みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」
- 日経BP (2020年2月14日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296105359
作品紹介・あらすじ
ついに完成した「IT業界のサグラダファミリア」、その裏側に迫る
みずほフィナンシャルグループ(FG)が2011年から進めてきた「勘定系システム」の刷新・統合プロジェクトが2019年7月、ついに完了した。
富士通、日立製作所、日本IBM、NTTデータを筆頭に1000社ものシステムインテグレーターが参加したものの、2度にわたって開発完了が延期になったことから、なかなか完成しないスペイン・バルセロナの教会にちなんで「IT業界のサグラダファミリア」とまで呼ばれた史上最大級のITプロジェクトだ。みずほFGは完了までに8年もの年月と、35万人月、4000億円台半ばをつぎ込んだ。
1980年代に稼働した「第3次オンラインシステム」の全面刷新は、第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行が統合したみずほFGにとって、2000年の発足以来の悲願だった。
しかしシステム刷新は何度も挫折し、2002年と2011年には大規模なシステム障害を引き起こした。80年代の非効率的な事務フローが残ったままになるなど、勘定系システムの老朽化は経営の足かせになっていた。
なぜみずほ銀行のシステム刷新は、これほどまでに長引いたのか。そして今回はどうやって完了に導いたのか。「メガバンクの勘定系システムとして初となるSOA(サービス指向アーキテクチャー)全面導入」「AS IS(現状通り)を禁止した要件定義」「1000社のシステムインテグレーターを巻き込んだプロジェクト管理」など、新勘定系システム「MINORI」開発の全貌と、みずほ銀行がこれから目指す金融デジタル化戦略を、みずほFGにおける19年の苦闘の歴史を追いかけ続けた情報システム専門誌「日経コンピュータ」が解き明かす。
多くの日本企業が直面する情報システムの老朽化問題、「2025年の崖」を乗り越えるヒントがここにある。
感想・レビュー・書評
-
前半の概要説明は少しシステム的な知見のレベルが高め。
その後の過去の大きい失敗要因については、ヒューマンエラーの背景が説明されていて面白い。
次がまだあった、というのも面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
・統合時と震災時の2度の大規模障害と、その再発を2度と起こすまいと意気込んで作られたMINORIの開発経緯がファクトベースで記載された一冊
・過去に当行との接点がある身としても、且つその後再度大規模障害を起こしているのを知りつつも、という2点から、興味深くかつ冷ややかな目線で読み進めた
・旧行の軋轢に起因する事象や、坂井社長の「人は育った」という言葉からも、システム周りも最後は人なんだと改めて感じた。だとしたらなぜまた21年の障害が、起こってしまったのか、ポストモーテム(いわゆる日経の言い訳本)も拝読したい -
体制図すごかった気がする。けどおそらくもう読まない
-
SIerにはおすすめ
-
・みずほ銀行のシステム刷新までの過程と2度のシステム障害の背景について詳細に解説している一冊
・エンジニアとして一応読んでおくかと思い手に取った
・みずほ銀行の新システムがいつまでも完成せずにサクラダファミリアと呼ばれてることは知ってたけど大きいシステム障害を2回起こしてることをまず知らなかった
・金融というお金が密接に関係する業界で大きなシステムを統合するのはさぞ大変だろうと関係者を労いたい
・みずほFGは2度の失敗から学び、システム刷新という大仕事を乗り越えて組織として強くなったんだなと思う
・1度目のシステム障害については3行統合後の内部での争いが結果としてシステム障害に繋がっていてヤレヤレという印象
・2度目のシステム障害については、たしかにシステム周りの知識不足な経営層が大きな原因の1つではあるけど、同じように知識不足な経営層がいる企業はたくさんありそうなのでこれを糧に我がふり直す企業が出てくればいいなと思う
・そしてエンジニアの仕事が増えて欲しい笑
・MINORIを活用したみずほ銀行のこれからのIT戦略に期待 -
バブル後に生まれたから全然知らなかったけど、銀行の統合って大変だったんだな、色々面倒だなって感じた
-
社会のインフラを担う事の重みを痛感した。
-
障害発生とその対応の話は学ぶべきことが非常に多い。規模も業界も違うが頷ける話が多かった。
大規模障害の原因を突き詰めると個々のプログラムの品質よりも組織の風土や統制、経営層の理解といった部分へ通じてくる。
システムは人が作って運用している以上、
どの企業でも本書のようなことが起こりうることは知っておかなければならないと感じた
-
どこかで読まねばと思いつつ、ようやく読んだ1冊。幸いというかエンジニアのキャリアの中でこのプロジェクトに関わることはなかったけれど、当時「ブラックホール(=行ったら帰ってこれない)」と呼ばれていたプロジェクトを全体感に立って振り返っていて大いに横展開できる反省点は盗もうと思った1冊だった。やっぱりエラーハンドリングもそうだけど、初動とトップのITへの理解が大切。もし自分が関わることになっていたとしたら、どの辺を担当することになってそこで力を果たして発揮できただろうか、とか思いながら読んだ1冊でした。