夢を与える

著者 :
  • 河出書房新社
3.13
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本棚登録 : 2603
感想 : 516
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309018041

感想・レビュー・書評

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  • ひび割れそうになりながらも紙一重のとこで持ちこたえていた堰が、一気に決壊するようなそんな印象。


    ストーリーとしては、どこかにいそうな少女タレントの話で、語り口調も淡々として進む。何かが壊れそうだけど、大事は起こらない、いつまで経ってもどちらかというと平板なまま。

    でも、きっと何か大変なことになる、そんな雰囲気だけを漂わせて。敢えて中盤まで抑えて抑えて作者は書き進めていったんじゃないかと感じる。それだけ主人公の夕子というキャラクターを隅から隅まで形作るのに時間をかけていったんだろう。


    『中途半端な平和は一番きつい。狂った毎日に狂わされないようにする闘いが唯一私をまともにしていたのに。』


    2015.7.1

  • 120308

  • 長いけど、まあ読ませられた感じはしたかな。ただ、瞬間的に表現が上手い! と思うフレーズは多々あったけど、全体的に見ればさほど上手いとか綺麗とか、どうこう感想は持たなかったし、ストーリーも……重苦しいものは心に残ったけど、そのウェイトが少し軽かった印象。期待して読み進めたから、どっちかと言えば残念…かなぁ? 残念! って言い切るほどじゃない。

  • WOWOWで映像化されると知って、久々に綿矢りさを読む。少女の芸能界ストーリーかと思っていたら、物語の当初の母親が父親を引き止めるためとった手段が、この少女も恋する男を引き止めるために取った手段に重なってくる。自身が夢を追うことによって夢を与えられなくなるという世界、最後は残酷なエンディングとなってしまった。なんとなく宮沢りえを頭に浮かべながら読んでしまったが、ちょっと失礼だったかも、しかしスキャンダルも売り物にする芸能界、これで終わったとするならば主人公があまりにもかわいそうに感じた。

  • 一度図書館で借り、もうすぐドラマ化されるというのでハードカバーのものを古本100円で購入。
    表紙は可愛いけども、題名が意味深………というのが初めて見たときの印象だったけど、読むとこれがどんどんハマってしまう。
    少女の所謂「性の目覚め」というのがあまりにも生々しくって、けれどそれを馬鹿らしいで一蹴できないのも事実。
    あまりにも盲目的で凄く自分の欲に忠実なんだけど、その夕子に圧倒されないくらい強烈なまでに狂ってるお母さん。
    夕子の職業である「夢を与える」ということが、実際はどれほど現実的でどれほど儚いものであるかをまざまざと書いているからこその生々しさ。

    WOWOW加入してないから凄く残念なんだけど、小松×菊池はまさにぴったりだと思う!

  • 図書館で借りた本。
    主人公の夕子は、幼いころから顔がかわいらしく、モデルを経て、芸能界で人気もあった。
    そんな夕子の生まれる前から18歳までの話。
    生まれながらにしてスターの人生だった夕子が、知らなかった大人の世界を知るにつれ、純粋でかわいいだけの少女ではいられなくなっていく様子がいたたまれない。
    最後は、なんとか立ち直ってほしい気持ちでいっぱいでした。

  • えっぐい!!えぐい!!
    綿矢先生はほんとに「かわいくない」女の子を書くな~~といつも思いますが、夕子ちゃんはその中でも際立ってかわいくなくて、かわいそう……

  • 怖い。
    芸能界怖い。
    一人の女の子をここまでにしてしまう芸能界ほんと怖い!

  •  何かと話題を振りまいた前2作。個人的には、ストーリーが散漫な感じで、あまり印象に残っていないのですが、芥川賞受賞第一作になるこの本は、さすがに引き込まれました。

     芸能界といううねりの中に飲み込まれている母子を、主人公の成長とともに描いていく文章は、抑揚がきいていて、読みやすく、とても魅力的です。

     主人公とからんでくる母との関係、父との関係、そして友人。様々な人間関係を盛り込むことで、主人公が本の最後で決断することも、自然に思えてきます。

     『夢を与える』このタイトルも、なかなか含みがあっていいですね。私自身は気になりませんでしたが、最初のほうで主人公がひっかかるあたり、後半への伏線としてきいています。

     それにしても、二十歳をやっとこえたばかりの女性が、これほどの文章を書くとは、すごいなあ。前の2作を読んだときには、40歳のおじさんにはよく理解できないと書きましたが、この本で筆者が書こうとしたことは、41歳の私にも少し理解できたような気がしました。

  • 母親が父親の愛をつなぎとめるために産まれた女の子、それが夕子だった。
    夕子は幼い頃から愛らしく、小さい子用の通販カタログのモデルや大手チーズ会社のCMなどの仕事を経て、高校入学を機に、爆発的にブレイクする。誰かに「夢を与える」有名人としての生活、初めての恋、そして転落。

    子役から成長してブレイクする芸能人の女の子の話。業界の話というより、一人の女の子の人生を淡々と綴っている。両親の不仲におろおろし、知人の死に茫然自失になり、海や観葉植物に感動し、突然のブレイクでも周囲の人への感謝の気持ちを忘れない。そんな、純粋で良い子ちゃんな体でずっと物語が進んでいくのだけど、エゴイズムや優越感、あざとさみたいなものが隠しきれずに地の文にもれてるところがとてもいい。
    結末はザ・バッドエンド。あらゆるところに別のエンディングに分岐できるフラグになるものが潜んでいるので、ノベルゲームにできそう。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

綿矢りさの作品

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