ゆるく考える

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 417
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309027449

感想・レビュー・書評

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  • アズマンの著書とは相性が良いとは言えない。動画での論説に惚れたのが始まりだし、こうしたエッセイでは東浩紀の思想家としての本気は見えず、題名のように、ゆるく綴られたものだから肩透かしを食らった感じになってしまう。彼の普段着な日常を知れるというファン心の充足、今回は、ルソーを切り口に民主主義を問い直すような思索に触れられた点は良かった。

    ところで、度々論壇との飲み会について記載するアズマン。しかし、会話の大半はバカ話で消費されていて、党派的合意が形成される事は無い。普通はスノビズムとルサンチマンで満ちていて、全く生産的ではない、と述べている。変わらないんだな、と思う。コロナ禍で酒席が減った。時々やってくる波間、凪のタイミングで一斉に飲み会を入れる。飲み方を忘れているのと、取り戻すように雑談をするものだから、スノビズムもルサンチマンもバカ話もごちゃ混ぜにした濁った酒席になる。交流の懐かしさと娯楽性と共に、曝け出し合う気まずさを次の日まで引きずる。

    さて、ルソーは野生人の自由を謳い、コミュニケーション不要な新しい政治を夢見ていた。それはアメリカという新大陸自然状態と社会契約について思弁を可能にしてくれる、社会思想の広大な実験場が15世紀末に発見されたからだという。時代は、民主主義的手続きやデータ利活用の過程で、ルソーを再認知していくのではないだろうか。

  • 【新着図書ピックアップ!】現代における評論の無力さを嘆きつつも、その将来的な立ち位置を模索することなどなど。しかし、この人の文章は本当に読ませる。決して味わい深いわけではないのだけど。文の長さ、出だしの一文、平易な用語と言い回し、読者レベルの目線、情報提示の順番と構成、時事ネタの扱い、適切な逸話やたとえ話の挿入などなど。あと接続詞をうまく使うんだな。いくらブログを書いても全然人に読んでもらえない人の教科書になります。

  • 2019年刊行。2010年から2018年までに色々な媒体で発表したエッセイや評論を取りまとめたものである。第Ⅱ章の、文學界での2008年から2010年の連載「なんとなく、考える」は、「郵便的、存在的」から「一般意志2.0」に至るつながりを著者自身が解説したものとも読める。それらの本の思想的な位置付けを理解する手助けになり、個人的に面白かった。当時の空気感が伝わる文章だからこそ、その後の東北の震災によって断絶/転向した様を鮮やかに印象付ける。

  • ブログみたいなものです。ただしとても良いブログです。掲載時期が広いため、著者の現在の主張とは異なる点は留意。ファンなら。

  • 著者のエッセイ集。これまでとこれからの仕事について自身の視線で整理されていて理解の助けになると思う。

  • 2000年代の論考を間に挟んでいることで、2010年代とはたしかに空気が違ったなという感慨があった

  • 「ゆるく」というタイトルにどことなく逃げの姿勢を見て取り、近年めっきり肥えてしまった氏が最初に言い訳をしながらあれこれ語っているのかなと手にとった。
    実際には、ここ十年に著者が方々で書き散らした論考をまとめたもので、基本的に書き直しをせず当時のまま再録していることから来る時代性が面白い。

    Googleが新たな公共になり得るか、なんて議論は今となっては卒倒しそうだが、そういう時代もあった、ということで。
    SNSに関しては、Twitterの持つゆるいコミュニケーションが、島宇宙を破壊する契機になるかも、みたいな希望的な観測もある。
    これも、10年代も終わろうとする今からするとやや楽観的すぎたのかもしれないな、と。
    現在のTwitter世界で頻発しているのは、島宇宙内での主張・議論が、リプ・RTでその宇宙の外から容易に可視化され晒されるために、島宇宙間での戦いが発生し炎上する、という事態でしょう。
    それが嫌だというので、党派外からのアクセスを禁止するブロックとか鍵垢とかがあるのでしょうが、炎上案件は、まあスクショで拡散されますしね。さほど意味がない。
    それまでであれば一生知らずに住んだ他の島宇宙の言説が、自身のTL上に煽りも込みで現れるわけで、何とも心穏やかになり難い時代です。

    そういえば著者の「畏友」津田大介氏も、Twitterにそんな希望的な潮流に乗って登場したジャーナリストでした。
    ところが最近では、「やはり人類にインターネットは早すぎた感しかない。」などと言ったかと思うと、
    あいちトリエンナーレでは、あっけなく保守の攻撃に敗走し、あげく過去の醜聞まで掘り返される始末。
    「畏友」だったはずの著者にも捨てられてしまったなあ、などと。

  • i.は日常で深く考えている感じがした。キレがあった。
    ii.,iii.は筆者なりの「書くこと」への挑戦は感じたが、文体、調子、視点が合わず、結果的に文章が弛緩していて、読むのが辛かった。
    ところどころ、ハッとした。

    以下、メモ。
    i.2018年:坂、ペット、受験
    ii.2008-2010年:まじめ、信頼(アマゾン、グーグル)と友情(ミクシィ)、消費社会と絶滅収容所は人間をもののように処理する点で繋がっている、twitter
    iii.2010-2018年:『こころ』をどう読むか、記憶と記録の逆説:デリダ

  • 面白いな、と思ってラインを引きたくなる箇所があるのに何度も通り過ぎてしまったのがもったいなかった。前半の日経のコラムはほどよくライトに読ませる文章が毎回まとまっていて参考にしたいくらい。

    読んでいる最中にちょうどあいちトリエンナーレの騒動があって、リアルタイムで著者の言い分が流れてくる。出来るだけ切り離して読みたかったけどそうもいかなくて残念な気持ちになる。
    福島のツーリズムはどうしても事務方に立って読んでしまう。所属や立ち位置だけで対立すれば楽なものだが、個々人もどこまで独立して物事を考えて議論することができるか。少なくとも情報の受け手は自分の認知のクセに自覚的でなければならないのだなと思う。

  • 批評家・作家である著者の2008〜2018年までに書かれた時評性が低く文学性の高いエッセイをまとめたもの。個人的には第1章と3章に収められた読みやすさに新たな側面を見た。‬

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著者プロフィール

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

「2023年 『ゲンロン15』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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