みんな水の中-「発達障害」自助グループの文学研究者はどんな世界に棲んでいるか (シリーズ ケアをひらく)
- 医学書院 (2021年4月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784260046992
作品紹介・あらすじ
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)を診断された大学教員は、彼をとりまく世界の不思議を語りはじめた。何もかもがゆらめき、ぼんやりとした水の中で《地獄行きのタイムマシン》に乗せられる。その一方で発達障害の先人たちの研究を渉猟し、仲間と語り合い、翻訳に没頭する。「そこまで書かなくても」と心配になる赤裸々な告白と、ちょっと乗り切れないユーモアの日々を活写した、かつてない当事者研究。
感想・レビュー・書評
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「脳の多様性」という考え方について知りたくて手に取った。ASDとADHDの診断を受けた文学研究者である著者が描き出す体験世界の解像度に目をひらかれる。
発達障害と呼ばれるものは障害ではなくあくまで脳の特性であり、この社会は多数派である定型発達者に合わせてもろもろ設計されているがゆえに、それに合わない特性を持つ者にとっては、できないことが増えてしまっている、それが現状なのだ。この考え方がもっと広まって、どんな特性の人でも暮らしやすい社会になっていくことを願う。
また、著者の言うように「私もあなたも、脳の多様性を生きている」という視点をもち、他者の思考のクセみたいなものを理解し受け入れれば、人間関係のモヤモヤも減らせるかもしれないとも思った。いくら特性だと受け入れても、たびたび傷つけられる言動をされたとしたら、どこまで耐えられるか、耐えるべきなのかはわからないけども。
あと、あとがきで著者が診断を受けたのが2019年と知ってビックリした。わずか2年足らずで自助グループ主催といった行動を起こし、当事者としての思索をここまで深められるなんて。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今読みはじめた、一章の詩がヤバすぎる
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『みんな水の中』
多数派のためにデザインされた環境のお陰で僕は生きにくさをあまり感じずに能力を発揮できるのだなと痛感する。
「脳の多様性」を考えることで、健常者VS障害者のような二項対立ではない、環境との摩擦に苦しむ多くの人が楽に呼吸することができるようになる社会へ!
#読了 #君羅文庫 -
ASDかつADHDの文学研究者である著者が、先人の自身の体験世界を詩(のようなもの)、論文(的なもの)、小説(風のもの)という形式で伝える。
発達障害者の方が感じてる世界はどんなものかという一端をつかむことができた。著者の透徹した自身への観察眼とさらけ出し具合には感服した。文学や芸術によるケア、セラピー、リカバリーの可能性も感じた。 -
この本を読むと「発達障害」とか「発達障害者」という単語は簡単に使えなくなる。代わりになんと言えばいいのだろう。
その当事者である文学研究者が、自分の世界の見え方を教えてくれる。なかなか言語化できない、普通だったらできないようなことができる人を得た、いい人を得たな(誰が?何が?)と思った。
I部など、最初読んだ時、見た時「え⁉︎」となってしまった。II部では当事者でない者にもわかりやすい言葉で説明されている。Ⅲ部では、II部で書かれたことが具体的に小説の形になっていて、本当の意味での理解はできないにせよ、そういう感じなのかとだいぶなじんだ感じがした。
以下は、本書の主旨と離れるかもしれないが、私自身がこの本を読んで心に残ったところ。
恨みの物語から解放されるように心がけること。誰かを、あるいは何かを恨んでいると、その物語の回路に呪縛されたままになってしまうから。
自身を別の新しい物語に送りだす。
新しい物語を生きはじめる。
(197ページに書かれていることを自分の都合に合わせて抜き出す)
"心が傷ついている人が創作物に触れると、そこから元気や勇気を受けとることができる。その時起こっていることは、小規模でも確実な治癒や療養なのだ。" 201ページ
"私は文学と芸術によって多重スティグマを「あやす」ことができ、それを低減させた。特に外国語や古語を現代の日本語に置きかえる翻訳作業は、私を自由の時空へと導き、多重スティグマを溶解させた。読者諸兄姉も、ぜひとも試していただきたい。簡単な英語でも日本語の古文でも構わないから、あなたが訳してみたいと思ったものを、日本語のあなたが好きな文体へと鋳造しなおしてみてください。" 203ページ -
2階書架 : WM203.5/YOK : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410168702
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当事者どからこそ書けること。
当事者ならではの研究。
言語化が素晴らしい -
思っていたのと違ったが、例えるならTwitterでもブログでもない、SNSへの投稿を散漫と眺めているような良さがあった(伝わるか不明な説明)
パッと読んで、ふむと思う、また引用される作品の多岐さも面白い。良書 -
493.76(闘病記)