仮病の見抜きかた

著者 :
  • 金原出版
4.04
  • (21)
  • (11)
  • (17)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 226
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784307101974

作品紹介・あらすじ

「誰かが捨てた瞳の奥に色をみつける仕事がある」
●嘘を暴いた先に何があるのか。現役医師が放つ新ジャンルの医学書ノベル
仮病をはじめとした医療現場でみられる嘘や偽りについて叙述した10つのショートストーリー。
現役の新鋭医師が描く医学書でありながら小説という異色の作品。
医療現場をとりまく仮病と嘘と偽りに医師はどう立ち向かっているのか。
医学書でありながら小説という、まったく新しいタイプの解説書!

●エピソード「クロ」ほか、10篇の短編小説が織りなすリアル医療
突然の酷い腹痛を繰り返す「捨て猫のような眼」をした若者。
かつて暴走族・ブラックパンサーのメンバーだった彼は、その粗暴な風貌と振る舞いから周辺の病院のブラックリストに入れられてしまう。
多くの医師や看護師はその腹痛自体が嘘で、「仮病」ではないかと訝しんでいた。
そんな中、他院から半ば押し付けられるようにして、彼は「私」の外来を訪れる。
総合内科医である私は彼の話を聞き、ある一つの仮説を導き出す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「仮病」

    人生で一度はこの言葉に遭遇したことはあるだろうが、果たして、そうした仮病に対して、医師がどのように対応しているのかは知らなかった。

    私たちが「仮病」と考えているものは、医学的には全て「仮病」というわけではなく、心因性疾患や虚偽性疾患、といった基準のある診断もありうるのだそう。

    10の短いエピソードを通してでてくる、さまざまな特徴的な患者。多くの医者が匙を投げたり、診断ができない中、どうアプローチするのかを、謎解きのように進めていく。

    当事者でなく、これらがフィクションであると知っているから面白い。しかし、実際そうした場面に遭遇したときに、基質性と心因性をどうやって見抜くか、すごく悩まされるだろうことが、文の中からひしひしと伝わってくる。


    『語らないなら患者のなすことを情報として収集する。その方が身の困りごとを見抜ける。あることないことといい、ないことをあると言うのが人間である。(P26)』
    医学においても、五感をフル活用した観察は役に立つ。細かい分析が必要であるからこそ、より研ぎ澄まさなければならない。


    「仮病」である、と診断する以上に、なぜ「仮病」を患者が作らなければならなかったのか、そこに利得があるのか、あるとすればそれは何か。そこまで踏み込んで考える必要がある。


    とはいえ、多忙を極め、命を救うことに力を注ぐ医師にとっては、どう優先順位をつけるかは難しい。

  • タイトルから受ける印象とは異なり、冒頭にも書いてありますが、患者との向き合い方で、ズバッと解決するのではなく、こう全体的に包みこむような感じがとても読後感が良い本でした。

    心因性は、心因が大いに関与する内科的な身体疾患
    の後に「症状がなくなってしまったら困ってしまう事情があるかもしれないのだ」には、本当に唸ってしまった。

    最大級の皮肉とも書いてありましたが、患者の嘘を見抜いた所で即解決とはならないのが「仮病」の難しいところで、患者の嘘は見抜いていけないのである、という感覚の医師に診てもらえた患者は幸せだな、と思いました。

    医療に関連した職業の人だけでなく、むしろ一般の方に読んで欲しいと思います。

  • 「仮病」を見抜くというタイトルから医師のテクニカルな話に終始するものと思っていた。
    そのような解説もあるものの、総じて仮病を患う者の心理やそこに至る背景をどう汲んで、自発的に改善するかのアプローチが示されている。

    「仮病」を「仮病」として断罪してはならず、「仮病」を患う者にもそうするだけのメリットがあるということが根底にある。
    医師の役割は診断を付けることではなく、患者の困りごとを診ていくこと。

    実は何気ない患者の仕草や目線、声のトーンなどに様々なヒントがありそこから導かれる結論はまるでミステリーを解く名探偵さながら。
    誰にも負い目を負わせることのないスマートな振る舞いは参考にしたい。

    医療現場の苦悩も垣間見えた。

  • 仮病を暴く方法ではなく、「患者さんのことをよく知ること」を指南。

    ● 多くの医療機関で「仮病」とされた患者さんの話

    70枚以上の紹介状。

    人はあまりに辛いと認知が歪む。
    自分で自分の状態がわからなくなる。
    本当に辛いことほど言葉に出して言えないものだ。

    こんなことを言う人が仮病のはずがない。
    仮病の人は、自分のことしか考えないから、本当の意味で、相手のことには関心がない。


    ● 臨床からみた「仮病」の概念
    疾病利得の存在
    金銭授受のような反社会的なものから、孤独の回避や学校・職場からの逃げ

    症状・症候は病的だが診断名がつけられないもの
    医師は仮病とは呼ばないが、こういった診断のつかないものを仮病だと思ってしまう人もいる、

    「仮病」を見抜くよい方法は、患者の全く意識が働いていないところを見ること。要は無意識でいるところを垣間見る。待合室で待っている様子、何気なく荷物を置くしぐさ




    ●学ぶ

    どこにいたって勉強はできる。書物と患者があれば。だから世界のどこにでもあっと驚く臨床力を持った医師は(隠れて)いるのだと思うとわくわくする。



  • 一泊という期限付きでしっかりとは読めていない
    専門的な医療の知識を要するものであり、診断名がつくまでしか描かれていないので、非医療関係者が読み物として読むにはかなりつまらないと思う
    数年後にまた読み返したい

  • 【学内】
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000121997
    【学外】
    https://elib.maruzen.co.jp.iuhw.remotexs.co/elib/html/BookDetail/Id/3000121997
    最初に利用する際は、eリソースコネクトへログインし、上記URLを再度クリックしてください

  • 【学内】
    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000121997?274

    【学外】
    https://elib.maruzen.co.jp.iuhw.remotexs.co/elib/html/BookDetail/Id/3000121997?274

    最初に利用する際は、eリソースコネクトへログインし、上記URLを再度クリックしてください

  • 本書の題名をわかりやすくすると『仮病(と思われてしまうような心因性疾患)の見抜きかた』になるでしょうか。小説風病例報告という新しい形のため、医師側の心理描写もあり面白く読み進められます。
    「症状が治って欲しいのか。もし治ったらどうなるのか。(略)症状がなくなってしまったら困ってしまう事情があるのかもしれないのだ。」
    という文には、精神科医ならまだしも内科医が書いている驚きがありました。素晴らしいですが、今は何に対しても一段階、いや三段階ほど上のクオリティの仕事が求められる大変な時代だと感じます。

  • タイトルから内容を誤解していました。

    仮病・詐病の患者を見破る方法論的な話かと思っていましたが、
    一見、仮病・詐病だと疑わしく見える患者が、実際は○○の病気・症状でした、みたいな内容でした。

    ミステリー調?で面白く読み進められました。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

國松 淳和(医療法人社団永生会南多摩病院総合内科・膠原病内科部長)

「2021年 『オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

國松淳和の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×