- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198654467
作品紹介・あらすじ
世界26カ国で翻訳され、英語版だけで28万部超のベストセラー!
英国のAmazon評価6000件、レビュー800件以上の話題作!!
行き過ぎた「多様性尊重」は、社会をどのように破壊したのか--
ダイバーシティ先進国で起きている「不都合な真実」。
LGBT、フェミニズム、反レイシズム運動などをめぐり、欧米社会で広がる偽善と矛盾、憎悪と対立。おかしいと思っても誰も声に出せない同調圧力の実態とは。
アイデンティティ・ポリティクス、インターセクショナリティ…新たなイデオロギーはいかにして生まれ、なぜ急速に広まったのか。
ツイッターやグーグルなど、シリコンバレーが進める機械学習が生み出す歪んだ歴史と新たな偏見。その基底に潜むマルクス主義。
……さまざまな事象から問題の本質を見抜き、その複雑な構造を読み解いていく驚きに満ちた快著。
世界的ベストセラー『西洋の自死』の著者が、圧倒的な知性と知識を武器に新たなタブーに挑む!
◎世界で相次ぐ本書への称賛
「マレーの最新刊は、すばらしいという言葉ではもの足りない。誰もが読むべきだし、誰もが読まなければならない。ウォーク(訳注/社会的不公正や差別に対する意識が高いこと)が流行するなかではびこっているあきれるほどあからさまな矛盾や偽善を、容赦なく暴き出してい
る」
──リチャード・ドーキンス(イギリスの動物行動学者)
「実にみごとだ。最後まで読んだ瞬間、数年ぶりに深呼吸をしたような気分になった。大衆が狂気に陥っているこの時代に、正気ほど気分をすっきりさせてくれるものはない。刺激的だ」
──サム・ハリス(アメリカの神経科学者)
「アイデンティティ・ポリティクスの狂気についてよくまとめられた、理路整然とした主張が展開されている。興味深い読みものだ」
──《タイムズ》紙
「マレーは、疑念の種をまき散らす社会的公正運動の矛盾に切り込み、大衆の九五パーセントがそう思いながらも怖くて口に出せないでいたことを雄弁に語っている。必読書だ」
──《ナショナル・ポスト》紙(カナダ)
「ばかばかしいエピソードから悲劇的な逸話まで、マレーはアイデンティティ主義者が陥ったさまざまな病理を、冷静さを失うことなく描写している。この本は、政治闘争を呼びかける鬨(とき)の声ではなく、構造的特徴が転々と変わり矛盾が絶えず噴き出すこの奇妙な世界を案内する地図である」
──《コメンタリー》誌
感想・レビュー・書評
-
トランスジェンダー、フェミニストによる社会公正運動に対し、同じ属性であってさえ、時々やり過ぎ、言い過ぎに感じる事があり、そこには彼、彼女らを代表しているフリをした当事者不在の社会活動家や政治家の利害が混在するために、物事は余計にややこしくなる。トイレやお風呂に関しては、当のトランスジェンダーの方が、肉体の性と異なる居場所を別に求めてはいない事を説明し、LGBT法案に意見したものがニュースになっていた。当事者不在という意味での社会公正化を巡る議論はAV新法にも通ずる。
ある文化圏において理想を求める事は悪くないが、理想がそれぞれに異なるため、多様な価値観を包含する制度設計は難しい。本著でも、ゴールを示すのは容易ではない事を述べ、至近の動きは過剰にも見えるが停止も後退もせず、単に今まっしぐらに突き進みつつある世界の始まりを解説したものだとする。著者は、過剰な動きに冷や水を浴びせたい思いもあったようだ。そして、著者は自らゲイである事をカミングアウトしている。
ー偶然に割り当てられた特徴のために個人の可能性が抑制されることのない社会を目指すと言う点に異論は無い。何かをする能力何かをしたいと言う欲求があるのに、人種や性、性的志向によりそれが抑制されるような事はあってはならない。だが違いを可能な限り少なくするというのは違いはないふりをするのとは違う。性や性的志向、肌の色の意味は無いと考えるのは馬鹿げている。しかし逆に性や性的志向、肌の色が全てだと考えれば、致命的な結果を招くことになるだろう。
上記は引用だが、本著の主張を凝縮している。性的志向については、異性間のそれであっても、希望が叶わず経験できぬ人がいる中で、トランスジェンダーだけが理想追求に下駄を履く必要はない、気がする。まして、更衣室やトイレ等の問題はあっても、職場に性志向は関係ないハズでは。問題は、その無関係なハズの項目に対する不利益の方だ。性に関係ない場所で、性により不利益を被らない社会は必要。発情すべきではない場所で、発情しない社会。
アンコンシャスバイアス、マンスプレイニング、パブリックシェイミング、インターセクショナリティ、ミスジェンダリング、キャンセルカルチャー、ノンバイナリー…。この界隈の専門用語、というよりも、日本語として浸透していない、誕生していない言葉だという事について、それを文化的な遅れと見るのか、そこに舶来の作為を見るのか、今の所は、多面的かつ冷静でいたい。 -
現在のLGBTQ運動が極端な方向に行ってしまっているのは間違いないと思う。
この本のイントロダクションにはこう書かれている。これらの問題全てに共通しているのは、いずれも真っ当な人権運動として始まったことで、だからこそここまで成功を収めることが出来た。だがある時点でそのいずれもが全てガードレールを突き破ってしまった。平等であるだけでは満足できず、更なる向上というとても擁護できない立場に居座ろうとするようになった。
その主張があらゆる人間は同等の価値を持っているとみなされるべきであり、一人一人に同党の尊厳を与えるべきだ、というなら受け入れられるかもしれない。だが、同性愛と異性愛、男性と女性、ある人種と他の人種、それぞれの間に全く違いは無いという主張を受け入れるように求められるならば、大衆はいずれ狂気に陥る。
同性愛にしても、同性愛の男性と同性愛の女性の間には共通点がほとんどない。同性愛の男性はたいてい同性愛の女性を野暮な身なりをしてつまらない存在と考えており、逆に女性側は男性に対し、大人になりそこなった姿をさらしている下らない存在と考えていて、どちらも互いをさほど必要としていない、との事だ。
Googleの検索も当然ながら恣意的な修正がなされている。例えばゲイのカップルと検索すると、見栄えの良い幸せそうなカップルの写真が次々と表示されるが、ストレートのカップルで検索すると、同性愛カップルの写真も同数位表示されるとかだ。
ハーバード大学では多様な人種の中で学問を身に着けた人物を世に送り出したい。しかし、入学考査時に恣意的な変更を加えなければ、学生はアジア系アメリカ人と中部・東部のヨーロッパ系ユダヤ人ばかりになってしまう。
結論の章で筆者は私たちの文化はいまや、解決不可能な問題が埋め込まれた領域に足を踏み入れている。例えば「女性は性的対象と見られることなくセクシーな装いでいる権利がある」とか「人種差別に抵抗するためには、多少人種差別的にならねばならない」とか、今ではこのように妥協点など探りようがない、ありとあらゆる不可能な要求がなされている。相違を可能な限り少なくするというのは、相違が無い振りをするのとは違う。性・性的嗜好・肌の色に意味は無いと考えるのは馬鹿げている。しかしそれらの違いを基本的な考えの全てだと考えるならば、致命的な結果を招く事になる、と結んでいる。 -
紹介されている事例がやや日本人に馴染みが薄いことや、これでもかという膨大な事例でお腹いっぱいになりますが、主張は至極まっとうであり、シンプルでわかりやすいです。「結論」の章だけ読んでも大意は掴めそうです。
この流れはごく一部の国だけではないでしょう。世界中に広まるかと問われれば疑問ですが、日本国内で引きこもってしまうのでなければ、一読しておくのが良いのではないでしょうか。 -
社会的公正運動を新興宗教と批判。その構造はマルクス主義と類似性があり、ネット社会が大衆の狂気を増大させている。そしてその行きつく先は社会の分断であるという。テーマとしては、ゲイ、女性、人種、トランスジェンダーをあげ、ハードとソフトという切り口で分析しているが、ハードが入れ替わってしまうトランスジェンダーが最も厄介な問題であるとしている。この点で、LGBはTとは対立関係になりやすいという指摘は興味深い。その他、運動内部では様々な矛盾があり、アチコチでコンフリクトしているとのことである。この辺は寛容になれないリベラリズムという問題が内在しているからであろう。解決策としては「何と比べて」と問うてみる(比較法を用いる)や、「犠牲者は善良で正しいのか」を疑ってみる等を提示している。
保守系サイドからはよく批判されるこの種の運動だが、ジャーナリストらしく数々の事例をあげて、冷静に解明している点は評価できるし説得力もあるが、やや冗長な印象も受ける。切り口や観点は面白いので、もうちょっとメタな視点から学術的にこの問題が検証されるとより説得力が増すのではないだろうか。 -
メディアやIT企業が、極端で、非対称的な取り扱いを求める「マイノリティ」の主張を増幅させる背景には、今の自分達の「不当に恵まれた境遇」を、ノイジーな「マイノリティ」の攻撃、修正要望から、守り、彼らから看過してもらう通行手形を獲得するため、というところもあるのか、と気づいた。
結論としては、「仲間だけでなく、表面上の敵にも寛大さを示すことが、この狂気から抜け出すための最初の一歩になる。」と示されている。
極めて穏当だと思う。
また、ありとあらゆる討論と議論から、特定の属性に関する要素を取り除き、ますます高まる特定の属性へのこだわりを追い払い、特定の属性にとらわれない方向へ進むべき、ということもそのとおりだと思う。
いずれにせよ。
ある対象に向けた主張を、逆向きに適用したときに、違和感のある主張には気をつけるべき。
ということを、改めて感じた。
そして、そうした考えは、私一人の奇矯なものではない、と実感できたことは、収穫だった。 -
1章 ゲイ
あらゆることがゲイの問題になる
ゲイの人生は一方通行なのか?
ハードウェアvsソフトウェア
哲学上の混乱
ゲイとクィア
同性愛嫌い
第2章 女性
「LOVE YOU」
男性をとりこにする
女性は本気である
アンコンシャス・バイアス研修+インターセクショナリティ
フェミニズム運動の波
男性に対する闘い
第3章 人種
学界
「問題視」されたアーミー・ハマー
中傷
昨日までは違った
文化の盗用
黒人は政治的なのか
主張よりも肌の色が重視される事例
過激化する表現
知能指数
間奏 ゆるしについて
第4章 トランスジェンダー
異常ではない部分
間性
性転換
自己女性化愛好症
トランスジェンダーの躍進
専門家
この先どこへ向かうのか? -
p199 デンマーク コンピュータ科学者 モーテン・キン
新たに登場したテクノロジーについては、確実に言えることが一つある。それは短期的な影響は過大評価され、長期的な影響は過小評価されるということだ
p209 グーグルが懸念している、先入観や懸念 相互作用バイアス、潜在バイアス、選択バイアス -
第103回アワヒニビブリオバトル テーマ「狂」で紹介された本です。ハイブリッド開催。
2023.9.5 -
すごく良かった。人間の道徳感は今はグーグルが良いと判断したものを模倣しただけでしっかりと考えた訳ではないと気づけた。読書を続けて常識を疑い、自分で考える習慣をつけようと思った。
https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/review/20220719-OYT8T50098/