- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784270103937
作品紹介・あらすじ
その夜から、富豪の娘ラーキンの悪夢は始まった。深夜の街で起こした衝突事故。相手の車の後部座席の男はなぜか黙って姿を消し、車も走り去った。まもなく、消えた男は国際手配中の殺人犯、運転者は資金洗浄を疑われる不動産業者と判明、目撃者であるラーキンは命を狙われることに。娘の身を案じた父親は街一番の凄腕と評判のジョー・パイクに警護を依頼する。なおも執拗な襲撃を繰り返す敵に対して、パイクはあらゆる戦術を駆使して反撃を開始したが-。
感想・レビュー・書評
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今月末にクレイスの新作『危険な男』が発売される。しかも翌月には翻訳ミステリー読書会が既にその読書会を決定している。翻訳者の高橋恭美子さんが読書会メンバーであるからというだけではなく、ここ数年クレイス翻訳のブームが間違いなく起こっているからだ。
一端途絶えたかに見えたクレイス作品だが、『容疑者』『約束』の二作で警察犬マギーによる新ブームを皮切りに、この作家のメインストリームであるエルヴィス・コール・シリーズが復活。ぼくは過去からのクレイス読者ではなく、むしろこの新たなストリームに乗ってクレイスに夢中となってしまった口である。
既に手に入りにくくなっているクレイス作品を、チャンスがあれば集め、機会に応じて読んでゆくことにしているが、本書『天使の護衛』も、コールの強面な相棒ジョー・パイクの初主役作品。無口で頼もしい、戦場帰りのこの元警察官を主役になんてできるのかな? と懸念したのも束の間、あっという間に本書の面白さに心ごと持ってゆかれた。本書ではコールがいい味を出した脇役。やはり二人のコンビは主役が逆転しても、素敵なのである。
のっけから命を狙われる生意気な美少女ラーキンの護衛に付くことになるパイク。無口で素っ気ないその態度はいつも通り。叙述の仕方も上手すぎる。最初に大まかないきさつを数行で紹介し、えええ? と驚かせてから詳細の語りをスタートさせる意味深な手口。また、途中でいきなりコール、その他へと視点を変えて、パイクを客観視させたり、とクレイスの手練手管は輝き続ける。
リズムとテンポ。コールの減らず口とパイクの不愛想に、ラーキンの不良お嬢様風マイペースが、スパイスをきかせ、まるで出来の良い即興ジャズコンボを相手にしているような読書感なのである。
しかし、全体を流れるのは、何よりもパイク・シリーズならではのスリルと張りつめた緊迫感。アクション・シーンの連続に始まり、騙し合いとスリリングな空気に満ちた、信用のおけない空気で張りつめた一秒一刻の連なりがイケている。
終章でのどんでん返しの連続ではミステリーファンのツボを抑えており、言うところのない傑作。この続編数作がなぜ邦訳されていないのか、不思議としか言いようがない。だけど、クレイス邦訳は『容疑者』以来復活した。新作『危険な男』次第でパイク・シリーズ旧作も邦訳されないかなあ、と密かに期待してみたい。本書は、そんな可能性さえもうかがわせる出来なのだから。 -
エルビス・コールシリーズのスピンオフ。用心棒パイクがセレブ美女ラーキン・バークリーを麻薬組織の親分(笑)から守る!
パイクが警察官になったばかりの頃、教育係だったバッド・フリン。彼の依頼であれば、わがまま娘の用心棒も断ることはできないのだ。
「われわれの仕事は人を殺すことではない−人を生かし続けることだ」自分の胸を突き刺した人間のことをそういうのだ。バッド・フリンとは、まったくなんという男だろう。なんという警察官だ。
彼(パイク)はたとえ悪いカードでも配られたカードでゲームをしたし、その結果を受け入れた。しかし、ときにはそれ以上をのぞむこともあった。
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面白かった!パイク。敵にまわすとコワ?イ、おとこぉ?。翻訳が途切れた作品の内容を思わせるエピソードもチラホラ。メッチャ気になるぅ?
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主人公のジョー・パイクはなかなか魅力的なヒーローなのだが、迫力に欠けるというか、決定打が無い。富豪の娘の護衛、果たしてパイクは完遂出来るのか。この類いの作品は過去にかなりの傑作があるが故、それを越えるとなると難しいかな。
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同著者のエルヴィス・コールシリーズは読んでいたけれどもうあんまり覚えてなくて。なんか軽いノリだったなーとだけ。そのエルヴィスの相棒パイクを主人公にしたシリーズがこれ。こっちのほうが好きかも。パイクはエルヴィスと違って無口で暗くて過去を背負っていて、ストーリーに重みが出るというかなんというか。
テンポがよくておもしろかった。ロサンゼルスの雰囲気もよく味わえるような。明るいのに表裏があってすっごく孤独な街というイメージ。
マフィアとかファミリーとかの話も好きなので、そういう意味でもおもしろかったかも。
このシリーズは続けて読んでいきたい。 -
何かのシリーズの中の1冊みたい。シリーズを読んでいないので、登場人物が善玉か悪玉かもわからないのが失敗か。
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私立探偵エルヴィス・コール・シリーズに登場する相棒ジョー・パイクを主人公にしたスピン・オフ第一作。
富豪の娘ラーキンが遭遇した衝突事故。相手の車の後部座席の男は姿を消し、車も走り去ってしまう。やがてラーキンは命を狙われることになる。
かつて、エルヴィス・コールのシリーズは読んでいましたが、邦訳がしばらく途絶えていました。映画化された「ホステージ」は未読、同じくノン・シリーズの「破壊天使」は読みました。
さて、今回の作品。勢いよく読めると思っていたのですが、思ったよりも時間がかかってしまいました。主人公を含めて、共感できるキャラクターが登場していなかったからかもしれません。 -
さして期待していなかったのだが意外と掘り出し物。
そもそも新人作家と思っていたのが間違いで1990年頃に数冊翻訳が出ていたベテラン作家でした。それでツボを押さえた筆運びにも納得。
「証人の女性を護衛する」というと「逃げるアヒル」だったり、アヒルを原作にしたとんでもない映画「コブラ」ということになりますが、本作はアクションは抑えて、むしろ理詰めで真相にせまっていくのに感心します。
加えて(たびたび言いますが)ディテールの手を抜いていない点もポイントが高いです。
使用した銃の掃除をするところや野菜サンドをつくるところです。 -
紹介:ハヤカワミステリマガジン 2011/11 杉江松恋の海外レビュー