- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784272331031
作品紹介・あらすじ
あらゆる差別はマジョリティには「見えない」。日常の中にありふれた
排除の芽に気づき、真の多様性と平等を考える思索エッセイ。
感想・レビュー・書評
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『あとがき』が1番ストンと理解出来て、全部のピースが当てはまったような気がした。
個性を推奨するような事をいいながら、個性が強いと批判する。これも『差別』なんやったやなぁとしみじみと感じた。
自分の価値観で物事を測るせいで、そこに当てはまらない人のことはどこか排除してしまう。昔、『世界を見るなら心の物差しを大きなものにしろ』と教えてくれた人の言葉がやっと理解出来た。
大切なことを改めて学べる本やった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
色々なことを学んで、気づいても誰かを苦しめてしまっているかもしれない
理想を追い求めるのでもなく、現実を諦めるでもなく常にどうすればいいかを考える
知りたいことができてわかったつもりになる前に読むことができてよかった -
職場で電話を取った同僚が、ニヤニヤと笑いながら上司へこう言った。
「〇〇課のた、た、田中さんからお電話です」
上司はニヤニヤしながら「あ〜、あの田中さんね」と言って電話を受け取って普通に話し出した。
私はその会話を信じられない気持ちで聞いていた。この2人がなぜニヤニヤしていたのかというと、田中さんが吃音症だからである。
電話口で田中さんが「た、た、田中です」と名乗ったのを聞いた同僚が、その口調を真似して電話を取り次いだのだ。はっきり言って、私にとってはまったく面白くなかったし、そんな笑えない冗談でニヤニヤしている2人の神経を疑った。
このとき私が困惑したのは、この2人が普段からボランティアに熱心に取り組んでいる善良な人たちだからである。善良な人たちがなぜこんな発言をしてしまうのか…。この本にその答えがあった。
同僚の冗談が私にとっておもしろくなかったのは、私のたいせつな人の中に吃音症の人がいるからだ。もしそうでなければ、私も一緒に笑っていたのだろうか?恐ろしい話である。
例えば、セクシャルマイノリティーに対して。これまでにLGBTの当事者会っても、「男性が好きか女性が好きかなんて私にとってはどっちでもいいし、興味がない」と思っていた。差別している意識は全くなかったが、このような「なぜあえてカミングアウトするのですか」という態度は、「あなたたちは私的領域に残るべきであり、公共の場では見えない存在でいてほしい」と要求していることに等しいと筆者はいう。
セクシャルマイノリティーのフェスティバル「プライドパレード」をめぐって、パレードに反対する人々による暴動を防ぐため、パレードの開催を禁じる国もあるそうだ。「被害者があえて公共空間に出てくるから犯罪が発生するのだ」というのは、マイノリティに責任を転嫁する典型的な言い方で、マイノリティを公共空間により登場しにくくする。
これを読んでいて思い出したことがある。「宗教上の理由で女性の外出を制限したり、肌の露出を制限したりするのは、女性が襲われる被害を防ぐためだ」とネットニュースで発言している人がいて、「襲われる側を閉じ込めておいて、なんで襲う側の外出を制限しないの?」と強烈な違和感を抱いたのだ。本を読むうちに、自分もこの発言者と同じような思考をしていたことに気づき、ハッとさせられた。
白人と黒人のトイレを区別していた過去は、現代から見ればバカらしく滑稽にさえ思えるが、男性と女性のトイレを区別している現代は、未来から見れば滑稽に映るのだろうか…。
LGBTの他にも、お店での子連れお断り・外国人お断り・車いすお断り等、集団の一部がマナーを守らなかったり、トラブルを起こしたがために、その集団の全員を締め出す「連帯責任」の問題についても書かれている。
読みやすい文章で、気づきの多い一冊です。 -
フェミニズムジャンルは、韓国本が圧倒的におもしろい。
ちょっと思いつくだけでも「82年生まれ、キム・ジヨン(チョ・ナムジュ)」「私たちにはことばが必要だ(イ・ミンギョン)」「クソ女の美学(ミン・ソヨン)」「屋上で会いましょう(チョン・セラン)」はじめ話題作がたくさん。
本書も韓国のベストセラー。マイノリティや差別論を専門とする大学教授による見えない差別の本。
マイノリティとして差別を受けている人でも、差別をしてしまう側に回ることもある。普通の人がしてしまう差別について、あらためて気づかされる。障害者に対する「希望を持って」という励ましは、現在のその人の生活に「希望がない」ということを前提とする発言である、のような事例にハッとする。
韓国の事例はほぼ日本にもあてはまる。まず知ること、意識すること。 -
3部に分かれていて、1部は『善良な差別主義者の誕生』
差別構造が組み込まれている社会で、私たちは『差別を内在化して』『差別を再生産して』いるという話。
差別は見えにくい。
理由はいくつもあるけれども、『自分の立ち位置』しか自分で経験して知る事が出来ないからと言う理由が大きい。
マイノリティと言われる人たちでさえ、立ち位置が変わるとマジョリティになり他のマイノリティを排除する。
女性と言うマイノリティが自国民と言うマジョリティになり、難民と言うマイノリティを排除する例が出ていた。立ち位置が変わるという事がどんなものなのかが分かる。
p65『差別は私たちが思うよりも平凡で日常的なものである。(略)誰かを差別しない可能性なんて実はほとんど存在しない』
差別だと言われて傷つく必要はない。ただそれを『間違った行動』だと認め、『正しい行動と認識』に変えていく努力をするだけ。
努力なしには平等な社会は訪れない。待っていても何も変わらない。という章だった。
2部『差別はどうやって不可視化されるのか』
4章『冗談を笑って済ませるべきではない理由』この章が一番読みごたえがあった。
「誰がそれに対して笑うのか」「なぜ笑えるのか」を考えると、それは笑えなくなる。冗談は他人への侮辱で笑いを取っている。その集団を侮辱していいと何度も繰り返し伝える事で、社会はそれを容認する。
それに対抗するには、笑わない事でそれは笑えないのだと伝えるしかない。と言う話だった。
笑えないものを笑わないのは、単に私が嫌な奴だからなのか?とか、冗談を冗談で笑わなければいけないのかと思っていたけど、この章は『笑うな』と書いてあってよかった。その理由もわかり易い。
笑えない冗談には笑わない。そんな単純な事さえ、差別社会では分からなくなる。
その後の章は、同性愛の弾圧の話なども入っている。キリスト教では同性愛弾圧が激しいというものを見かけていたけれども、韓国もそうだったのは初めて知った。
3部『私たちは差別にどう向き合うか』
p182『マジョリティは、マイノリティの話に耳を傾けないまま、彼らに丁寧に話す事を要求する』
これもツイッターでよく見かけた。そして、丁寧に話せば耳を傾けるかと言えば傾けない。声は小さく目立たないので『知らない』とそっぽを向く事が出来るのがマジョリティだ。
9章で『みんなのための平等』にみんなのトイレ論争についても書かれていた。
これについてはずっと考えていて、どう考えればいいのか分からないと思っている。
女性側は男性と一緒のトイレなんて使えないと言い、男か女かの二分法で困ってる人たちは性別で分けられたトイレは使えない。
『オールジェンダー・レストルーム』という皆のトイレがある国もあると紹介されている。安心安全なトイレ問題。盗撮する人やわいせつ目的の人が入って来た時点で、通報システムなどがあればいいのになと思います。が、そのようなシステムもプライバシーの問題でトイレでは難しそう。それでも、考え続けなければいけない問題だと書いてある。
p202『「差別されないための努力」から「差別しないための努力」に変えるのだ』
全てはそれに尽きる気がする。そして、無意識で差別をしている人にそれを訴えても、全く響かない事も知っておく。
自分の利益が奪われる変化を望まない人たちには、無理なのだ。
世界は分断されている。だから、差別の構造は今まで残り続けてきたのだから。 -
フェミニズムが強い韓国だからその文脈で差別を語るのかなと思ったけど、
人種という概念に対しての批判、そんなところまでしっかり絡めてくるんだと。
わかりやすく大衆宛に書かれてるものだしライトなんじゃないかと思ってた、こんなに本格的だとは思ってなかったから大満足の一冊でした。 -
小論文対策推薦図書 社会学系
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・誰かが笑いの対象にされる、いじられることは、以前はよく見かけた気がする…。いじる側といじられる側には権力的な優劣の関係があり、いじることを「軽い冗談」とみなすこと自体が、強い権力を持っている側の横暴であると読んで、衝撃を受けた。いじられてなんぼ、じゃないのだ。「その冗談は面白くありません」というメッセージを発信しようと決めたのでした。(菊)