薬は毒ほど効かぬ 薬剤師・毒島花織の名推理 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
- 宝島社 (2022年12月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784299037398
作品紹介・あらすじ
最強の薬剤師・毒島さんが今回挑む事件のカギは大麻!? 毒島さんに最大の危機が迫る!
累計15万部突破! 大人気お薬ミステリーシリーズ最新刊。
薬剤師の毒島さんは、その豊富な知識を活かし、薬にまつわる様々な事件を解決してきた。
山荘で渡された怪しげな種子の正体とは? ハイテンションな女性が家出した本当の理由は?
毒島さんはいつものように鮮やかに謎を解き明かし、同僚の刑部さんとホテルマンの爽太を驚かせる。
そんなある日、毒島さんたちが訪れた山荘に関して、新たに衝撃のニュースが飛び込んできて……。
帯には、薬剤師国家試験の勉強のために作成した、わかりやすい付箋ノートをInstagramに投稿し、人気となったくるみぱんさん(現役薬剤師)のコメントを掲載。
また、くるみぱんさんのとっても可愛い近影イラストも!
感想・レビュー・書評
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シリーズ5作目。
相変わらず薬剤師の毒島さんは、言葉少なに淡々と事件を解決する。
しかも自分中心じゃなくて知らぬ間に解決へと導いて行く。
第一話 毒消し山荘の奇妙な事件
第二話 うつの双つの顔
第三話 カンナビス・クライシス
①デジタル・デトックスの宿泊施設があるというので伊豆山中にやってきた毒島さんたち。
アロマテラピーやヨガを組み合わせたリラクゼーション体験やハイキングなどできるというが、既にあやしい予感。
健康的で美味しい空気を吸って解放するというのは良いのかも…と飛びつきたくなるプランだが。
何ちゃらオイルだの種子だのと言われても…⁇という感じだが。
②爽太の上司の馬場さんがどうやらうつの様子で…。
ここでは、うつ病にも双極性障害があるということに気づく。
たまたまホテルの長期滞在客の女性がそのようで、ちょっとした騒動に。
しかし、心の病は目に見えなくて他人にもわかりずらいうえに自分で何とかしようにもできない。
薬ひとつとっても効果が現れるのに時間を労し、副作用もあるとなると拒否したくなるだろう。
病院まで行くのに二の足を踏むのもわかる気がした。
③ラストで第一話からの繋がりがまるッと解決する。
毒島さんが危機的状況でどうなるのかと気を揉んだが、下手をすることはないわなぁと。
百目鬼社長の前職や奥さんとの馴れ初めに驚いたが、あまりにも自然に告白するので何とも言いようがなく…。
今回は、漢方薬というか特に大麻を含む植物がよく出てきた。
薬を知ることは飲む飲まないに関わらずある程度は、知っていたら便利だと思う。
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〈薬剤師・毒島花織の名推理〉シリーズ第五作。
今回は毒島花織の活躍は控えめ。逆に主人公の水尾爽太が頑張っている。
「毒消し山荘の奇妙な事件」
『デジタル・デトックス』を売りにした伊豆山中の宿にやって来た、爽太・毒島・刑部の三人。だが五月女という男性客は何故か毒島を気にしているようで、爽太は気が気ではない。
ヨガやアロマもこういう使い方をされると妖しさ満載。その結末は…。
余談だが、帰路で『無人島に行くときに薬を一種類だけ持っていけるとしたら』という話で盛り上がる毒島と刑部の薬剤師の話が面白かった。結局一つに絞れず三つになっていたし。
「うつの双つの顔」
あの馬場さんが食欲をなくし気力もなくして欠勤が続いている。シリーズ初期の無茶苦茶な馬場さんはすっかり息をひそめて変わり果てた姿に。
一方で爽太の勤務先のホテルにもお騒がせ客が。彼女は馬場とは逆にハイテンション。だが彼女もまた何かしらの病を患っているらしい。
毒島の知り合いの漢方薬剤師・宇月再登場。全く嫌味の無い誠意も知識もある薬剤師に見える。結局医師や薬剤師と患者もまた相性やいい出会いかどうかというもののように思えてくる。
爽太が懸命に馬場に気遣っているのが嬉しい。
同僚・くるみ同様、わたしも双極性障害については昔「躁うつ病」と呼ばれていたころの知識しかなかった。うつ病とは全く違うメカニズムで起こる病気で治療法も違うということを初めて知った。
馬場が良くなることを祈るのみ。続編では体調が良くなった姿を見たい。
「カンナビス・クライシス」
どうめき薬局に新たに加わった薬剤師がどうも問題児らしく刑部は苛々している。そして爽太は旅行会社の予約サイトの口コミに批判的な書き込みをされて頭が痛い。
だがその二つの事件は爽太をピンチに追い込んでいく。
どうめき薬局の秘密が少し明かされたのは興味深い。これまでミステリアスだった百目鬼社長の人間味が見えてきた。
二話の問題客については希望の光のようなものがあったが、三話についてはどうなのか。家族にこういう人間がいると堪らない。だが本人もまた何らかの問題を抱えているし、その中でどう周囲の人たちと折り合いをつけ社会で生きていくのかは難しい。
そこに手を差しのべる百目鬼や当人を冷静に分析できる毒島は素敵だが、個人的には刑部に近い私としてはどうしても刑部に肩入れしてしまう。
彼女の劣等感も感情も分かるので彼女が今後前向きになってくれたら良いなとも思う。
次回こそ爽太と毒島の関係に変化があるのか、また馬場の体調がどうなるのかに注目したい。
※シリーズ作品一覧(全てレビュー登録あり)
①「薬も過ぎれば毒となる」
②「甲の薬は乙の毒」
③「毒をもって毒を制す」
④「病は気から、死は薬から」
⑤「薬は毒ほど効かぬ」本作 -
シリーズ5作目にしてとうとう麻薬絡みの事件が。
いつかは来るだろうと思ってはいたけれど。
爽太や毒島さんも巻き込まれてしまうが、毒島さんの知識で無事に解決。
解決できると分かっていても面白い。新しく出てくる顔ぶれもよいし、まだまだ期待できるシリーズだ。 -
2022年12月宝島社文庫刊。書き下ろし。シリーズ5作目。
毒消し山荘の奇妙な事件、うつの双つの顔、カンナビス・クライシス、の3つの連作短編。今回もそれなりに面白かったですが、毒島さんの活躍はあまりなく、爽太の大活躍の回でした。マトリなんて言葉が出てきて面くらいましたが、2年くらい前には流行語の感じがあったようで、その後定着したんでしょか?。麻薬取締官って書かないの?。とどうでもいいことが気になりました。 -
シリーズ5作目。
どの作品も中編から構成されているが、5作目も3篇の中編から成る。
1作目では薬局ではなく、休みの日に爽太と毒島が、毒島の同僚の刑部に誘われ、伊豆の山中にあるデジタルデトックスを謳っている宿を訪れることに。
スマホやパソコンなどに支配されている日常から解放されるのはいいなぁ、などと呑気に読み始めていたが、段々と話が怪しい方向へ。
やたらと勧めて来るオイルや、宝探しの景品として渡される種など怪しさ満載。
この流れが3作目と続いていく。
2作目ではやたらハイテンションな女性客の話をメインに、躁うつ病の話を丁寧に描いている。
「双極性障害」など曖昧に理解している人が多い中、今作のように「鬱」と言っても様々な病気があることを丁寧に説明してくれると有難い。
3作目でまた1作目の続きの流れのような話に戻り、世の中には大麻の支持者が一定数いることを改めて知る機会となった。
他の方のレビューにもあるが、今作の内容は重厚であったが、本来の主役である毒島の出番が少なったので、星は少な目で。 -
シリーズ5作目。3作品からなる連作中編。
都会で溜まったストレスを癒やすべく、デジタル・デトックスのメニューを提供する山荘を訪れた先での出来事から始まり、3作夫々に結末がありながら、全てが繋がった内容。
日本には古来より身近な植物でありながら、近代ではタブーとなったモノの背景が物語で上手く語られ勉強にもなる。
探偵役の薬剤師毒島花織の豊富な知識と経験に裏付けられた冷静な判断による推理が今回も活躍。
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シリーズ5作目。今回は大麻・鬱がメインでストーリーが気になると共に勉強になる。躁鬱って鬱の症状と思ってたのに双極性障害で鬱と別物というのが目から鱗レベルに初耳やった。今回は社長の過去も知れたり他にも色々びっくりなことが多々あり
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薬剤師・毒島花織と、ホテルマン・水尾爽太のシリーズ5作目。
今回、毒島さんは縁の下の力持ち的な存在?
一作目では、私個人的にちょっと頼りないと思っていた爽太だが、とにかく親切だしよく働く。
ホテルマンってそこまでするの?というツッコミもしたくなるけれど、それで面白くなるのが、小説・漫画・ドラマである。
爽太について、ルックスは平均的だが、誠実で純粋な人柄・・・などというイメージを勝手に思い描いていたけれど、今回の某宿泊客の感想によれば、「垢抜けていて恰好いい感じ」ですって!!
「薬も使い方によっては毒になる」が、このシリーズの共通テーマだと思いますが、今回は「麻薬」
医療用としての利用について詳しい説明もたくさん載っていたけれど、私は、末期癌の痛み止めにモルヒネが使われる事くらいしか知らなかった。
大麻に関する本のタイトルなど、宇月啓介がメインの漢方薬局のシリーズとシンクロしている。
爽太の先輩で、今まで仕事においても、さまざまな事件においても深い関わりがあった馬場さんがちょっと大変で・・・
これから新メンバーが加わったりするのでしょうか?
とりあえず次回も楽しみ!宇月さんのシリーズも!
第一話 『毒消し山荘』の奇妙な事件
第二話 うつの双(ふた)つの顔
第三話 カンナビス・クライシス