弱いロボット (シリーズ ケアをひらく)

著者 :
  • 医学書院
3.84
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本棚登録 : 529
感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784260016735

作品紹介・あらすじ

ひとりでできないもん-。他力本願なロボットがひらく、弱いという希望、できないという可能性。「賭けと受け」という視点から、ケアする人される人を深いところで支える異色作。

感想・レビュー・書評

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  • 映画の世界にいるような何でもできるロボットではないけれど、それが強み。「当たり前」からの発想の転換、いつもの自分とは違う視野の変化、ついつい手を差し伸べたくなるような愛嬌あるロボット達から教えられたことがたくさん。

    簡単に読めるけど、内容は深い。介護やロボット関係に興味がある人だけでなく、子育てや教育現場など、いろんなコミュニケーション場面で新しい考え方を知りたい人に是非おすすめしたい本です。

    • sakana37さん
      映画の世界にいるような何でもできるロボットではないけれど、それが強み。「当たり前」からの発想の転換、いつもの自分とは違う視野の変化、ついつい...
      映画の世界にいるような何でもできるロボットではないけれど、それが強み。「当たり前」からの発想の転換、いつもの自分とは違う視野の変化、ついつい手を差し伸べたくなるような愛嬌あるロボット達から教えられたことがたくさん。

      簡単に読めるけど、内容は深い。介護やロボット関係に興味がある人だけでなく、子育てや教育現場など、いろんなコミュニケーション場面で新しい考え方を知りたい人に是非おすすめしたい本です。

      2012/09/20
  • ロボットと聞くと何でも助けてくれるドラえもんや、とっても強くて見た目も人間と変わらないアトム、もしくは今現代のハイテクなロボットを思い浮かべるかもしれない。

    しかしながらこの本で出てくるロボットは

    よわい

    外見も一つ目小僧のようなロボット「む~」

    ひょこひょこ歩いてゴミを見つけては人にすり寄る「ゴミ箱ロボット」

    はなんとも外見も中身も不完結で弱そうに見える。「できないならやってもらばいい」そんな他力本願なロボットたち。

    しかしそんな弱いロボットが人は愛くるしく思え、まるで子供をあつかうかのように、彼?(彼女なの?)らとお話をしたり、ゴミを捨ててコミュニケーションをとるのである。

    ロボットの低い目線を通して、コミュニケーションとは何か?弱さとは何か?が書かれている。

    行為の意味は相手に受け取られるまで「不定」になってしまう、しかしながら相手が応答groudingしてくれることにより意味を持つ。

    ロボット=物理的に何かをしてくれるのではなく、ロボットを介して人が成長していく=彼らの弱さが人の発達を助けている。ロボットと人間が対立したり上下関係を築くのではなく双方向の学びを築く。

    周囲に身を委ねながら1つの行為を作りあげていく、そんな弱いロボットをわたしたちに置き換えて考えてもいいのではないだろうか。

  • 出版されてから10年も経っている本をもう一度手に取って読んでみた。
    ロボットに求めるものは何かをもう一度考えるきっかけになった。不完全であるが故の良さという捉え方もあり?

  • ロボットというのは人間がやると一生かかるような計算でも一瞬で答えが分かるような反応を求められているはずが、この本に出てくるロボットは確かに「弱い」。
    ただ、「弱い」=「悪い」というわけではなく、弱いからこその価値、弱いロボットだからこそできることというのがあるという、特に理系や、パソコンを使い慣れている人ほど考えたこともないロボットの使い方というのがこの本には溢れている。

    人の話した言葉に、反響的な模倣を返す(こんにちは〜という問いかけに、むむむむむ〜と返す)『む〜』というロボットが、子供やお年寄りに取ってとてもチャーミングに映るという例を見ると、ロボットは単に人間にできないことをする、というだけではないことに気づく。
    もちろんロボットだから計算されてはいるのだが、計算されていないような反応を人は求める。

    ただ、本の構成としてはなんか起承転結というわけでも、時系列に並んでいるわけでもなさそうで、最初の方に出たロボットの説明があとの方でされたり、一度話したことに似た内容があとでも出たり、割とランダムに出てくる感じがある。一応章立てになっているが、徐々に内容がわかってくるわけでもない。なんか不思議な構成。かと言って不満があるわけではなく、どこから読んでも楽しめる、小説の短編集みたいな感じを受けた。

    こういった、「弱い」ロボットとのやり取り、言い方はアレかもだが、人間同士の原始的なやり取りに近いものを見ることで、逆に人間同士のやり取りが実は如何に高度なものか、実はどれほど難しいことを無意識にやっているか、どれだけの要素が内包されているかなどを考える良いきっかけになる。そして、自分のそういったやり方が実は正しくはないのかもしれないと気づくかもしれない。

    この本が啓蒙の用途で書かれていないのは分かるが、なんか人の振り見て我が振り直せ的な、弱いロボットを知って人間を知る、という感じがした。

  • ロボットといえば、人間の代わりに何の作業をしてくれるものなのか、どのように便利なのかと性能や機能、または、どれだけ人間らしいか、を見るものだと思っていた。そして、医学書院のシリーズ「ケアをひらく」でロボットといえば、介護の代わりのロボットなのか、話し相手、遊び相手の代わりになるロボットの話なのか、などなど想像してしまったけれど、これは違う。目から鱗の連続だった。まず、人間が「何気なく」している会話は、まずロボットにはできない。その「何気ない」に焦点を当てることから始まるこの本書。ロボットは言い淀みをエラーとして処理してしまうが、人は言い淀むことを前提に話し始めるのだ。会話はお互い相手の不足分を支えたり、不足分を委ねられたりして進行する。相手が返してくれると思って言葉を発し、返してくれなければ不安になるし、返さなくてはならない責任も感じるものである。そして、ただ歩くという行為でさえ、地面に委ね、地面に支えてもらっているという不安定さがあると、本書にはある。また、「支えてあげるもの」「守るもの」があって、人は成長することがある。ただ色を指摘するだけのロボット、ゴミを集めたいのにゴミを拾えないロボット、それらに対して、今まで弱者でしかなかった人が、教える側にまわって、少し変わっていくし、そんなロボットが人と人のコミュニケーションの触媒となっていく。人は1人では生きてはいけない。改めてそれを、ロボットという無機物を通して再確認する1冊だった。

  • 「毎日新聞」(2012年9月30日付朝刊)の「今週の本棚」で
    紹介されていました。
    (2012年10月1日)

  • 【何も出来ない、けど一緒にいる。そこから始まるコミュニケーションを俯瞰してみられる本】

    誰かが一緒にいてほしい。でも、自分の行動で相手が離れたら嫌だ。
    そんなおもいを、ロボットが穏やかに埋めてくれるかもしれない。
    そんな思いが感じられた本でした。

    人と一緒にいるときに無意識のうちにしていることは何か、子供が自分以外の未知の存在に対してどう関っていくのかを、ロボットを通じて語った本です。

    私のお気に入りは「む〜」ちゃんと子供たちとのやりとりです。む〜は何か動くわけでもないけれど、目のようなカメラで子供達を見つめながら、リアクションをします。
    それを見て、子供たちが

    「この子はどこから来たの?」
    「お腹空いてるのかな」
    「眠いのかもしれないね」

    と、まるで年下の子供の面倒を見るような姿をしたというのです。

    それがとても愛おしくて、
    何も出来ない、けどそこにいるだけでも価値を産めること。

    そして、子供の中にある大人が周りの人へどう接しているかを良く見ているのを感じるやりとり。

    穏やかに人間がロボットと関わる中でどんな不思議なやりとりが生まれるのか、気になる人におすすめの本です。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB10094985

  • [ひとりでできないもん-。他力本願なロボットがひらく、弱いという希望、できないという可能性。「賭けと受け」という視点から、ケアする人される人を深いところで支える異色作。]

  • 身体とコミュニケーションについてとても深く考察された素晴らしい本。
    「私たちは地面を歩いていると同時に地面が私たちを歩かせている」というのはとてもハッとさせられました。
    読んで損はない一冊だと思います。

  • 流し読みだったが、自分の専門外の分野を学ぶのってやっぱり新鮮だった。

    ロボットやAIの技術には無頓着だけど、言語学をやっていた身としては、なにげない談話っぽいやりとりを再現するには?という考えがとても面白い。
    AIやロボットを作る意味って、人間に利便性を与えるだけではなく、改めて人間の活動やコミュニケーション、人間がその対象をどう受け取るのかという認知的な研究にも繋がるように思った。

    そしてこの本の主人公である弱いロボットたち…。
    弱さが人とロボットを結びつけるなんて!
    ものすごく感心してしまった。

    すごいロボットではなく、ポンコツな部分も持つロボットたちは、開発者よりも一般人たちに受けが良いよう。
    それも子供やお年寄りたちに大人気…。

    猫や犬がいると、家族の会話が弾んだりするけれど、弱いロボットたちも、誰かと誰かを結びつけることがある。

    助けられてばかりでは人間性ってなくなるのかも。
    助けることを教えてくれるロボットたちが、これからの未来でどう私たちの暮らしに寄り添ってくれるのか、非常に楽しみになる。

  • 積極的に人をアシストするのではなく、人のアシストを引き出しながら課題を解決する「弱いロボット」の概念、その発想の誕生からその後の研究・考察の歴史。人に迫る高機能なロボットを開発する方向ではなく、(リソースの制約にもよるが)人との関係性を考察し、人間社会の一員として加わるためのロボットを目指す、そのためには人間の社会性・関係性に対する考察が欠かせない。ロボットの研究史なのに、人間の幸せを論じる哲学の書でもあって興味深い一冊。

  • 人は、他者(対物)を通して自分の存在を知覚する。自分自身の顔は見えないのに。


    ーーー本とは関係ないことーーー
    「人は他人に生かされている」の考え方の違和感。これって何か上から目線。自分も他人を生かしている存在なんだって考え方が抜けてるから。自己内部の感覚からきてる。

  • ☆令和2年度先生が選んだイチ押し本☆

    請求記号 007.1/Ok
    所蔵館 2号館図書館

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99420932

  • 弱みがあるほうがロボットは人間社会にとけこめるのかもしれない。

  • ロボットと人間のかかわり合いをゆっくりと考える、優しい眼差しで。
    ロボットの研究者というよりクリエーターのよう。

  • 大阪人のボケとツッコミが盛り沢山の会話を聞いて、雑談の奥深さを感じ取り、ロボットとの会話アプローチに活用する筆者.言い直すことを前提として発話を作り上げていることに気づいた筆者.「む~」を開発して、一人では何もできないが、アシストがあれば独特の機能を発揮する「弱いロボット」を目指す筆者.このようなロボットが認知症の患者と対話して、面白い成果を出すことに驚く筆者.視点の向くところが素晴らしいと感じた.

  • 機能がすごく限られたロボットの開発を通して、人間のコミュニケーションを考える。

  • 目玉のような『Muu』は、こちらの声掛けに対しヨタヨタと動き、「む~、む、む、む」とあどけない視線で答える。それがちょっと考えているようにも、はにかんでいるようにも見える。
    ゴミ箱型の『ゴミ箱ロボット』は、ゴミ箱に駆動力がついているだけ。ゴミを発見すると近寄っていくけれど自分で拾うことはできない。誰かが拾って捨ててくれると、ほんのちょと会釈のような仕草をする。
    何もできない赤ちゃんが、「うぐ~」と発する声や、何かを掴もうと伸ばす手が場をなごませるように、こちらが何か動かざるを得ないような気持にさせる。

    二足歩行で歩く「アシモ」や、福島の原発事故の現場へ入っていく自己完結型のロボットが開発されている中、この本に出てくるロボットは一人では何もできないロボットだ。
    他者とのコミュニケーションを大前提としているこんなロボットは、人と人とのつながりが希薄になってきたこのご時世に、ほっこり気持ちを和ませる。

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著者プロフィール

豊橋技術科学大学情報・知能工学系教授

「2022年 『知の生態学の冒険 J・J・ギブソンの継承1 ロボット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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