アメリカ映画の文化副読本

著者 :
  • 日経BP 日本経済新聞出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296119479

作品紹介・あらすじ

〈7つの文化〉で紐解いていく「アメリカ」。お馴染みの著名作品から日本では劇場未公開の知られざる個性派作品、Netflixオリジナル作品やAmazonプライムなど配信系オリジナルの映画ドラマまで数多くの作品を幅広く紹介。巻末にはアメリカのメディアや選挙現場の実務から「フィールド」を知る政治学者の著者による異色「コラム」も収録。アメリカ文化解説、映画レビュー、政治分析が折り重なった注目作。「日本の読者として何に受け入れがたいアレルギーが残り、どんな部分に知られざる再評価できそうな面白さが眠っているか。アメリカを自然体でお伝えすることに専心し、なるべくアメリカの映画やドラマが楽しくなるような文化解説を心がけた」(本文より)文化がわかるとドキドキや泣き笑いが真に迫る! すべての映画・ドラマファン必読の一冊。著者からのメッセージ:「ネット動画配信プラットフォームの浸透で、日本国内でのアメリカの映画ドラマ消費は、質量ともに新たなフェイズに突入している。「配信革命」とも言える波のなかで、映画ドラマ好きの目はますます肥えつつある。ざっくりしたストーリー消費に飽き足らず、キャラや設定の背景も知りたい人が増えていることを肌で感じるようになった。(中略)ハリウッドの映画やドラマでもこの「泣き笑い」を心から愉しみたいという視聴者が増えている。見えない文化差はビジネスや生活習慣に遍在するやっかいな代物だが、押さえておけば映画ドラマを数倍愉しめる。自己啓発書やビジネス書など海外発の翻訳書の「読み方」にもメリハリがつく。「スタンフォード流」「ハーバード流」など、アメリカ人著者が「彼らの文化」だけを前提にしたベストセラーでも、「文化変換」の回路を通すことで日本の生活や仕事に役立てる工夫の手がかりにも近づける。文化の「カフェイン」入りの本格派で堪能するお手伝いができないか。そう考えてアメリカの映画ドラマについての「文化ネイティブ」へのジャンプシューズないしは3Dメガネの企画を練った。しかも、自文化との「差分」も二段階でエンジョイできるのは我々外国人だけの特権的ボーナスでもある。初回はアメリカ文化を意識しないで視聴するのも一興。文化を知ってから味わうと「なるほど」感や面白さも格段だ」(本文より抜粋)

感想・レビュー・書評

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  • 著者の専門は現代アメリカ政治と外交。米上下院事務所や海外の大学で長く勤務されていたこともあってか、解説に「こなれ感」があった。
    雰囲気的にふと思い出したのが、洋楽CDに同封されている日本人解説者の文章。ファンなら知っていて当然と言わんばかりにアーティストや現地の音楽事情・専門用語を盛り込み、下手をすれば個人の感想になりかねない。(そう感じているのは自分だけではないと信じたい…)

    今回は自分も大好きなアメリカ映画・ドラマを文化的背景から考察していく内容なので、幸いCDの苦痛(何じゃそりゃ)には至らず。むしろ作品や役者に詳しくなくても、アメリカの映像作品を観るのが好きであれば充分楽しめると思う。
    映画字幕翻訳の監修も担当されているので、邦題の付け方など面白い裏話を聞けるのも醍醐味の一つだ。

    「そんなものなんだろう」と思っていた習慣や仕草・場の空気を一つひとつ裏付けているのが特徴的。何かしら情報が添えられているので、日本人がよく使う「何となく」や「特に意味(/理由)はない」を一切見かけない。現地の大学院や仕事現場で培った発言力の賜物か。
    そこもまたアメリカを熟知し、自らの中にもアメリカを浸透させている人間にしか生み出せない「こなれ感」なのだろう。

    「アメリカというのはひとつの国のように見えて、『部族主義』のパッチワークのような国」

    ここで一番明らかになったのが、州が全ての基本だということ。
    連邦政府で統率をとっているものの、元々は州ごとで独立していた。気候や産業・州のカラー(ユタ州は超保守的etc…)にとどまらず、法律や資格の合格基準すら違ってくる。祝日や消防団の練度にまで統一性がないなんて、本書を読まないと分からないことだ。(そこまではいかんか…汗)

    日本で劇場公開される洋画はアメリカ映画が圧倒的多数を占めているが、文化的背景を交えて邦訳しきれないことから日本未公開作品も発生しているという。本書でも何点か紹介されているが、未公開なものに限ってめちゃくちゃ観てみたい…!
    『ニュー・イン・タウン』(2009)がその一つで、バリキャリ女性が自社の工場をリストラするためミネソタへ向かうお話。ミネソタという土地の特殊性が際立っているせいなのかは分からないが、ジャンルとしては普段自分もよく観るヒューマンドラマ系。
    「良作」という著者のお墨付きだし、主演が『ブリジット・ジョーンズ』シリーズのレネー・ゼルウィガーだってのに不思議である。配信もされていないっぽいからDVDをお取り寄せするしかないのかな。。←イマココ

    「映画はただの『情報』ではなく、個人『経験』だ」

    挙句に行き着くのは「経験=自分はどう感じたのか」だろう。
    「個人主義のはずなのにどうしてパーティーにペアで出席するのか」「日本人の登場人物は何故他のアジア系と一緒くたにされているのか」…。そうした疑問を本書で晴らせたからといって、「そんなものなんだろう」とスルーしていくような鑑賞だけはしたくない。

  • <訪問>「アメリカ映画の文化副読本」を書いた 渡辺将人(わたなべ・まさひと)さん:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1000328/

    はじめに:『アメリカ映画の文化副読本』 | 日経BOOKプラス
    https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/011900520/

    渡辺 将人 | 教員プロフィール | 教育 | 北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院
    https://www.imc.hokudai.ac.jp/academics/faculty_profiles/000373.html

    渡辺 将人 - 教員プロフィール | 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC) 教員プロフィール
    https://www.sfc.keio.ac.jp/faculty_profile/list/PM/Masahito-Watanabe.html

    アメリカ映画の文化副読本 | 日経BOOKプラス
    https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/23/11/13/01102/

  • 著者の専門はアメリカ政治、文章は堅めでおちゃらけたところとかないんだけど、わかりやすく読みやすかった。挙げられている映画やドラマは、知る人ぞ知るとかB級といわれるものとかも多くて、そもそもアメリカの映画やドラマがすごく好きで相当見てる人なんだろうなっていうのがわかる。
    本当に、アメリカの文化や政治、日常生活の細かいことまで、アメリカ映画やドラマはけっこう見てるし!と思ってるわたしでも、知っているようでよく知らなかったことがいろいろわかってすごくおもしろかった。
    特に、つねづねわからないと思っている宗教と人種について、「エスニシティ」(民族性。育った文化とか)という言葉を使って説明しているのが、すごくわかりやすくて少し腑に落ちたような気がした(少し、だけども)。宗教と人種と「エスニシティ」はオーバーラップするけど完全一致ではないっていう。「私はカトリックです」と言うとき、信仰宗教を言ってるだけじゃなく、「プロテスタントではない」「ワスプではない」=アイルランド系やイタリア系移民である!っていう移民の誇りも含んで、エスニシティを表明している、とか。そして、「~です」と強調するときは「~でない」ことを本当は言いたくて、「私は保守的です」と言ったら、「大きな政府とかヒッピーは無理、自分はリベラルではない」ことを本当は言いたい、とか。
    あと教育とか学歴とか就職の話もおもしろくて、細かいところでは、履歴書には取得学位と成績平均しか書けない、っていうのとか。だからハーバード大学に入学しても中退したら高卒だし、ハーバード大学入ってもそのなかでいい成績がとれないなら履歴書の成績平均が悪くなるから、だったらもっと下の大学に行ったほうがいいとか。大学の成績平均なんて日本じゃにあんまり気しなくない? 大学入試の話も興味深くて、アメリカの大学入試、成績よりも人物性としてその大学の風土に合うかどうかをすごくジャッジされるという意味で就職活動に近いっていうのもおもしろかった。

    へえー、と思ったのは、ドラマ「アリー・マイ・ラブ」は意外と「地雷」だそうで。アリ―が男に媚びているととるか、いやそれでもキャリア女性の地位向上に貢献したとするかで意見がわかれるらしい。見てないんだけど見たくなった!
    あと、私が大好きなドラマ「スーツ」では、高級スーツを着ているNYのエリート弁護士が汚い屋台のホットドッグを並んで買うところに視聴者がグッとくるとか。そうなんだーと思った。

  • 序盤はとても面白かった!ただ、後半にいくにつれて話がとても専門的になってきて、言い回しも複雑で、頭が追いつかない部分が多かった。(もっとシンプルに伝えて〜となった!)

    でもアメリカの本当の姿を映画の例を挙げてすごく深掘りできる書だと思うので、また時間がある時に再読したい。(映画を片手に)見たことのある映画も有名映画も目白押しだったので、本を片手にこの視点で見返したいと思った。

  • 映画やドラマが大好きなので、好きなドラマがどのように紹介されているのだろう、と思って読んでみたが…作品を紹介する内容ではなかった。
    もちろん、広く深い知識の元、いろんな作品に言及されている。
    その作品の奥底に隠れているアメリカの文化を知るための本だ。

    アメリカは州が絶対単位。
    州が中央政府より上で「州法」がある。
    以前、想定外に妊娠してしまった女の子がよその州に行って…という作品を観たが、まさにそれである。
    どこ出身?は何州出身かを意味する。
    日本のケンミンショーレベルではない。
    舞台都市がどこなのかわからないと落ち着かない、くらいになりたいものである。

    盛りだくさんの内容で、なかなか読むのに時間がかかった。
    実は図書館から借りた本だが、副読本に相応しく、手元に置いておきたい気持ちになった。
    映画・ドラマ好きなら作品を何倍も楽しめるようになると思う。
    一度観た作品も違った目線で観ればまた楽しめるはずである。

  •  映画から世界を学べると思っているので、興味を持って読んでみた。

     が、少し違ったかな。「映画から」ではなく、アメリカの文化を語るときに、「例えば映画では・・・」と、少しだけ映画作品が紹介される。映画はあくまで添え物だ。
     とはいえ、過去から現在までのアメリカの様子がよく分かる。
     都市に込められた記号的な意味、州による文化の違い、ニューヨークの場所の意味、などなど。
     教育と学歴の章で、スクールカーストの解説も、なるほどと納得。しかし、昨今の映画でも、それらは成り立っているのかしらん? イメージとしては、80年代の『バック・トウ・ザ・フューチャー』や90年代の『スパイダーマン』が思い出される。近年の映画で『フェイブルマンズ』でも描かれていたが、そもそもその時代背景が70年代のことだ。

     また、ドラマの引用もそこそこ多く、映画よりもむしろ扱いが多いくらい。そこが少しネックだった(それほど、アメリカのドラマは見ていないので)。

     この記述は、面白かった;

    “『タクシー・ドライバー』のロバート・デ・ニーロのように客の人生にあれこれピュアに関わる人はさすがにあまりいない。近年では大都市は概ね移民の仕事で英語が通じないのも風物だ。ホスピタリティに満ち溢れているとは言い難く、ハンズフリー電話でずっと友人とヒンディー語やらベトナム語で話続けている人も多い。”

     今、タクシードライバーを主人公に、あの名作は生まれないということだ。

  • まさにタイトル通りのアメリカ映画から抜粋のアメリカ文化副読本でした。アメリカは移民の国でかつ分化も実に多様な国、人種、支持政党、リベラルや保守、州に強い権限があったり、南部北部東部西部でも違う、居住地域で富裕か貧困かも別れるなど様々。私は映画好きなのでこの本を手に取りましたが、ハリウッド映画の見方が変わりそうです。

  • 少しずつ読み進めてやっと読了。大学生の頃にこの本があったらなぁ。

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著者プロフィール

広告業やアグリテックの分野で活動する機械学習エンジニア。2017年10月に株式会社iMindを設立。PythonよりもJuliaの方が好きですがあまり使う機会に恵まれません。

「2020年 『数式をプログラムするってつまりこういうこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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