作品紹介・あらすじ

黎明期を背負った建築家35人の評伝。

コンドル、辰野金吾から村野藤吾まで、日本の近代を生きた35人の建築家の生涯と作品を、これほどわかりやすく丁寧に伝える本はこれまでなかった。
世界的に注目される現代日本の建築界の源泉はここにある。――藤森照信

感想・レビュー・書評

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  • 追記)飛鳥山公園にお花見に行って田辺淳吉の青淵文庫と晩香廬を観る。青淵文庫は確か写真がこの本に、でも自分メモに田辺の記述はないorz。窓枠のタイルが南欧風でモダンな箱型の建築に色彩感を与えている。晩香廬は清水建設技師時代の作品。和と洋とがグラデーションのように入り混じり、煉瓦煙突も軽快。
    鹿島出版会、高額、ハードカバーなので専門的で無理かもと警戒したが、実はカバー裏で藤森先生が褒めてる通り、丁寧で分かりやすい本だった。巻末の建築家全体年表、現存建物の所在地、個人別年譜、執筆者略歴などが欲しいと思ってた情報が充実しており、特に年表はこの前自分で作ったのより全然いいものでありがたい。35人の建築家評はそれぞれ8ページずつとコンパクトにまとまり、写真も豊富で解説もしっかりしていて、負担にならず読み進められる。1人の建築家にほぼ1人の執筆者だがレベルも揃っていてバランスも良く、とにかく編集者の力量がすごい本。監修の丸山雅子さんという方が並々ならぬ力量の持ち主と見ました。丸山さんご自身は松田軍平の項を執筆されています。
    執筆者それぞれ担当建築家への造詣深く、冷静な目で分析的に記述しており、自分語りに陥ってない(井上章一先生の本はつい自分に寄せてたので)が、リスペクトがあるので、それが出てきちゃうところは時に微笑ましくもあり(片山東熊の浅羽英男氏)、熱くもあり(伊東忠太の倉方俊輔氏)。ディスられた建築はやはり面白くて、私の中では渡辺仁が最右翼だったのだが、帝国ホテル新本館の高橋貞太郎、日本武道館と京都タワーの山田守は新たな発見。山田は晩年の多忙期ということもあって本当にイマイチなのかもだが高橋は犬丸と組んだ確信犯的なところもあり興味をそそられる。村野藤吾も丹下との比較において言われちゃってる。モダニスト面倒な団体だな。あと堀口捨己の項、日本的な建築とモダニズム、帝冠様式と数寄屋造りの比較、時代との関連性など非常にわかりやすく、最近気になっていたことがかなりスッキリ氷解した。感想を書こうと改めてめくってみたけど、見れば見るほど良書。

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著者プロフィール

丸山雅子(まるやま・もとこ)
建築史家/1991年、東京大学工学部建築学科卒業。1998年、同大学大学院博士課程単位取得退学。博士(工学)。主な研究:スパニッシュ様式に関する歴史的研究、お雇い外国人ウォートルス兄弟の研究など。

「2017年 『日本近代建築家列伝 生き続ける建築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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