飛ぶための百歩

  • 岩崎書店
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本棚登録 : 311
感想 : 44
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265860296

感想・レビュー・書評

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  • 2020年度(第66回)課題図書の高学年向け。
    課題図書の中からどれを買おうかなと内容を見ていて、清涼感の予感漂うこれを買おうと本屋へ。

    ルーチョは14歳の少年。
    5歳の時に病気で目が見えなくなったけれど、人には頼りたくなくて、なんでも自分でやる。
    毎年ベアおばさんと山歩きをしていて、今年はついにアルプスの山小屋〈百歩〉にやってきた。
    そこで、山小屋の主人の孫のキアーラと、山岳ガイドのティツィアーノと出会い、みんなでワシのひなを見に行くことにした。
    2018年ストレーガ・チルドレン賞受賞。

    本の佇まいが素敵です。
    イラストがインテリアみたいでとってもおしゃれで、カバーを外した本体にもイラストが印刷されています。
    背とはなぎれが茶色で見返しが深緑の山の色で、角背でクール。
    本文にはイラストが二ヶ所ですが、表紙と裏表紙のイラストが想像を助けてくれます。

    さて内容はというと、大人も子どもも、みんなが成長しているという点で、印象的でした。
    目が見えずとも人に頼りたくないルーチョと、学内と学外の自分の違いに悩むキアーラ、二人を中心にして話が進みます。
    二人とも等身大の自分を認めるのが難しい年頃で、先に進むことができずにいました。
    そこに、非日常の非常事態の12章で、お互いが、せいいっばいの言葉でぶつかることができたのが良かったです。
    いろいろな思いすべてを言葉にはできません。
    すべてを言葉にしようとした時点で、それは本音を飛び越えてしまい、自分も他人も傷つけてしまいます。
    ルーチョもキアーラも、知り合ったばかりで、この一夏の経験のなかだからこそ、本音の一歩手前、せいいっぱいの言葉を伝え合うことで、いい変化がうまれたのだろうと思いました。
    アルプスで〈百歩〉進み、飛ぶことができるようになった。
    人間界パート(山小屋と泥棒)とワシパートが交互に出てきて、重なりあっていきます。
    どこがどうとは私の語彙力では説明できませんが、深いところでワシのひなゼフィーロとルーチョが繋がっていることを感じます。
    どこか新しい場所で新しい人と出会うことで、世界が広がるということを教えてくれます。
    文章も清潔感があって変に口語体ではなく、安心して読めました。

  • 2020年読書感想文コンクール高学年の部、課題図書、海外枠。
    今年はこれが当たりな気がする。
    子どもたちが刺激し合い成長していく話はいい!

  • 課題図書 高学年

    原題:cento passi per volare
    by giuseppe festa

    ルーチョは目が不自由な中学を卒業したばかりの少年
    ベアはおば

    二人は山登りを楽しむ

    目の不自由なルーチョは鳥の声を聞き分けるのが好きなので、山にいるのが好きなのだ

    山小屋「百歩」を目指す二人
    ルーチョは助けられることをかたくなに拒否する
    山小屋の主人はエットレ
    そこで手伝いをするキアラーは姪っ子でルーチョと同じ年

    同時並行で描かれるグラッコ、ペッチョは野鳥を密漁する二人組

    ティッツィアーノは山岳ガイド
    彼はワシの巣を見に行くことを提案
    ルーチョ、ベア、キアラーで向かう

    ワシは、ミストラル(北西風の意味)とレヴァンテ(東風の意味)
    ひなはゼフィーロ

    後半、ちょっとした冒険小説、動物小説、空想と場面転換がくるくる変わる

    メニュー:ポレンタ、モルタデッラ、パニーノ(ハムとプローヴォラときのこ、サラミとチーズ)豆のスープ

    ハリーポッター、

  • 凝り固まってしまったこだわりからの開放と、そこにたどり着くまでの道

  •  中学を卒業したばかの14歳のルーチョは、目が見えない。おばさんのベアとアルプス山脈の一部のドロミテ渓谷にやって来た。二人は登って、エットレが主人の山小屋「百歩」に着いた。そこで二人は山岳ガイドのティツィアーノと、ルーチョと同じ年のエットレの孫娘のキアーラと出会う。ルーチョとベアは、翌日のティツィアーノとエットレの悪魔の頂を見に行く山歩きに、同行することになる。
     ワシの親子、ルーチョたち、怪しげな二人組ペッチョとグラッコと、しばらく並行しながら話は進んでいく。
     ルーチョとキアーラの二人が、困難に直面して決断の必要になった終盤の本音で話場面が良い。私は、ヨシタケシンスケの伊藤亜紗の『みえるとかみえないとか』が読みたくなった。

  •  小さい頃に失明したルーチョは、人に頼るのが嫌で、何でもがんばって自分でやりとげてきた。
     そんなルーチョを心配してくれるおばさんとの旅で、アルプスのドロミテ渓谷を訪れたルーチョ。山小屋の主人の孫のキアーラと出会い、これまでの考え方を少し変える出来事に遭遇する。

  • 中学生の課題図書だが文章も内容も高学年も読める。
    盲目の少年ルーチョ、山登りに同行するのは叔母のベア。ベアは一人立ちしたい年頃の頑固さをもつルーチェを心配している。高校入学で新しい環境を迎える時に素直に誰かに頼ることができないのは彼にとって不利だと考えているからだ。
    ルーチョが山小屋で出会った同い年のキアーラは内弁慶な性格を気にしていた。

    山緑の空気を感じられる爽やかな作品。
    なりゆきであったとしても誰かとの出会いや少しの支えでそれまでの考えが変わることがある。
    読書もその一つかも。
    ワシの生態も少し知れたし。

    • masmeさん
      ルーチェ→ルーチョ
      ルーチェ→ルーチョ
      2021/07/04
  • 5歳のとき、ルーチョは日を追うごとに目の前がかすんでいき、輪郭や色が分からなくなり、とうとう暗闇に包まれてしまう。
    それでも、5年間に目にした物や人のイメージを記憶する能力に優れていたため、ルーチョは視力を失う前と同じように、どんなこともこなす方法を見つけていった。
    ルーチョが8歳の時、初めておばのベアとパリへ二人旅をしたことがきっかけに、一年に一度はベアと共に旅を楽しみ、それは山歩きに発展していった。
    山を歩くと、ルーチョは今までとは異なる方法で視覚以外の感覚が刺激される。ルーチョと自然の間には隠し事がなく、あるのは喜びだけだった。たとえ足に水ぶくれができても、目的地に早く着きたくて仕方がないというように、気力がみなぎる。
    ベアは一方でルーチョが頑固に人の助けを拒む様子を見て、心配していた。何でもこなす自慢の甥っ子ではあるが、「素直」になれず、意地をはるルーチョ。
    「自分の限界がわかっていないと、より高い壁にぶつかることになるかもしれない」
    ベアが心配する中、ルーチョは同い年の少女キアーラと山岳ガイドのティツィアーノ、ベアの四人で、ワシの雛がいるという〈悪魔の頂〉に登ることになる。

    目が見えないルーチョが、人を頼らず一人で出来る方法を身につけてきた過程を想像すると、強いなぁと思う反面、その強さを逆に心配しているベアの気持ちもとても分かると思った。

    後半、目が見える人ですら命の危険を感じ、引き返したくなる場面がある。そう伝え、「手を貸して」というキアーラに対し、頑なに一人で行ける主張するルーチョ。そこで、キアーラがルーチョに怒りをぶつけ、自分の中の胸の苦しみを初めて吐き出す。
    「ルーチョの『できないこと』には理由がある。何ができないかを自覚して、それを乗り越えるために、ちゃんと努力してる。でも、私は、どうしてできないか理由さえわからない」と。

    「自分自身を表に出せば世界が広がる」本当にそう。でも、この年頃の子にとって、なかなか難しい。

    ルーチョにとって、頼れる相棒ができてよかったなぁ。




  • 深く難しい話になるかと思いきや、シンプルなストーリーでほっこり。童話のようだけど、大人の視点、子どもの視点でそれぞれ読めて面白かった。

  • イタリアの物語。
    ルーチョは5歳から少しずつ目が見えなくなった。でも、運動も音楽も、おしゃべりも、本を読む事も、登山も大好きな14歳の男の子だ。なんでも一人でやりたいし、出来る事をみんなに知ってもらいたいのだけれど、今は全く目が見えてないルーチョをみんなは手助けしようとする。ルーチョは頑なに、一人でやろうとする。目が見えてない代わりに、耳は良く聞こえるし、嗅覚だって優れている。
    ルーチョはおばのベアと一緒に登山するのが好きだけど、本当は手出し無用で登りたい。

    ベアおばさんと百歩という山小屋に泊まり、悪魔の頂を通り、素晴らしい景色とワシの親子(出来たらヒナの巣立ち)を見に行く事になった。
    山小屋で出会った、同じ歳の内気な少女キアーラと、ガイドのティツィアーノと共に4人で悪魔の頂を歩くが、ワシのヒナを密猟する輩がいて…

    ルーチョの活躍で、密猟者からヒナを助けることが出来、内気なキアーラとも意気投合、
    それぞれ自分の殻を破り、成長していく。

    ルーチョの得意な鳥の鳴き真似や、
    百歩の意味、いろんな伏線が張られているのが回収されていくのも、読んでいて気持ちいい。

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