隠蔽指令 (徳間文庫 え 7-2)

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  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198930479

感想・レビュー・書評

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  •  実感のこもった小説で、めっちゃ面白かった。特に、主人公の苦しめられっぷりが良い。これで、主人公がここまで苦しんでなければ、女性に対するやり方のひどさで、興ざめになっていたかも。想像を絶する苦しみのなか、仕事をしているので、女性関係もかろうじて納得できる。女性の描写が~とか言われそうだが、まあエリート男性からしたら女性ってこんなもんだと思う。女性からしても男性ってこんなもんだろうし。
    「会社は必ずあなたを裏切る」というトラウマにも近い確信に基づいて書かれただけあって、文章が熱いし、何か賞を取っても良いと思う。もったいない作品。政治家、銀行、暴力団、女。それらをつなぐ「金」。そして何より「誰が責任を取るか」または「責任を取っても大丈夫なときに、責任者として誰が漁夫の利を得るか」。うちも、そういう「団体」の事務員として働いているので、この銀行内の、責任の避けあい、押し付け合い、事なかれ主義と野心の両立。とても面白く読んだ。サラリーマン小説として必読だし、好みです。
     トップが愛人を作って、その愛人が妊娠して、火消しに何億と奪われる。その後、銀行合併において、問題となるので、別の金融会社にその金をうつす。でも、調べられたらバレるので、なんとか最後の火消しをしようとするが、ぜんぜんだめ。そこに、政治家秘書がからんでくる。秘書は、政治家の新党立ち上げのために、銀行の融資が欲しい。そしてその秘書は愛人で脅迫して儲けている男とつながっており、その男を消す。その引き換えに融資をもらおうとするが、銀行は責任を放り出して逃げようとする。金利の法律改正反対で一致した銀行務めの主人公と秘書は、支店の支店長の出世心をつかって政治家への融資を取り付ける。お金を得た秘書は、新党を無事に立ち上げ、金利上限への反対に動き始める。主人公は、警察に、政治家の話題は避ける形で愛人騒動と総務部と暴力団の関係を伝えて、銀行をさっていく。責任をすべて部下に押し付けるトップの姿と、そのトップにすがる部下の姿を克明に描いている。

  • 信頼している上司に頼まれたとてつもない仕事・・「隠蔽」
    何とかそれを達成するために奔走する主人公。
    しかし、残酷にも失敗の全責任を負うのは自分・・。
    サラリーマンは実に歯がゆい。

    「会社はあなたを必ず裏切る」・・あとがきに書かれた江上剛のこの一文。何だか胸に沁みます・・・

  • 頭取秘書の銀行員が、頭取や役員の無能ぶりに自身で動き大活躍するスカッとする話しだと思ったが、まったく違うドロドロした話。

    主人公も真っ当な秘書だと思っていたが、裏では悪いことをしており、自身の責任ではないと思い込んでいるのが読んでて情けない。

    最後に元銀行員の著者がこの本を書いた理由が書いてあるが、うーんという感じ。

    元銀行員の作家さんといえば池井戸潤の書く話の方がよっぽどスカッとした読後感がある。

    このストーリーも池井戸潤が書いていたらどんな話になったかと思ってしまう。

  • 相談役の不祥事で隠蔽された債権を巡って今の頭取から指令が出された。それを素直に揉み消そうとどんどん深みにハマる。銀行では何もしない事が一番で、正義感を出す事で心身共にボロボロになってしまう。まあ、銀行とはそういうものだ。

  • 過去の役員の不祥事に端を発した不良債権の処理に、銀行員、政治家など登場人物の様々な思惑が絡む物語。潔ぎよく魅了的な男は一人も登場しない。作者の実体験も元に描かれたもののようで、巻末に作者が本作を書いたわけが掲載されている。

  • 「僕は君に信頼を置いているからね。うまくやってくれ」頭取の言葉に、行員天野の体は熱くなった。かつてのトップが愛人絡みで行った7億円もの不正融資が、いまメガバンクを脅かしつつあった。一時は系列ノンバンクに飛ばしてしのいだ問題が、貸金業法改正の動きとともに再浮上してきたのだ。事態打開のため奔走する天野。闇社会の介入、そして起こる惨劇。家庭さえ崩壊させながら悪戦苦闘した果ての報いとは?仕え続けてきた者たちに対し、天野は自己回復の闘いに打って出た。

  • 合併銀行で頭取秘書を務め、銀行・頭取に忠実に仕えようとする主人公天野が、「隠蔽指令」を受けてずるずると罪の深みにはまっていくが、最終的には銀行・頭取に裏切られるというストーリー。
    著者は、「会社は、あなたを必ず裏切る。その時、あなたは後悔しない人生の選択ができますか」というメッセージを込めて、本書をサラリーマンへの警告の書として書いたとのことだ。「登場人物全員悪人」という感じでとても読後感がよいとはいえなかったが、自分の社会人生活の他山の石とするのに、意義のある内容だと思った。面子のために仕事をすることや、派閥争いの不毛さをひしひしと感じた。

  • 「会社は、あなたを必ず裏切る。その時、あなたは後悔しない人生の選択ができますか」

    銀行頭取のため、夫のため、議員の為、忠誠を誓い生活を送る主人公達。けど、裏切られる。

    自分は忠誠を誓って行動してないけど、改めて、会社なんかに、一生懸命足を踏み入れてもいけないな…。

  • 「ひときわ君を信頼している。うまくやってくれ」―メガバンク頭取の言葉に秘書天野は胸を熱くした。
    かつてのトップが愛人への手切れ金として行った七億円もの不正融資。合併時に子会社へ飛ばした案件が、法律改正を前に再び問題となったのだ。
    頭取の「信頼」に応えるべく、隠蔽に奔走する天野。
    今や大物代議士の秘書となった大学時代の同級生・鬼頭との偶然の再開から闇社会との繋がりを持つことに。
    歯車は回り出し、ついには殺人まで―
    家庭さえ崩壊させながら悪戦苦闘した天野が得た報いと答えとは…?

    これも微妙に古いかな-金融・政治モノは読むタイミングが大事だね。
    天野がどんどん深みに嵌っていくからハラハラしたよ…
    なんというか、上役が保身で逃げ腰、問題は誰かにまる投げな奴らばかりでムカムカしました-
    作中の女性関係にもムカムカしたけど…代議士と秘書が共有してるとか、不倫のあげく自殺未遂とか。
    最後に思い切ったのはスッとしたかな-
    何かの小説で読んだことあるけど“自分の弱みやコンプレックスを公表しておけば敵はそこを狙えないから強みになる”的な?隠し事せずオープンなのがいちばんなんだな、と思いました。
    先送りはいけないね-

  • ○作家、江上剛氏の著作。
    ○主人公のエリート銀行マンを取り巻く「闇」とそれにより転落しつつも信念をもって戦い続ける姿を描いた作品。
    ○フィクションではあるが、限りなくノンフィクションに近い内容。特に、バブル期の金融界では、このようなことが現実にあったのだろうということが推測される。
    ○著者の経験に基づいているということもあり、読み応えのある作品。

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著者プロフィール

1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。77年、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。人事、広報等を経て、築地支店長時代の2002年に『非情銀行』(新潮社)で作家デビュー。03年、49歳で同行を退職し、執筆生活に入る。その後、日本振興銀行の社長就任、破綻処理など波瀾万丈な50代を過ごす。現在は作家、コメンテーターとしても活躍。著書に『失格社員』(新潮文庫)、『ラストチャンス 再生請負人』(講談社文庫)、『我、弁明せず』『成り上がり』『怪物商人』『翼、ふたたび』(以上、PHP文芸文庫)、『50代の壁』(PHP文庫)など多数。

「2023年 『使える!貞観政要』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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