一億円のさようなら (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
3.70
  • (36)
  • (62)
  • (53)
  • (10)
  • (4)
本棚登録 : 622
感想 : 56
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (680ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198945909

作品紹介・あらすじ

直木賞作家、文句なしの最高娯楽小説!

加能鉄平は妻・夏代の驚きの秘密を知る。
いまから30年前、夏代は伯母の巨額の遺産を相続、そしてそれは今日まで手つかずのまま無利息の銀行口座に預けてあるというのだ。
その額、48億円――。
結婚して20年。なぜ妻はひた隠にしていたのか。
日常が静かに狂いだす。もう誰も信じられない。
鉄平はひとつの決断をする。
人生を取り戻すための大きな決断を。
夫婦とは、家族とは、お金とは。
困難な今を生きる大人たちに贈る、極上の物語。

「ぼくはこの作品にまるまる2年間費やした。
もうこれ以上おもしろい物語は書けないかもしれない」(白石一文)
白石作品、過去最高のエンタメ度!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • NHKで現在ドラマが再放送中。先が気になったので、図書館から借りてきて原作を読んだ。ドラマと原作では、スポットが当てられる人物が若干違ったが、小説も一気読みした。
    もし、自分にこんな莫大な遺産が転がりこんてきたら、嬉しくてたまらないけど、同じくらい不安にもなるだろうなぁ。疑心暗鬼にもなるだろうし、命も狙われるだろうし。
    自分の身の丈にあった暮らしが一番しあわせだと実感した。

  • 久しぶりの白石作品
    一億円を手にして、心機一転仕事も家庭も捨てて海苔巻き屋さんを始める。
    やっぱり白石さんの作品は面白いなと思った。物語自体というよりも登場人物の発する言葉や思想が魅力的だった。

  • 面白いんだけど、奥さんの大金を手にした時の決断がなんか現実離れ感半端ない。
    こんな大金困ってる時に使うなり、放置せず寄付するなり世の中に金を循環させてくれよと思う。

    考え方に今一つ共感できず、好きになれない。
    美人という描写にますます、??でした。

    ふっつーのおばちゃんが億万長者の方がリアルですね。

    ですが、ストーリー的には好み。
    まぁ何があるってわけじゃないけど、1人の男の人生を覗き見している気分になった。

    ただ主人公の側面である野生的な大胆さがあまりピンとこない。


    最後はアッサリしていたような。
    半沢直樹的な仕返しを期待していたんだけどな。

  • ミステリーかと思って読み始めたら違いました。約700ページもある大作ですが、最後まで読めました。
    印象に残ったところ。夏代との夫婦関係は、二人の子供を育て上げた時点で役割を果たし切っていた。子育てを終えた夫婦が死別のときまで共に暮らす理由には、もちろん慣れ親しんだ繋がりを失いたくないという願いも強く作用されるだろうが、片方で、経済的な事情や敢えて別れるまでもないという〝面倒くささ 〟も大いに関与していると思われる。
    自分たち夫婦の場合は、夫の側に新天地で始めた順調な事業があり、妻の側には娘や息子との深い絆と莫大な財産がある。
    そうとなれば「子どもたちの独立」という明確な区切りをもって互いが別々の人生へと乗り出していくのは、考えてみるに決して不自然でも不合理でもないのではなかろうか?
    フィナーレが映画の1シーンのようでした。

  • ドリフのコントに『もしも…◯◯な××があったなら…』のコントがあった。これを本書に置き換えれば、『もしも長年連れ添った妻が莫大な隠し資産を持ってたなら…』になる。

    常に現実的な小説を紡ぐ白石一文が描く〈大金が転がり込んでくるユーモア小説〉?…と勘繰るも、ですよね…、んな訳なく、やはりいたって現実的な状況下に起こる起伏激しいスリリングな展開ゆえ、先の予測が見えないままに600ページ超を一気読み。

    ◉さわり…
    主人公 加能鉄平(53歳)は福岡市にある祖父が創業した化学製品メーカーの営業本部長。本部長とはいえ、名ばかりの閑職。同族企業にありがちな親族に疎まれ、役員になり損ね閑職に。最初に務めた会社でも、理不尽なリストラの憂き目に遭い、今やその現状を粛々と受け入れ、サラリーマン人生を歩む毎日。ふたりの子どもは他県に進学し、現在はパート勤めの4歳下の妻とのふたり暮らし。妻との関係も良好。このまま定年まで平穏で平凡な毎日が続くと思われたある日、たまたま在宅していた際、弁護士事務所から1本の電話…。

    30年前、伯母から莫大な遺産を相続し、手付かずでそのまま銀行にあることを知らされる。その遺産の一部は投資にも回され運用益を含め総額は何と48億円!その衝撃の事実に驚愕すると同時に抑え難い怒りが湧き起こる。

    結婚して20年余り、その間には、親の入院費用・子どもふたりの学費・自身のリストラ時の危機…まとまった金が必要だった時は何度もあった。側にいて妻はその苦しい現状を熟知しておきながら、なぜ捻出しようとしなかったのか、そもそも夫である自分になぜ隠し続けたのか…。

    衝撃の電話受けて以来、悶々とする日々。日常が静かに狂い始める。ある日、妻に問いただすと意外なことを口にする。それ以降、妻への強い不信感が募る一方。方や子どもたちも学業そっちのけで勝手気ままに謳歌している…。もう誰も信じられない。鉄平はある決断を下す。

    ◉短評…
    さわりだけで判断すれば、シニア夫婦を取り巻く家庭小説。ただそれなら、これほどの大部な小説にはならない。

    自分ではなく身内ではあるが、〈突然大金が手に入ったら?〉誰しもが一度や二度妄想をしたことが現実となった五十男。はたしてどう生きていくのか?信頼を無くした妻への愛情は?子どもに対する役目は?揺れ動く主人公の心中を著者は炙り出し、折々に呟く吐露は身につまされる。『夫婦は恋人同士とは違うんだ。愛情で関係を支え合うだけじゃなく、信頼で支え合わなくちゃいけない。そうでなきゃ何十年も一緒にいられない。夫婦は愛し合う以上に信じ合う必要があると僕は思う』。

    本書には様々な人物が登場する。それぞれの物語を持ち寄り、それらが複合的に絡み合って発熱し、新しい価値を提供してくれる極めて濃い内容ゆえ、その話だけでも1編の小説が書けるほどの『総合小説』の威容をたたえている。

    家族小説・企業小説・起業小説・シニア小説に加え、博多・金沢の観光&グルメガイドにも使える情報がふんだんに盛り込まれており、細部に至るまでの情景描写と著者のサービス精神にニンマリしてしまった。

    『老後2,000万円問題』がひところ話題になった。老後30年間には年金の他に2,000万円が必要説。そんなことも頭をよぎりつつ読み終えた。

    はたして、タイトルの『1億円のさようなら』とは何を意味しているのか?読み始める前にまずストーリー展開を想像をされてから、読まれるのをオススメします。秋の夜長のノンストップ読書必至の一冊。

  • ドラマ途中で読破
    ドラマは上川隆也さんだったので、原作主人公のような時には狂気する部分はまったくなかった。そのイメージのせいか、いくら裏切られた感があっても、なにも言わずに家族を捨てて家を出たり、娘が出産したことも連絡しなかったり、子供から連絡しなかったり、ちょっと考えられない。ラストも、なんだよ、結局金で屈服させたのかよという気持ちにならなくもなく、不完全燃焼。

  • 久しぶりに読んだ白石一文さんの作品。読み応えありました。白石さんの描く女性たちは、信念を貫く強い人が多い気がします。これからドラマを見ようと思っています。

  • 長年連れ添った妻が、実は巨額の遺産を持っていた。その額は48億円。あなたが夫だったとして、そのことを知ってしまったらどうしますか?そして、1億円あげるからあなたの好きなようにしていいと言われたら、一体どうしますか?

    お金があるということで見えてくる世界。お金があるからこそできること。お金を超えて大切なもの。そんなお金を巡るあれこれを、作者はリアリティーのある設定と描写で上手に描き出していると思いました。

    600ページを越える大作ですが、すんなり読めます。クライマックスでの予想外の展開は、お金は何のために使われるべきかという、物語の主題の一つに対する答えになっていて、とても興味深かったです。

  • いやはや…こんな分厚いのに一日で読み切ってしまった。全力疾走。

    20年連れ立った妻に48億もの遺産があると知った主人公。家族、仕事、お金とは。人生とは。

    「白石作品過去最高のエンタメ度」とあるけれど、まさしくその通りで、ちょっとした連ドラを一気に見終わった感じ。
    最後はいつものように力強い(読者からすると物悲しい)終わりかと思ったけど、いい意味で裏切られた。あの終わり方も「最高娯楽小説」って感じでいい。

    白石氏の作品はとにかく登場人物が多いけど、それが複雑に絡み合ってほどけて、また絡んでいく様が気持ちいい。これだけ人がでてきても読み手がこんがらがらないのはすごいと思う。そして人生は運であり、縁だなあと思う。


    私は白石一文と柚木麻子が狂ったように好きなのだけど、なんでだろうと思った。
    柚木麻子は「苦しいくらい共感できる」のに対し、白石一文作品の登場人物には基本的に共感できない。男性も、女性も。自分とは違う世界の、自分とは違う考え方の人だからその強い言葉や行動がすんなり心に沁みるのかもしれないなと思った。

  • 人生や人間やお金についてぐるぐる回るような長編。
    夏代という女が最初から最後まで訳わからなく気持ち悪くって嫌いだった。

全56件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白石一文の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×