介したり、
    危機管理として「余剰・無駄の確保」の重要性を強調したり。
    同時にOODA思考として「Fail Fast」を推奨したり。

    と読後の感想をここまで書いてみて改めて思った。
    本書はなぜ「OODA」をタイトルにしたんだろう・・・?

  • 2020/12/6

  • OODAの本としてではなく、危機管理、リスクマネジメントの本として読むのが良いと思った。

    悲観的に準備して、楽観的に対応する。
    歴史に評価されなくてもいい。
    嫌われる決断が、リーダーには必要。

  • 生き延びるにはどうしたら良いか?
    大事に至らない(=死なない)に尽きる。

    ものごとは予見可能か?(=予め計画して対処可能か?)
    そんなことはない。

    では不測の事態にどう立ち向かうか?
    そもそも「不測の事態」 = 「想定した前提が覆る」こと。
    だから生き延びる秘訣は想定外に応じられる無駄を設けること。

    無駄というのはリソースをドブに捨てるという意味ではない。
    まずあり得ないところもあで細心に事前準備する無駄。
    いざというときに振り向けられる余剰を持つといういう無駄。
    今の想定に確信を持たず、最適化(余剰の削ぎ落とし)をしないことである。



    なんでもコントロールが及ぶのか?
    どの程度コントロールが及ぶかが事前に分かるのか?
    そんなことはない。

    ゆえに問題や原因という捉え方は筋が悪い。
    あらゆる現実を「前提」と捉える方が柔軟である。

    あの人はあんな性格だから、、、
    お金がないから、、、
    こういったことを問題と捉えたり、
    ままならない原因であると捉えると硬直する。

    自分のルールや普通を前提に最適化しようとしたら、
    想定外ばかりが発生し、万事問題だらけになる。
    自然に起きたことはただ現実であり、前提と捉えることである。



    これは生き延びる(クライシスマネジメント)の1つ。
    生き延びるのに適した考え方がライフスタイルの
    一部と化している人がその役割を負い、決断するとよい。
    リーダーという役割を目的にあわせて割り当てるとよい。

    業績を見てリーダーにしてはいけない。
    業績に報いるためにリーダーにしてはいけない。
    「役割と報酬の分離不全」事態が危機につながる。



    「ハドソン湾の奇跡」では乗客乗員全155人が無事に生還した。

    この何がすばらしかったか?
    それは無駄とも思える高度な訓練を積み、
    事故に際しては不時着水を選んだことである。

    航空会社が競争優位性を得るにはコスト最適化すればよい。
    つまり、安いパイロットを長時間働かせれば安くなる。
    滅多にない(限りなく可能性がゼロに近い)非常時を
    ないものとみなせば熟練は不要なので、安いパイロットを雇える。

    着水ではなく、近くの空港に着陸できれば良かった。
    不時着水すれば飛行機は産廃であるから、航空会社には嫌われる。
    ただし、空港に向かうということは市街地を通るということであり、
    最悪の事態であれば相当数の死傷者が出る。

    経済的な生き残りに終始せいてコストダウンせず、
    そのような決断をしても継続できるだけの無駄を航空会社は容認する。
    利用者は予備力を(=無駄を)含む運賃を払うことをよしとし、
    パイロットは無駄とも思える訓練を真面目に重ね、
    いざという時に飛行機を犠牲にしても不時着水を決断する。

    危機管理という側面から見て、これが素晴らしい成果なのである。



    さて、さりとて削れる無駄は削らねば生き残れない。
    それには他者の知恵を自分の知恵とすることである。

    知恵とは「自らが実際に経験した使える知識」ではない。
    そのようなスタンスでは危機に立ち向かうことは難しい。
    知恵とは、自分の「ものになっている知識」である。
    他者の知恵を学び、それを自らの血肉とするのである。

    経験なしで知恵を獲得できる領域について、
    よく勉強(無駄)して事前準備すること。
    経験して初めて知恵を獲得できる領域について、
    何が起きても「前提」と捉えて決断すること。

    危機管理能力は筋肉のようなもの。
    使わなければ弱るし、使えば強くなる。
    せっかくの知恵を知識化しないようによく勉強しすること。
    自分の意に反することを前提として考え/行動する訓練を積むこと。
    そして、日々実際に不測の事態を体感し続けること。



    不測の事態がマネジメントできれば攻めに出られる。
    計画を前提におけない難しい、変化の早い領域にアプローチできる。
    誰もしたことがない何かを目標に据えるなら、
    クライシスマネジメントがその達成の役に立つのではないか。
    多くの人にとって、目標達成の一助になり得るのではないか。



    この本で書かれた大切なことはOODAではなく、
    こういうことではなかろうか。

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  • oodaループとタイトルにありますが、実務のベテランが書いたオールドスタイルのビジネス本です。oodaループのスピード感を伴う意思決定が台無しにならないかな、と思うような提案もあったりして、期待外れでした。

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著者プロフィール

1946年10月4日 愛知県新城市生まれ。1968年日本航空株式会社に入社。入社以来42年間、一度も病欠などでスケジュールの変更なく飛び続ける。乗務した路線は、日本航空が運航した全ての国際路線と主な国内線。総飛行時間18500時間。その他、首相特別便機長、湾岸危機時の邦人救出機機長など。2008年には、「高度一万メートルからみた地球環境」というテーマで、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアに出演。2010年3月退社時のラストフライトはマスコミの話題となり、新聞・テレビなどで特集が組まれる。日航退社後は、危機管理・リスクマネジメントの講師として活躍する傍ら、航空評論家としても活躍中。

「2020年 『新装改訂版 旅客機・エアライン検定 公式テキスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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