ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296201266

作品紹介・あらすじ

■書籍紹介 / 著者・藤井保文よりメッセージ
 「ジャーニーシフト」とは、顧客提供価値が時代によって変質したことを示した言葉です。一文で示すと以下のようになります。

顧客提供価値は、「モノや情報の提供」「瞬間的な道具としての価値」から、ありたい成功状態を実現させ、行動を可能にさせる「行動支援」に変わっている。

 これは言い換えると、「ユーザにとって何かしらの行動やアクションを可能にしていなければ、企業として何の価値もない時代」になってきているということでもあります。自分の中でどれだけ受け止め、理解したり解釈したりしても、世の中に対して発信や貢献をし、社会やコミュニティーに干渉しないと、意味がない時代になってきているのです。

 本書は、世界の潮流から新たな変化を読み解く本です。社会のビフォアアフターを書いたこれまでのシリーズに対し、提供価値のビフォアアフターを書いたものがこの『ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件』です。

 DXやOMOから、SDGsやパーパス、Web3やメタバースなど、次々と現れるバズワードは、1つの大きな潮流【提供価値の行動支援化】を示しており、その中には2つの特性【利便性の進化・意味性の進化】があります。本書を通してこれらを整理し理解することが、変化の速い時代の道しるべになるのではないか、と考えています。読んでくださった方の仕事や生き方において、さまざまなバズワードに埋もれて身動きが取れなくならないよう思考しアクションしていくための、コンパスや道具になることを願っています。

感想・レビュー・書評

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  •  まず何より重要なのは、インドネシアで見たのは「社会ペインへの注力とその解き方」であって、日本では全く異なる社会ペインを抱えているため、それを明らかにしてアプローチしなければならないということです。


    ▪️利便性は共有され、意味性は所有される
     UXづくりやサービス設計、価値創造においては、「利便性」と「意味性」の特性の違いを捉えることが重要です。端的に言うと、「利便性は共有され、意味性は所有される」ということになります。詳しく説明していきましょう。
     利便性は、「合理的な指標」で評価されます。例えば、いつでも、どこでも、誰でも、または、安い、速いといったマスでも分かりやすいものです。例えば、ペイメントアプリはすべてのお店で使えたほうが便利ですし、タクシーはいつでもどこでもすぐにつかまったほうがいいですし、配達はなるべく早く届けてくれたほうがうれしいです。
     利便性においては、シェアリングのような共有の仕組みや、APIのような連携の仕組みは非常に有効に働きますし、なるべくオープンに広〈共有・連携されていると効率よくなります。
     近年のテック系ワードで言えば、スマートシティー、MaS、フードデリバリー、ペイメント、スーパーアプリといったトピックは利便性レイヤーでの進化やイノベーションだと捉えられます。「1つの大さいサービスにまとまっていたほうが楽なのか、複数の小さいサービえがあったほうがいいのか」と考えるとよいでしょう。前者が「利便性」で、後者が「意味性」です。
    「OMO」というキーワードは、利便性の進化を代表する言葉であると捉えられます。OMOは中国で生まれた言葉ですが、その原義からするとオンラインとオフラインが融合することでフードデリバリーやネットスーパー、シェアリング自転車などが登場し、オンやオフをいちいち考えなくてもそのときに選びたい一番便利な方法が選べるという、圧倒的に利便性が高まった状況を指していました。第2章のサンポ・ヒエタネン氏の発言を考えても、オープンになることや協調することで生まれる利便性の価値を指しています。
     つまり、なるべくオープンで、なるべく多くの人を巻き込み、共有・協力・連携できることで価値をどんどん大きくしていきます。
     これに対し意味性は真逆で、所有や優遇など特別感を抱く方向に進むことで価値をどんどん大きくしていく性質を持っています。ユーザーが次のようなことを重視する場合、それは意味性に該当します。
    ・どれだけ自分らしさを表現することができたか。
    ・自分が特別な立場にあり、それをいかに周囲に証明できるか。
    ・普通の人に分からない価値を理解し、数少ないその価値が分かる人にどれだけ賛同や称賛をされるか。
    ・自分が好きなコミュニティーにどれだけ貢献したか。
    ・自分の着てきた服のコンテクストやメッセージを理解して受け取っ てくれるか。
     このように、限られた人しか分からない・選ばれない、またはお金 で買いたくても買えないといった、優遇や特別感、唯一無二感が意味 性につながります。自分一人だけが分かっていればよいかというとそ うではなく、同じ価値を理解してくれる仲間や、同じストーリーを追 いかける仲間がいることは重要なのですが、多ければ多いほどよいと いうわけではありません。選ばれし人たちが分かり合えるような、他 にはないコミュニティーをつくっていたのに、そこに誰でも入れるよ うなオープン性を持たせてしまうと、唯一無二感が失われて興ざめしてオリジナルメンバーは去ってしまいます。どんなに意味があるもの でも、無料で誰でも手に入るものになったら、それは意味性を失いま す。テスラやフェラーリが安価で誰でも持てるものになってしまえば、 今のような価値は感じられないでしょう。
     近年のテック系ワードで言えば、NFT、Web3、メタバース、コミュニティー、D2Cといったトピックは「意味性を進化させる」という 文脈で特に重要な技術や手法であると捉えられます。メタバースで自分だけのアバターや家をつくったり、限られたNFTを所有したり、 限られた人しかメンバーになれないコミュニティーに参加できたり、 自分の好きなブランドに名指しで呼ばれて商品開発に関われたり、そ れらはすべて意味性の価値増幅だと言えます。
     つまり、なるべくクローズドで、なるべく一緒に熱狂し、理解し合える限られた人数のみを巻き込み、その小さなコミュニティーの中では共有・協力・連携がされたとしても、基本は所有・排他・独立できることで価値をどんどん大きくしていきます。


     顧客提供価値が、「モノや情報の提供」「瞬間的な道具としての価値」から、ありたい成功状態を実現させ、行動を可能にさせる「行動支援」に変わっている。


     オンラインとオフラインが融合するアフターデジタルの時代には、UXが圧倒的に重要になります。その理由は、「行動データによる顧客理解の解像度向上」と「一連の行動フローの支援」という2つの大きな環境変化が起こり、ビジネスのルールを書き換えてしまうからです(図表4-1)。


     実際に、ユーザーの行動を横断的に支援するような動きも増えてきています。例えばスバルは、オススメのドライブコースを紹介する「SUBAROAD」というアプリを提供しており、これはクルマという製品にとどまらず、計画立案のステップからの支援と捉えることも可能です。またホンダは、短いムービーをつないで思い出ムービーをつくれる「RoadMovies+」というアプリを提供しており、これも先ほどの図で言えば「思い出化」を支援するようなサービスです。


    ▪️視点転換や視点を増やすためのポイント
    ・行動支援の時代は、顧客にとっての「あなたの会社やサービスとっながり続ける理由」を問い直す必要がある。
    ・顧客にとっての「つながり続ける理由」とは、「どのような行動フローを押さえ、どのような顧客の成功を実現しているか」を指しており、提供価値の再定義が必要になるケースが多い。
    ・提供価値を再定義するには、社会に存在する「ペイン」を、自社の価値提供が可能な範囲で、幅と深さの観点を持って探す必要がある。
    ・ペインのある状況やドメインがある程度見えたら、「ペインが発生している状況とその構造」をより詳細に理解する。


     多くの企業の中期経営計画などには、この「顧客から見た、つながり続けたい理由」が書かれていることがあまりありません。戦略上、書かないようにしているだけならよいのですが、多くの場合、テクノロジーとビジネスの観点はあるのに、ユーザーやエクスペリエンスの観点がないのです。なぜなら、これまでの成功体験が「使われて当たり前」であったため、つながってくれる理由や使われる理由をわざわざ問い直す必要がなかったのです。しかし選択肢が増えた現在、提供価値のDXを遂行するには、「つながり続けたい理由」の言語化から行う必要があります。
    *この「つながる理由」については、奥谷孝司さんと岩井琢磨さんの書籍「マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント」(2022年、日経BP)でカスタマーパリューピラミッドの最上位とされています。顧客の日常の中に存在するには、単なる機能的な価値や体験価値だけでは一次的な関係に終わってしまいますが、さらに上の「つながっている価値」に到達すると、顧客とのつながりが強くなり、リテンションが高確率で引き起こされるようになる、としています。
    「つながり続けたい理由」をもっと顧客視点の言葉にすると、「自分が求める成功に対して、どのようなアクションを可能にしてくれているか」となります。逆に言えば、成功のためのアクションの実現を支援してくれない(または支援が完了した)場合は、顧客から見てつながり続ける理由がなくなることを意味します。アクションの実現を支援してくれているからこそ、自分の理想的な状態や、すでに当たり前と考えている状態を維持できるわけです。
     一方、顧客視点の「自分が求める成功に対して、どのようなアクションを可能にしてくれているか」を企業視点にすると、オンラインとオフラインが融合したアフターデジタル時代においては「どのような顧客の成功を実現するために、どのような行動フローを押さえているか」になるでしょう。
    「顧客にとってのつながり続ける理由」を考えることが有意義なのは、自社の視点から顧客の視点に移しながら、時間軸を長くし、業界の枠を取り払えるからです。顧客からするとさまざまな選択肢があり、企業からすると同業他社だけが競合ではありません。生活の中で一瞬現れるが、その後は二度と現れないとなると関係構築になっていないですし、行動支援のジャーニーにもなっていません。
     提供価値の再定義や実際の事業づくりが進む中で、この問い(「顧客がつながり続けたい理由は何か?」)に立ち返ってチームで考えるだけで、視点が顧客側にシフトしていくと思います。

  • 参考程度かも

  • サクッと読み終わった。

    アフターデジタルとか読んでいる人は、そんなに大きく変わっていないと思うけど、心にとどめたいなと思った言葉たちは以下。

    利便性と意味性:真逆の性質を持つので混ぜるなという話

    顧客から見てつながり続ける理由:自分が求める成功に対してどんなアクションをとってくれるのか
    品質や機能性は飽和していくので差がわかりにくくなっていく

    業界常識ペイン:業界協力して協調領域化する領域
    裏側ペイン:ユーザーではなく支える仕組みにペインポイントが存在
    バランスペイン:複数のステークホルダーが満足していない場合健全なエコシステムではない

    最後の深津さんとの対談が一番面白かった気がする。

  • 著者の本を読んできたので特に目新しい内容ではなかった。機能より意味性の追求は意識し続けないとな改めて理解した。

  • 特に価値の話に関しては、利便的価値と意味的価値で分けられてて、ふとベルガンディさんが述べていた意味のイノベーションを思い出しました。でもベルガンディさんは企業利益にまだ重きを置いてた感じがあったけど、ジャーニーシフトは顧客体験の先の行動変容まで繋がらないといけないから、考える範囲が変わる。
    あと、属性によって分けるのではなくて状況によって分けてターゲティングするっていうのは目から鱗だった。確かに属性は細分化しすぎてて限界だよね。状況で分けたターゲティングを考えるときに、どんな感情が湧き上がるか、本当に正しいか、もっと深いところに理由があるのでは等を考え抜く必要がある。それは分かるけど、果たして考え抜けるのか…フレームワークを使いこなす技術と考える体力が必要そうです。

  • 高知工科大学図書館

  • ・ライダーに「頑張れば稼げる仕組み」で競わせる(仕組みを用意する)
    ・「ストリートスマート」なアプローチ:システムが完璧にできていなくても、「人出で何とかすればOK」とおおらかに割り切って実装を進める
    ・日本でよくみられるのは縦割りに仕組みを構築する仕組みだが、東南アジアでは「パパママストアという既存の業態」の姿を変えず、パパママストアが抱える社会課題を横串で解決する方向に進んでいったこと。
    ・事業や業界、製品を前提にしてしまうと、視点が狭くなり、世の中の景色を変える発想は生まれず、自社の部分最適にしかならない。中心に置くべきは「ユースケース」、つまり利用シーンや生活シーンであるといっており、理想の生活として、「誰もがこうなるとよい」と思えるものを掲げるのが重要。ジョイントビジョンによって生まれたエコシステムをコントロールしようとする
    ・価値を感じるUXやサービスには、「利便性」と「意味性」の2つのレイヤーがあります。「利便性」はその名の通り、不便を便利にすることです。だれにでもわかりやすい課題を解決するのが利便性レイヤーです。解決に向かえば基本的にはだれもが共通して「そのほうがよい」と思えるものが対象です。
    ・利便性が低い地域では人数が大きい一方で単価が安いモデルになる。一方で、欧米や日本のような成熟市場において求められるのは主に意味性レイヤーです。インフラ含めた生活水準が十分に高く、わかりやすい社会的なペインの多くはすでに何らかの形で解決されています。金銭的な豊かさは頭打ちとなっているため、生き方や価値観、趣味などに幸せの方向性が向かいやすくなります。その結果コンテクストの豊かな「意味性」を持つものやサービスが強く求められるため、10万人からそれぞれ100万円集めるようなモデルが中心となります
    ・利便性は共有され、意味性は所有される。利便性は「合理的な指標」で評価される。たとえば、いつでも、どこでも、だれでも、または、安い、早いといったマスでもわかりやすいものです、利便性においては、シェアリングのような共有の仕組みや、APIのような連携の仕組みは非常に有効に働きますし、なるべくオープンに共有・連携されていると効率よくなります。これに対し、意味性は真逆で、所有や優遇など特別感を抱く方向に進むことで価値をどんどん大きくしていく性質を持っています。
    ・意味性で重視されること:どれだけ自分らしさを表現することができたか。自分が特別な立場にあり、いかにそれを周囲に証明できるか。普通の人にわからない価値を理解し、数少なりその価値がわかる人にどれだけ賛同や称賛をされるか。自分が好きなコミュニティーにどれだけ貢献したか。自分の着てきた服のコンテクストやメッセージを理解して受け取ってくれるか
    ・限られた人しかわからない・選ばれない、またはお金で買いたくても買えないといった、優遇や特別感、唯一無二感が意味性につながります。自分一人だけがわかっていればよいかというとそうではなく、同じ価値を理解してくれる仲間や、同じストーリーを追いかける仲間がいることは重要なのですが、多ければ多いほど良いというわけではありません。なるべくクローズドで、なるべく一緒に熱狂し、理解しあえる限られた人数のみを巻き込み、その小さなコミュニティーの中では共有・協力・連携がされたとしても、基本は所有・はいた・独立できることで価値をどんどん大きくしていきます
    ・利便性の領域はサブスクリプション化できる一方で、意味性の領域は「払えるならもっと払って応援したい」とユーザーは考える。
    ・ブロックチェーンにより、コピーや改ざんができなくなることにより、信頼を担保できる。それによりインターネット上でコピーされず本物として流通できるようになり、「情報のインターネット」が「価値のインターネット」に変わっていくのがWeb3の本質
    ・「意味性の付与」ができるようになってくると、「コミュニティの世界観をより大きくするために推奨される行動」が定義され始めます。コミュニティーに貢献するものが発見されると、ユーザーやアクティブコントリビューターの行動があたかも文化や価値観のように方向付けされ、ループとして循環していく
    ・デジタル上で意味性を増幅するようなコミュニティーが多様に発生すると、自分自身のアイデンティティーが証明され、分散した形で持てるようになっていく
    ・顧客価値提供が、「モノや情報の提供」「瞬間的な道具としての価値」から、あり対世効状態を実現させ、行動を可能にさせる「行動支援」に変わっている
    ・行動支援の時代は、顧客にとっての「あなたの会社やサービスとつながり続ける理由」を問い直す必要がある
    ・顧客にとっての「つながり続ける理由」とは、「どのような行動フローを抑え、どのような顧客の成功を実現しているか」を指しており、提供価値の再定義が必要になるケースが多い。
    ・顧客視点の「自分が求める成功に対して、どのようなアクションを可能にしてくれるか」を企業視点にすると、時間軸を長くし、業界の枠を取り払える。顧客からすると様々な選択肢があり、企業からすると同業他社だけが競合ではありません
    ・全く違う業界の事例を持ってくる応用力があると勝ちやすい
    ・検索は「今ある選択肢の中から一番ぴったりなものを探しているだけ」だが、生成は「自分の中の欲望に対して、今までにないものを提案してくれる」

  • ジャーニーシフトとは
    →顧客提供価値が「モノや情報の提供」「瞬間的な道具としての価値」からありたい成功状態を実現させ、行動を可能にさせる「行動支援」に変わっている

    利便性と意味性よ2つの方向でそれぞれ進化している
    それを使い分けて使えるかが重要

  • 大変良い

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