憤死

著者 :
  • 河出書房新社
3.37
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本棚登録 : 1286
感想 : 234
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021690

感想・レビュー・書評

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  • 4寄りの3。
    面白くないとかじゃない。怖い。怖すぎる。

    可愛いフォントで”憤死”と書いてある表紙に、リボンとドッド模様の見返し。
    なのに、怖い。
    不意打ちすぎる。

    特にトイレの懺悔室は、結構トラウマになりそうでした。

  • 表紙を開くと目に入るリボンのペーパー。
    紙もの好きにはたまらない。
    カバーをとると別の楽しみもある。

    このピンクのかわいらしい包装紙の柄は
    意外と綿矢さんのイメージにしっくりくる。
    (意外に、というのはわたしのなかで
    綿矢さんはかわいいイメージよりもきれいなイメージなので)

    プロローグのようにみえる「おとな」という作品に
    小さく驚き、読み返す。
    このまま一冊続いていくのかと思ったら
    まったく別の作品だった。

    どことなく推理小説っぽい。
    え、なに、どうなるの?と
    手に汗握るような感覚と似たようなものがあった。

    トイレの懺悔室なんて
    恐くなりました。
    (タイトルからして怖いけど)

  • どこにでも、意地悪な人はいる。

    年端もいかない少女に向けた興味本位の悪意、懺悔という形を取った恐ろしい告白と甘い餌で他者をコントロールする悪意、成金で自己陶酔の激しい不美人な同級生を観察し続ける悪意、人生ゲームに倣い、少年たちに将来陥る危機を予言する悪意。

    「世にも奇妙な物語」のように、どこか不気味で歪な短編集。

  •  初・綿矢りさ。4つの連作短編集。冒頭の「おとな」を除いて、いずれの作品も小学校高学年〜中学校という時期のエピソードを大人になった主人公が振り返る形式で描かれる。人生において記憶に強く残っている人間関係やエピソードは誰にでもあるわけだが、その記憶の中の人物像と、それを回想している今の現実とのずれに焦点が当たっていて面白い。
     自分の思っている「他人の人物像」って、記憶の曖昧さと裏腹に「こういう人」という思い込みは強固だったりする。そして「憤死」のように、学生時代の個性的なキャラがさらにパワーアップしているなんてこともある。女性が主人公の「憤死」は、そういう意味で綿谷さんらしさ全開の悪意と皮肉に満ちた、それでいて嫌みじゃないむしろ爽快なストーリーで、これが彼女の真骨頂なんじゃないでしょうか。まあ、彼女自身の外見のアイドル性と作風のギャップにそのままマッチしてるし。
     一方で、男性が主人公の2作は、ホラー要素満載で、そのまま「世にも奇妙な物語」になりそう。「人生ゲーム」の世界観は結構好き。でももう一歩かな。

  • 大学生のとき、知り合ったばかりの女の子が
    「ボニファティウス8世って、憤死したんだよ。怒って死ぬってすごくない!?」と興奮気味に言っていて、
    今も仲良い彼女に薦められて読みました。笑

    表題作の「憤死」は、「あー、こうゆう女の子たちいるだろうなぁ・・・程度の差はあれ」
    と思いながら読みました。
    人間の醜い心を少しユーモアを交えながら描写するのがうまいなぁ、といつも思う。

    「トイレの懺悔室」はちょっと怖くて、
    「人生ゲーム」も怖いんだけど、興味深かったです。

  • おとな
    トイレの懺悔室
    憤死
    人生ゲーム


    装丁を見て、いつものような痛い女子のお話かと思っていたら、ホラーというかファンタジーというか、世にも奇妙な物語にありそうなお話でした。

    この中だったら、やっぱり憤死が一番好きです。
    女版スネ夫を冷静に見守る主人公。
    最初は復讐?と思ったけれど、いい具合に裏切られました。
    久しぶりに再会した佳穂の格好が痛々しいけれど、指摘できず、意図してのものなのだと気づいて行く様子とか、三階から飛び降りるシーンを想像するところ(しかも、ちゃんと着地する)とか。こんな風に、あんまりにも突き抜けられちゃうと、惹かれてしまう…のだろうか。

  • かわいくてユニークな装丁と「人生最大の恋に破れた」的なキャッチコピーから想像する内容からは、かなり斜め上をいっていた表題作でした。ほかの2編に比べるとそれでもまだ「作者らしい」といえるお話かもしれませんが。読んでいて、こういう話も書くんだと意外にも感じました。

    表題作は、まさに憤死という言葉に相当するやるせない憤りをただただ自分に向かわせた女性のたくましさ、傍若無人さが、ここまでいくともうすがすがしいくらいで、敬愛をいだく主人公とかなり同調しました。
    もうある意味、素敵。隣にずっとはいてほしくありませんが・・・!

    「トイレの懺悔室」と「人生ゲーム」ともに、後味がよろしくない、ホラーめいたお話。とくに前者は人のいやな恐ろしさに満ちていて、ぞっとする感じがしました。

  • 表紙の文字と色のインパクトよ!と思ったが、読んで納得。
    なるほどピンクでポップで憤って死んじゃうような(または踏みつけても死なないような)女性が語られる「憤死」。
    他3篇。
    人生ゲームが家にあってずいぶんやったけど、当時から子供が売れるってどうなの?と思わないではなかった。その微妙な違和感を思い出した。
    すごい濃い怪しい空気を自分の周りに作る短編集でした。

  • じわじわ怖い短編4作。綿矢りさ、リアルな人間と見せかけてちょっとデフォルトした愛すべき(?)キャラクターを書くのが上手い。文体は輪をかけて上手くなってるけど無色透明、なのに常に澱のようなマイナスの感情を含んでいるイメージ。「おとな」と表題作の「憤死」が好きだった。「トイレの懺悔室」は何となく乙一を連想する。「人生ゲーム」はテーマとしては好むところだけどこの一冊の締めとしてはちょっと意外な感じ。

  • 男性目線の話はやっぱりしっくりこなかったんだよね~憤死は本当に面白かった。
    女子って、一つ一つの会話や目線や仕草全てが彼女たちを構成する意思であり要素で、そういうものへの機微の表現がすっごいうまいんだよね。

著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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