読書の歴史を問う: 書物と読者の近代

著者 :
  • 笠間書院
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784305707369

作品紹介・あらすじ

読者、読書の歴史をどうやって調べ、学んでいけばいいか。
何のためにそれを学び、そこからどういうことが分かるのか。
読書の歴史についての学び方、調べ方を考える書。

書物の出版、検閲、流通、保存は、読者の歴史とどうかかわってきたのだろうか。
「昔」の読書を探ると、「今」が見えてくる。
現在とは異なる時間、異なる場所の、読者や読書の魅力をも伝える書。

【書物が読者にたどりつき、読まれていくプロセスに関心を向け、その歴史をとらえていくこと、そのための手立てや、そうした問いによって開けてくる可能性を示していくこと、それが本書の役割である。同時に、これまでになされてきた自他を含めた読書にかかわる研究の成果を見直し、それらを互いにつながりあった方法として体系的に示していく試みでもある。】......「おわりに」より

感想・レビュー・書評

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  • 本の本
    読書

  • 読書をめぐる様々の観点を取り上げる。個々の話題について深く論じるというより、たくさんの論点レビュー兼文献ガイドとして。
    ・p173「書物を送るという活動は、その書物を扱い、維持し、提供していくという活動と結びつかないかぎり、読者とのつながりをうまく作り上げていくことができない。」物理的な「送る」だけでなく、電子化された本についても同じことが言える。

  • 所在: 展示架
    請求番号: 019/W12
    資料ID: 11401631
    選書担当: H. A.

     普段から読書をしている人もしていない人も、「読書する」ということがどのようなことであるのかと問う人は少ないのではないか。本書は、「読書」という行為について考える、数少ない本のうちの一つである。本書では、読書という行為を、「本の内容を理解するプロセス」と「その本が読者の元までにたどりつくプロセス」という二つの視点から分析する。また、その二つの視点から読書の歴史を紐解くことによって、私たちが普段行っている「読書」という行為を、見つめ直す機会を与える。

  • 読書、という行為について、いくつもの視点から考察、分析するための入り口集。

  • 【配置場所】工大選書フェア【請求記号】019.02||W【資料ID】91141622

  • 読書を、書物が時空間を移動して読者に「たどりつくプロセス」と、読者がそれを読み、「理解するプロセス」に分けて考える。それぞれのプロセスをさらに細分化し、書物と読者とを結ぶ「あいだ」にいかなる人や組織の活動が存在するのか、またその読書には、どんな不自由さが生じているのかを捉える。

  • 2014 8/18パワー・ブラウジング。
    出ると耳にしたときから読みたいと思っていた、和田先生の本。やっと読めた。
    読書の歴史を如何に研究するか、そのさわりを色んな角度から紹介していく。
    読書を「読者が書物を理解するプロセス」と、「書物が読者にたどりつくまでのプロセス」分けて考える、従来は専ら前者の理解のプロセスに注目するものが多かったが、本書は後者に分量を多く割いているのが面白いところ。

    ○2章は理解のプロセスを如何に研究するかの話

    ○3章・読書の場所の歴史学
    ・読書の場・・・たどりつくプロセスの末端であり理解のプロセスに影響するもの
    ・鉄道
    ・監獄、軍隊・・・
     ・利用の不自由な場での読書の歴史を追う意義
    ・図書館
     ・読書を制限し、方向づける場としての図書館
     ・「図書館史を評価したいのは、それが読書の歴史、すなわち読者への書物の流れがいかに形成され、あるいは制限されてきたかを教えてくれるからである。あるいは、こうした読者への書物の流れという観点から、これまでの図書館史研究の成果を今一度とらえなおし、整理していくことも可能だろう」(p.72)
     ・「図書館が集めていない、保存していない空白が蔵書に必ず生じること、そしてその空白への意識的なまなざしを作り出していくこともまた、図書館の重要な役割として考えておく必要があろう」(p.74)
     ・移民地の読書

    ○4章・書物と読者をつなぐもの
    ・書物の仲介者・・・米国⇔日本の書物の行き交いを仲介した人物らの話
     ・角田柳作、チャールズ・E・タトル

    ○5章・書物と読者をつなぐもの
    ・書物の販売・流通史
    ・委託制度(返品可能な制度)の成立にかかる話のあたりは授業でフォローしきれていなかったので取り入れたい
     ・さらに引用元には小田光雄さんとかも
    ・『キングの時代』より:出版統制によって効率的な流通システムができあがった戦時統制下は出版の好況期だった
    ・教科書の話

    ○6章・書物の流れをさえぎる
    ・検閲の話
     ・検閲だけが書物の流れをさえぎるものではない
     ・検閲されて読者にたどりつけなかった書物は、その後いずれかの時点でたどりつけたのか?

    ・戦前・戦中(内務省)、戦後(GHQ)の検閲と検閲された本がどこにいったか
    ・教科書検定

    ○7章・書物の来歴
    ・書物の移動・来歴
    ・その調べ方
     ・書物そのものから・・・蔵書印等
     ・寄贈情報等、機関の資料や個人の記録・回想録
    ・失われる書物・・・マンガの所蔵/明治大学関係に触れている

    ○8章・電子メディアと読書
    ・CiNiiを使って近代文学研究(「赤い鳥」関係)の論文を集めようとして、電子化されているものに絞り込んだ結果、まともな論文を読まなかった学生の挿話
     ・おお、これこの先、日本の人社系論文が電子化されていないことの問題に触れる際に引用しよう
     ・インタフェースの問題への指摘・・・「電子化されている/されていない」で絞込ができることが、それが重要なことというメッセージになっている

    ○9章・読書と教育
    ・国語科教育と読書
    ・アーカイブズ教育
    ・メディア・リテラシー

    ○10章・文学研究と読書

    ○おわりに

  • 読書は書物が移動して読者にたどりつくプロセスと、その書物を読者が理解するプロセスによって成立しているが、読む場所はこのたどりつくプロセスの末端、書物と読者がつながる重要な地点。

    人文科学の研究領域では最新の研究成果のみが重要なのではなく、むしろ過去に明らかになった事例の蓄積こそが重要であり、古い論文の利用価値が高い。それをカバーするためには莫大な過去の論文の電子化が必要。

  • 検閲については早く読みたいな。此れから酷くなった時に、戦うヒントがあるかも知れないから。。。

    笠間書院のPR(版元ドットコム)
    http://www.hanmoto.com/bd/isbn978-4-305-70736-9.html

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著者プロフィール

1965年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。早稲田大学教育・総合科学学術院教授。『読むということ』(ひつじ書房、1997)、『メディアの中の読者』(ひつじ書房、2002)、『書物の日米関係』(新曜社、2007)、『越境する書物』(新曜社、2011)、『読書の歴史を問う』(改訂増補版、文学通信、2020)、『「大東亜」の読書編成』(ひつじ書房、2022)、『職業作家の生活と出版環境: 日記資料から研究方法を拓く』(文学通信、2022)などがある。

「2023年 『東亜文化圏 復刻版 第2回配本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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