有栖川有栖選 必読! Selection10 アリバイの唄 夜明日出夫の事件簿 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198948474

作品紹介・あらすじ

オレのタクシーは、走る探偵事務所。

鉄壁のアリバイに護られた〈最高のレディ〉はシロ
か? それともクロか? 生前被害者を乘せたのが
縁で、初恋の人に再会したタクシードライバー・夜
明日出夫。三百キロ離れた遠隔地での不可解な殺人
事件の容疑者とされた彼女を救うべく、元警視庁捜
査一課の刑事であった彼は調査に乗り出す。名探偵
キャラを封じ手にしてきた著者が、作家生活三十
年目満を持して放ったヒットシリーズ第一作!(解
説 有栖川有栖)

トクマの特選!
カバー・口絵イラスト nowri

〈目次〉
Introduction 有栖川有栖
アリバイの唄 夜明日出夫の事件簿
Closing 有栖川有栖

感想・レビュー・書評

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  • 生前の被害者を乗せたのが縁で、初恋の人に再会したタクシードライバー・夜明日出夫(よあけひでお)。300km離れた場所で起きた殺人事件の容疑者にされた彼女を救うべく、元刑事の彼は調査に乗り出す!

    テレ朝「土曜ワイド劇場」でドラマ化された人気シリーズ『タクシードライバーの推理日誌』の原作がこちら!なんと1992~2016年39本も制作されたとのこと。これは観てみたい!タクシードライバーが元敏腕刑事で、警察に顔が利く上に、アリバイ調査にタクシーを使うという設定が旨味あり過ぎ!

    初恋の人・大町千紗と再会できた日出夫。それなのに、千紗の身にかかる殺人容疑!刑事時代の親友・丸目平八郎は彼女を疑っている。千紗の無実を信じながら走るタクシーの目的地には驚かされた。インパクト絶大なトリックの裏に隠された人間の哀愁。何に価値があるかは自分で決めるものだ。笹沢作品ならではの味わいがあって、紙一重でリアリティを保たせている感は否めない。その解釈は勘で辿り着けるのか?とか、緻密なのか雑なのかよくわからない犯行と解決とか、動機についても何もそこまで…など、ツッコミどころが多めなのが玉に瑕か。

    日出夫のキャラは軽妙で思わずニヤッとしてしまうセリフ回しやモノローグが多い。

    「口争いの再開である。こうしたときには、興奮した客というものは運転手の存在を忘れる。少なくとも、運転手の耳を恐れない。だからこそ、おもしろい。退屈を紛らわせてくれるので、夜明日出夫は常に客同士の喧嘩を歓迎することにしている。」

    「さあね。大脳皮質がある高等動物は、眠るようにできているんでね。おれも残念ながら、人間っていう高等動物らしい」

    タクシーと一緒に物語を走らせるにはうってつけの名探偵キャラが登場!という力強さを感じさせてくれる。

  • ● 感想
     テレビドラマ「タクシードライバーの推理日記」の原作であり、シリーズ探偵である夜明日出夫が登場した作品
     夜明の幼馴染である令嬢、大町千紗が、高月静香という女性の殺人の容疑者として疑われる。夜明は、元刑事として、現役の刑事で古くからの友人である丸目平八郎と協力して捜査を行う。
     ポイントはアリバイ崩し。大町にはアリバイがあったが、そのアリバイのポイントは、逗子の別荘で、午前4時にいたことが、電話により証明されているというもの。いったんは、このアリバイが崩せないと考え、大町は容疑からはずれるが、続いて高月の愛人である夏木潤平という県議会議員が死亡する。自殺か、事故か、あるいは他殺か。夏木は最後に、「カビン、タトウ、インサイ、ザサイ」と2度繰り返し、最後に、「オウチサ」と付け足した。
     さらに、千紗が、「赤いリンゴ」、「バイカルの果てしなき道を」、「みかんの花が咲いている」、「ペンギンさんがお散歩していら空からステッキ落ちてきて」という鼻歌を繰り返し歌っている…ということを聞き、夜明は、千紗を疑う。
     このあたりはバカミスっぽい要素もあるが、千紗が歌っていたのは、「アリバイハカンペキ」ということ。これがタイトルの「アリバイの唄」であり、これが、夜明が千紗を疑うきっかけとなる。
     「カビン、タトウ、インサイ、ザサイ」は、英語で、千紗の内腿には入れ墨があるという意味。千紗はフランス留学をしていた際、当時愛したフランス人の船乗りの名前のタトゥーを入れていた。この秘密を隠すために、殺人をする。
     そしてアリバイトリックは、逗子にある別荘と同じ外観、内装の別荘を蒲郡市にも作っていたというもの。これにより、従妹の小日向律子を眠らせ、逗子の別荘にいたと誤診させたというもの。大がかりであまり、確実性のないアリバイトリックでリアリティはないが、バカミスチックで面白いトリックではある。
     動機が前時代的で、トリックは大がかり。そういった意味では、一時代、二時代前の本格ミステリっぽい感じだが、そういったもののしてみればそれなりに面白い。
     有栖川有栖の解説によると、「読みどころであるアリバイトリックは、笹沢自身の膨大な旧作の中には、原理が似た例がなくはないが、別物のトリックに仕上がっているし、こちらのスケールが格段に大きい。」とある。バカミス的だが、インパクトはある。
     タイトルにもなっている唄は、謎を解明するためのフェアな手掛かりとはいいがたいとしながら、作者の稚気が感じられるとしている。まぁ、笹沢も、このトリックと併せて、リアリティより面白さ、意外性を追求した作品としてこういった稚気を出したのだとも思う。
     意外性こそあまりないが、話運びのうまさはさすが、笹沢佐保。トータルで見ると、ギリギリ★3という感じか。
    ● サプライズ ★☆☆☆☆
     結局のところ、一番疑わしい大町千紗が犯人。一番怪しい人物にアリバイがある→アリバイ崩しという構成。意外性はあまりない。
    ● 熱中度   ★★★☆☆
     それほど長くないし、読みやすい文体。どんなアリバイを作っているかという興味はあるが、サスペンス感はない。読む手は止まらないというより、さらっと読める印象
    ● 納得度 ★☆☆☆☆
     動機が1時代前で、今からだと、どうしてこれで殺人をと感じる。そこは、当時ならとして納得しても、こんなことしないだろうと思う。これだけの時間と費用をかけるのであれば、もっとましなトリックがあるだろうに。タイトルになっているアリバイの唄もバカミス的。納得度は低い。
    ● 読後感 ★★☆☆☆
     最後は、大町千紗が自殺することを示唆して終わる。笹沢はさすがに小説がうまいので、これだけのバカミストリックでもそれなりに読ませるし、読後感の悪さも出ている。
    ● インパクト ★★★★★
     人気テレビドラマ、タクシードライバーの推理日記の原作で1作目というのもインパクトがあるし、アリバイの唄のばかばかしさも、家を丸々もう一軒建てるというトリックの大胆さもバカミス的でインパクトがある。インパクトは抜群といえる。
    ● 偏愛度 ★★☆☆☆
     徳間の特選シリーズは好き。笹沢作品は安定感もある。徳間の特選のシリーズの中で、有栖川有栖がセレクションしており、このシリーズの売り上げが一番にいいのかとも思う。コンスタントに出ている。買ってはいるが、徳間の特選シリーズの中ではそこまで好きなシリーズではない。単体で見ると、そこまで好きではない。

  • あの2時間サスペンス「タクシードライバーの推理日誌」に原作があったとは!というかこれが原作だったとは!ということも知らず購入。
    有栖川先生が解説で書いている通り「こんな理由で殺人を?」とは思ったけれど、それも時代(90年代)だからなんだろうな。
    同じく気になったのは、千紗が殺人犯かもしれないということを伝えられた律子の態度の豹変ぶり。あんなに仲が良かったのに、殺人犯かもしれないと思ったら、呼び方まで変わっちゃうの?切り替え早くない?自分がアリバイ作りに利用されたんだから、それは不快だろうけど…。人間怖い。

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著者プロフィール

1930年生まれ。1960年、初長篇『招かれざる客』が第5回江戸川乱歩賞候補次席となり、本格的な小説家デビュー。 1961年『人喰い』で第14回日本探偵作家クラブ賞を受賞。 テレビドラマ化されて大ヒットした『木枯し紋次郎』シリーズの原作者として知られ、推理小説、サスペンス小説、恋愛論などのエッセイ他、歴史書等も著し、380冊近くもの著書がある。2002年、逝去。

「2023年 『有栖川有栖選 必読! Selection11 シェイクスピアの誘拐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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