- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309026374
作品紹介・あらすじ
第158回芥川賞受賞作、第54回文藝賞受賞作。リズムあふれる文体で新しい「老いの境地」を描いた。
感想・レビュー・書評
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R2.7.17 読了。
出だしの東北弁と独り言に驚く。桃子さんの幼かった頃の話や桃子さんが周造さんに惚れて結婚した話や老後や死について考えていることなどなど。
読みながら、自分自身も老いるし、いつかは死んでいくよなとあらためて考えさせられました。
また、人類の歴史を東北弁で詩のように語っている部分があるのですが、その部分が味があって好きですね。
最後は春風のような終わり方で良かった。
・「他人には意味なく無駄とも思えることでも夢中になれたとき、人は本当に幸せなのだろうとも思った。」
・「どこさ行っても悲しみも喜びも怒りも絶望もなにもかにもついでまわった、んだべ。それでも、まだ次の一歩を踏み出した。ああ鳥肌が立つ。ため息が出る。」
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こっとんさん、初めまして。
フォローやいいねをありがとうございました。
私はこの作品の映画があることは知らずに本の方を読んだのですが、その...こっとんさん、初めまして。
フォローやいいねをありがとうございました。
私はこの作品の映画があることは知らずに本の方を読んだのですが、その後こっとんさんのこのレビューを読んで、「絶対映画も見たい!」と思いさっそく配信サービスで視聴しました。
決して簡単に「面白い」とは言えないこの小説の、実はほのかに「面白い」ところをうまいこと掬い上げて、「面白い」だけじゃない味わい深い映画にしてくれたのだなあ〜と、大満足でした。
↑…と、なにやらエラそうな感じになってしまいましたが(汗)、「映像も原作も素晴らしい作品に出会えるととっても幸せ」に私も同感です!映画の感想書いてくださって、きっかけありがとうございました♪
よろしければ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。2022/10/15 -
akikobbさん、はじめまして。
こちらこそ、フォロー、いいねをありがとうございます♪
この作品、小説、映画で違う味わいでそれぞれ良かった...akikobbさん、はじめまして。
こちらこそ、フォロー、いいねをありがとうございます♪
この作品、小説、映画で違う味わいでそれぞれ良かったですよね。
映画の監督さんはこの原作をこんな風に感じ取ったのかぁ‥‥と自分にはない感性になるほど〜と思ってしまいます。
それと同じようにブクログの皆さんのレビューを読むと、そんな読み方があったかぁ‥‥と気付かせてもらえます。
一つの作品をたくさんの方と共有できるこのブクログの場、とても貴重ですよね!
こちらこそ、これからもakikobbさんと色々な作品で交流していただけたらなぁ、と思います。よろしくお願いしますね♪2022/10/16
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早くも「今年一番の収穫かも」と思わせる傑作と出合いました。
昨年の文藝賞受賞作。
作者は63歳の新人、若竹千佐子さんです。
どんな作品かと言うと、「老いるのも悪くないかも」と思わせてくれる作品です。
なんて書くと、お涙頂戴の感動物語だと思われるかもしれません。
のんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのんのん。
全力で否定します。
東北弁が唸りを上げて炸裂し、柔毛突起どもが暴れまくるのです。
何のことか分かりませんね?
順を追って説明いたしましょう。
主人公の桃子さんは75歳。
既に最愛の夫を見送り、2人の子供を育て上げ、都市近郊の新興住宅街で一人ひっそりと暮らしています。
代わり映えのしない毎日ですが、桃子さんの頭の中には様々な人格が棲みついていて(これを「柔毛突起」と呼んでいます)、しょっちゅう井戸端会議を開いています。
しかも、東北弁で。
何故、東北弁かというと、桃子さん自身が岩手県の出身だからです。
桃子さんは田舎にいたころ、農協に勤務していました。
農協の組合長の息子と縁談も決まっていましたが、東京五輪のファンファーレに押し出されるようにして故郷を飛び出したのです。
そして、既に他界した夫と運命的な出会いを果たすのです。
老境にある桃子さんは、愛とは何か、自分の人生とは何だったのか、としきりに問い詰めます。
手垢の付いた回答を引き出すと、柔毛突起どもが途端に暴れ出します。
「おめだば、すぐ思考停止して手あかのついた言葉に自分ば寄せる。何が忍び寄る老い、なにがひとりはさびしい。それはおめの本心が。それはおめが考えたごどだが。」
いや、このやり取りが実に愉快で、痛快なのです。
ほぼ全篇、こんなふうに賑やかな東北弁で饒舌に語られます。
取り立ててドラマチックな展開はないですが、頬の緩む場面あり、吹き出す場面ありで、「ああ、この世界にずっと浸っていたいな」と惜しむような思いでページを繰っていくと、最後は「あれ? 俺、もしかして泣いてる?」ってなるんだから、実に鮮やかな手並みと言うほかありません。
それに若竹さんたら感性が実に若々しくて、擬音の使い方も思い切りがいいし、はみ出すことを恐れない、というか積極的にはみ出していくんですね。
作中の冒頭で紹介される、ジャズを聴いているうちに丸裸になって踊っていたなんてエピソードは、これは若者の感覚でしょう。
ほんと脱帽です。
これだけの才能があれば、もっと早くデビューできたのではないかと思ってしまいますが、若竹さんの中では本作を著すまでに一定の年月が必要だったんでしょうね。
まさに「機が熟した」というべき、その一瞬を捉えて放った閃光のごとき作品です。
若竹さんがこれからどういう作家人生を歩まれるかは分かりません。
ただ、この作品を世に残せただけでも、生まれてきた甲斐があるというもの。
羨ましい限りです。
これから日本は高齢化社会の長い長い下り坂を下って行きます。
下り坂なんて書いたら、「失礼な」と思われる向きもあるでしょう。
あのさ、そういう「常識」をいったん脇へ置こう。
下り坂はネガティブだっていう思考が前提にあるから、そう思うんよ。
そうじゃない。
下り坂の先には、確かに雲はないけれど、道々、野に咲く花や味わい深い石を見つけられる悦びがあると思うんだ。
さあ、希望を持って老いよう。
桃子さんと一緒に。
※蛇足ですが、本作は、今度の芥川賞ノミネート作。
ぜひ受賞して欲しいものです。-
suenaganaokiさん、返信をありがとうございます!
読みました。
映画も観ました。
素晴らしかったです。
好きすぎて文庫版も...suenaganaokiさん、返信をありがとうございます!
読みました。
映画も観ました。
素晴らしかったです。
好きすぎて文庫版も購入してしまいました。(解説が町田康さんです。なるほど!)
これもsuenaganaokiさんの愉快なレビューのおかげです。
感謝します。
2022/01/13 -
5552さん、映画も見たのですね。私は見てないです。羨ましい。私は町田康さんの大ファンです。これからも良い本と出合えるといいですね。私も素敵...5552さん、映画も見たのですね。私は見てないです。羨ましい。私は町田康さんの大ファンです。これからも良い本と出合えるといいですね。私も素敵な本との出合いを楽しみにして生きています。共に素敵な本を探しましょう。2022/01/14
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suenaganaokiさん
たびたび失礼します。
映画では桃子さん役が田中裕子さんが素敵でした。
suenaganaokiさ...suenaganaokiさん
たびたび失礼します。
映画では桃子さん役が田中裕子さんが素敵でした。
suenaganaokiさんの本棚を拝見しました。
私も注目している武田砂鉄さんと今村夏子さんがたくさんある!と喜んでいます。
これからもレビュー参考にさせてください!
お互い、素敵な本と出合えるといいですね。
2022/01/14
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いろんな自分が、ふとしたきっかけで、心に湧いてくるっていうの、分かる。
過去に行ったり、現在に戻ったり、桃子さんの心の中に行って、と忙しいのに、読んでいて迷子にならない。東北弁の効果なのか、暗い気持ちにもさせない。素晴らしい。
最後、孫娘とのやり取りがあって、ストンと終わる。ここがすごくいい。
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方言だらけで読みづらく感じる方も多いと思うが、より率直で正確にニュアンスを表現する為に敢えて方言を使う必要があるのだろう。少子化と小家族化が進む現在では、伴侶を亡くし一人余生を送らざるを得ない状況は決して他人事ではない。特に盛り上がるシーンはないのだが、日々の何気ない暮らしがとても侘しく印象に残る。人生で一番輝いていた時が、伴侶を亡くした後と語っていたシーンは切なさを感じた。年配者に刺さる内容だが、若い人にも教訓として是非読んで欲しい。
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70代の桃子さん、夫は他界し、子供たちとは疎遠になり、一人で暮らすも、日々頭の中では賑やかな会話が繰り広げられている。
故郷の東北弁での会話はテンポよく(他地方出身の読者が読むには少し時間がかかるが‥)、幼い頃の祖母とのやりとり、夫との出会いや亡くなった時のこと、子どもたちとの確執まで、色んな思いが去就する。それは必ずしも楽しい思い出ばかりではなく、鈍い痛みも伴っていて、歳を取るとはそういうことなのかもと、少し理解できたような気がした。
そして、私の祖母や母もそんなことを考えたりしてたのかなぁ、と思いを馳せると同時に、自分がその歳になったとき、一体何を思い出し、何を思うだろうと想像せずにはいられず、少し胸が痛くなった。 -
子供を育て上げ、亭主も見送った桃子さんがたどり着く「もう自分は何の生産性もない、いてもいなくてもいい存在、であるならこちらからだって生きる上での規範がすっぽ抜けたっていい、桃子さんの考える桃子さんのしきたりでいい」「おらはおらに従う」という「山姥」みたいな自由な境地に、目の前が開けたような気持ちになった。
こんなにも老いることに希望を持たせてくれる小説に初めて出会った。様々な老境の発見を、オリジナリティ溢れるやり方で後続に伝えてくれた、作者の若竹さんに感謝。 -
遠野、または岩手、または東北に関する小説を読みたく、ひとまず脳内データベースでここ数年の記憶を探ると二冊ほどヒットするものの、うち一冊はまだ書名も著者名も思い出せない。本作『おらおらでひとりいぐも』は、二〇一七年に文藝賞を史上最年長の六十三歳で受賞(芥川賞も受賞)ということで著者の若竹千佐子さんをテレビ番組でも拝見したのでよく覚えていた。確か東北弁ががっつり出てくるお話だったような…と思いながらぱらぱらページをめくると、著者紹介に「遠野市出身」とある。あいやぁどんぴしゃでねが、ということで読んだ。
田舎を捨てるように飛び出して東京に来て、結婚し主婦となり子育てし夫を亡くし、ひとり老境にさしかかった女性が、あれこれ考えて暮らしているというお話。あっちこっちへ飛ぶ思考はとりとめないが、親子関係、夫婦関係、愛とは、自分の人生とは、老いとはなど、読み手はいろんなテーマを見つけるだろう。それは言葉にすれば陳腐でありきたりな人生論みたいになりかねないが、それでも小説の言葉がじんと沁みるとき、書き手と読み手の人生が響き合うような、読書の楽しみがあるなあと感じる。
もっと表層のところで面白いのは、主人公を「私」でも「桃子」でもなく「桃子さん」と呼ぶところだ。自分語りのようでいてそうでもない、かといって客観的というほど突き放してもいない、後悔や自責がないわけではないが自分を愛おしみたい気持ちも大事にしたい、そんな全てが「桃子さん」に表れているように思える。
また、この桃子さんは作中ひたすらひとりで考えているのだが、実はひとりではなく、桃子さんのなかに無数の桃子さんがいて、東北弁でやいのやいの議論しているのである。ときにまとめたがり屋が出てきて結論めいたことを述べたり、長老風のが桃子さんの好きな地球四十六億年の歴史に絡めてちょっと哲学的なことを言ったり、真に迫っているのだけどどこかユーモラスなのだ。
小説は即物的にいえば言葉だけでできている。そう考えると(考えなくてもそうだけど)、テーマがどうということと同じくらいかそれ以上に、若竹さんの並べた言葉をただ味わうことが楽しく、良い読書だった。 -
夫を亡くし、独り暮らしする74歳の桃子さん。東北弁がふんだんに登場するとのことで読んでみたが、桃子さんの胸の内で語られる東北弁がこんなにリズミカルでユーモラスで軽やかに感じられるとは。自分も操っていた方言が懐かしく、特に上京してから桃子さんが感じていた「わたし」という言葉への憧れと反感は手に取るようにわかった。「気取っているような、自分が自分でねぐ違う人になったような、喉に魚の骨がひっかかったような違和感」。かつて自分も感じた、標準語を話すことへの逡巡。一部の人にしか理解できないかもしれないが、よく言ってくれましたという気持ちになった。
これまでの桃子さんの生き様から垣間見える祖母・母・自分・そして娘との関係。同性の家族だからこそ感じるわだかまり、うまくいかなさがちくちくと痛かった。夫を見送り、子供とも疎遠になった今、心もとなさと同時に感じている開放感。
「まだ戦える。おらはこれがらの人だ。こみあげる笑いはこみあげる意欲だ。」
このフレーズがとても好きだなあ。これから自分がどんな風に年を重ねていくのか、まだまだじたばたするんだろうという気がしているけど、「こわいものなし」と開き直れる老人になれるだろうか。「おらはおらに従う」と思えるだろうか。思えるようになりたい。