有栖川有栖選 必読! Selection4 真夜中の詩人 (徳間文庫)
- 徳間書店 (2022年4月13日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (578ページ)
- / ISBN・EAN: 9784198947347
作品紹介・あらすじ
身代金0円? 難易度S級の傑作ミステリ登場!
「富豪と庶民」連続誘拐の謎
孤独な魂の慟哭ドラマと意表を突くどんでん返しで、
中毒性抜群の〈笹沢左保サスペンス〉。第4弾は『真
夜中の詩人』――笹沢左保作品の定番ネタの一つ〝
誘拐もの〟。なかでも難易度S級の多重誘拐の傑作
登場! 老舗百貨店のオーナー・三津田家と一介のサ
ラリーマン浜尾家から赤ん坊が誘拐される。「生命の
危険はない」という電話通告のみ残して、犯人は闇
に消えた。「百合の香りがする女」の行方を単独で
追っていた浜尾家の姑がひき逃げされる。この事件
を契機に、夫、恋人、妻、従業員、それぞれの思惑
が交錯し、相互不信のドミノ倒しが始まる……。
〈トクマの特選!〉
イラスト 唐々煙
〈目次〉
Introduction 有栖川有栖
真夜中の詩人
Closing 有栖川有栖
感想・レビュー・書評
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江戸幸デパートのオーナーである三津田家と、サラリーマンである浜尾家から赤ん坊が誘拐された!命の危険はないと言い残して、身代金の要求もなく犯人からの連絡は途絶えた。この連続誘拐の目的とは?!
誘拐犯の仲間と思われる「百合の香りがする女」。真相を単独で追った浜尾家の姑・澄江がひき逃げされ、事件の背後にある闇が深くなる。息子・純一をさらわれた浜尾真紀は犯人の手がかりをつかむために奔走する。同じく息子・和彦が誘拐された三津田家の麻知子。同じ母としての強かさの対比が際立つ。
誘拐ものと言えば、警察と犯人の緻密な駆け引き!身代金はどう受け取るのか!などが一般的な見どころになる。しかし、この作品はあくまで母・真紀が調査を重ねて真相を手繰り寄せるドラマの積み重ねが中心。ページが厚い分だけ、母の愛も厚い。警察がほぼ出てこないのは今読んでも斬新だよね。読むほどに絡まりゆく人間関係。ミステリを読み慣れている人には真相の形自体は早くわかるはず。それでも、その外堀から埋めていくことがどれほど困難を極めるかというのが痛いほど伝わる。
誘拐ミステリ好きなら触れていただきたい作品ながら、やっぱり長いのが玉に瑕(550ページ超え)。それと夫・洋一郎が真紀をまったく手伝わずに冷淡に扱うのがねえ。洋一郎ォ!お前さあってなる(笑) 洋一郎が話を聞いてサポートしてあげてたらもっと早く解決できてたのでは?おい!聞いてるか!とツッコミを入れたくなる(あくまで母の強さを魅せたかったのは理解できる)。ラストはもっと痛快かつドラマチックに仕上げてくれたらスッキリしたかなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦後の高度成長期、国内屈指の百貨店社長の孫とある一般家庭の乳児が誘拐されるが、どちらも身代金要求は無いという。
誘拐ものなのに、身代金の話や警察の出番がほぼなく、母親である主人公が独自調査で真相に辿り着くという異色作。
淡白な文章で語られ全体的に緊張感は緩いものの、最後はスルッと収まりました。
発表の時代(1972,昭和47)は置いといて、好みは分かれるかな、と。 -
中盤まで、誘拐ものって読むといったい何が起こってるのかと推理の行く先がふらふらしていてどうなってるの?どうなるのの不安があったけど、ある事実から全てとこの誘拐の意味と気持ち悪い動機が…