- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784270005828
作品紹介・あらすじ
妻と四人の娘を残し従軍牧師として北軍に加わったマーチは、激戦の合間に立ち寄ったヴァージニア州のとある農園を見て、以前ここに来たことがあるのに気づいた。20年前の春、若き行商人として訪れて長逗留したことがあり、それは美しく気高い奴隷女性グレイスとの出会いの時であり、また奴隷制度の残酷さを目の当たりにした日々でもあった。その後の歳月-マーミーとの結婚、哲人ソローやエマソンとの交流、逃亡奴隷の支援活動への加担、次々と生まれる娘たち…懐かしい思い出がマーチの脳裏をよぎる。だが、そうした思いをよそに、国を二分する戦争は彼の理想や信念を打ち砕き、運命を大きく変えていくことになる!世界中で愛された家庭小説の古典を下敷きに、豊かな想像力と巧みなストーリーテリングでアメリカの動乱の時代を生きる人々を描きあげた歴史フィクションの比類ない傑作。ピューリッツァー賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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これを読んでまた「若草物語」を読めば、また違った印象を持つはず。ものすごく深く、面白かった。
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子供の頃から繰り返し読んできた「若草物語」のスピンオフ、南北戦争に従軍牧師として参加した父親の側の物語。
実際に作者の父を元に創作されただけあって、マーチ氏の人物像がとてもリアルに感じられて興味深いし、南北戦争当時の様子が詳述されているのも(辛く、悲惨ではあるが)この本の価値ある部分と感じた。
所々に4人姉妹を始めとする原作の登場人物が出てくるのも嬉しく、原作との統合性を高めるのにも一役買っている。
それにしても、ラストシーンの彼は(詳しくはないのだけど)PTSDではないかしら… -
若草物語のもう一つの面。
ほとんど不在だったマーチ家のお父さんは、どうしていたのか?という。
史実に基づくドキュメンタリー的な要素もある小説です。
ピューリッツァ賞受賞作。
ルイザ・メイ・オルコットの父はブロンソン・オルコットといって高名な哲学者でした。
ミスター・マーチとして登場するのも、理想主義的で夢想家。
南北戦争に従軍牧師として参加し、大変な経験を共にしながらも、
時に兵士を叱りつけ、色々な信仰の持ち方の人がいる前で、理想のままの説教をして、軍の中で浮き上がってしまう。
この時期の手記や手紙を交えながら描かれています。
若草物語の4姉妹は父の無事を祈り、帰りを待ちわびていましたね。
妻エリザベスは若草物語ではよく出来た良妻賢母だったけど、じつは次女のジョーにもっとも似た気性。
この物語では生き生きしたエリザベスに、若き日のマーチがほとんど一目惚れするいきさつから。
ただ、かんしゃくがひどいので、結婚を危ぶむ気持ちになったほど。
夫の説得で次第に落ちついていく様子も描かれています。
家が貧乏になったいきさつも衝撃的。
黒人解放のために、どんどんお金を出してしまったのですね…
伯父の妻で大金持ちのきつい女性も若草物語に出てくるまま。
黒人奴隷は、家庭の中に馴染んで、一見すると家族同様に遇されている場合もあった。
だが、差別は苛酷で、教育を与えることは法律で禁じられるようになっていた。反乱や逃亡を押さえるため。
マーチが若い頃に最初に南部に行ったときに、印象的な女性グレイスに出会っていた。
本の行商をしていたマーチは、裕福な家にしばらく滞在することになった。グレイスは奴隷だが法律が出来る前に良い教育を前に受けて、奥様の話し相手になっていた。グレイスに頼まれて、幼い少女にこっそり字を教える。
ところがそれが発覚して…
南北戦争の頃の時代相がありありと描かれています。
マーチは妻や娘達には戦争がどれほど悲惨かは知らせませんでした。
病院へ駆けつけた妻は実態を知ることに。
マーチの妻から見た視点が最後に挿入されて、さらに辛辣かつ重層的に。
病床にありつつも多くの人を目の前に見ながら救えなかった罪悪感に苦しむマーチ。
やがて、帰宅した家庭に灯がともる… -
若草物語に登場する両親は、ともすると現実には居そうもない高潔な人間のように思えるが、本作の彼らはとても人間くさい。マーチ氏の後悔も、マーチ夫人の怒りも、そのほか複雑な感情を抱えてどうしていこうかと苦しむ姿も、子どもの頃には知りえなかった大人の姿だ。
また、小説の中とはいえ、南北戦争の背景を含めた酷さや抑圧が伝わってきた。
史料を元に、(後書きにあるように)小説家としての自由を加えるという作者の描き方が、物語の中に引き込んでくれた。 -
もうひとつの若草物語と副題にあるように、若草物語の四姉妹の父であるマーチが従軍牧師として南北戦争に往き、苦難の末にもどるまで描いた作品だ。が、優良子女読本である若草物語とは大違いで、人間の弱さや醜さ、身勝手さがこれでもかこれでもかと綴られる。それが本編ではほとんど不在だった父マーチの赤裸々な本性というわけだ。若草物語の設定を借りて黒人奴隷問題と南北戦争のさなかに翻弄される理想主義者の挫折を扱った小説という体裁なのだが、はたしてこの設定を借りる必然性はあったのだろうかという違和感がぬぐえない。もちろん世界はお花畑ばかりではないにしても、著者の筆の走りは鋭すぎやしないか。それと、マーチの従軍の様子とその手紙に若き日の回想部分が織り交ぜて語られるのがとても読みにくかった。こういう手法はよくあるが、章立てを分けるなりもう少し区切りを明確にしてほしかった。
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名作古典『若草物語』では背景の一部だった4姉妹の両親の物語。南部の様々な層の心情や光景をマーチ父の視点で、過激な北部奴隷解放論者の到達点と限界をマーチ母を通して描く。舞台と世界観とキャラのせめぎ合いに息詰まる。この時代のアメリカ史を知らないと少々辛いかも。
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マーミー曰く「不安定で、損なわれた夢想」。グレイス曰く「理想のために生き、観念のみで世界をつくりあげる」人。
そんな地に足のつかない超絶主義の奴隷制度廃止論者マーチが南北戦争に従軍し、現実と己の理想の板挟みとなり苦悩する姿が描かれている。
マーミーは確かにうわべだけの慈善精神の持ち主であったが、憎めないのはそれを自覚した節があるからである。
マ -
「若草物語」の時代が南北戦争のときだったとは知らなかった。当時の北部南部の人々の生き方・考え方や、当時の戦争や暴力の描写が冷静に描かれ、「若草物語」という背景は特になくてもよいくらい。相当癖のあるマーチ家の父母は傑作です。アメリカ人って本当になんというか。
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興味深く読みました。南北戦争について改めて考えさせられました。