名画小説

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 173
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309029771

感想・レビュー・書評

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  • 絵画をめぐるショートショートですね✨
    166Pで13編の構成です。
    名画小説と言うよりも名画小咄と言いたいくらいにウィットに富んだ語り口で紡ぎ出されて来たように感じました

  • 【収録作品】1 後宮寵姫/2 旧校舎の踊り場/3 美姫と野獣/4 東洋一の防疫官/5 女殺し屋と秘密諜報員/6 孤高の文士/7 孤高の文士2/8 六人姉妹/9 父の再婚/10 ぼくのおじいさん/11 祖母綠(エメラルド)の少女Ⅰ/12 祖母綠の少女Ⅱ/13 葡流石(ブルゴーニュ)の塔の上で
    それぞれのモチーフとなった作品は、
    1 「グランド・オダリスク」ドミニク・アングル /2 「女の三段階と死」ハンス・バルドゥング・グリーン/3 「貴婦人と一角獣より”我が唯一の望み”」タペストリー/4 「バナナ」アンディ・ウォーホル/5 ""one way or another (cocktail)""#2 田幡浩一/6 「ウィスキー」寺澤智恵子/7 「絡子をかけたる自画像」髙島野十郎/8 「つばめと子供」藤田嗣治/9 「遙かなる思い」福井良佑/10 「北へ西へ」香月泰男 /11 「教父祭壇画」ミヒャエル・バッハー/12 「四人の使徒」アルブレヒト・デューラー/13 「マリー・ド・ブルゴーニュの肖像」ニコラス・レイザー
    「芸術への深い造詣とミステリーを融合させた傑作短編集」との謳い文句は……。収穫は、寺澤智恵子さんを知ったこと。

  • 『考えてみてもらいたい。一つの同じ演奏会場の中で、帕莱斯特里納(パレストリーナ)と莫札特(モーツァルト)と史特拉汶斯基(ストラヴィンスキー)の楽曲が、生で同時に奏でられていたならば、たとえ人間が耳を自由に開閉することができたとしても、遅かれ早かれ頭がおかしくなることだろうが、大美術館ではそれに近いことが平気で起きるのである』―『後宮寵姫』

    蘊蓄の蘊という漢字は「積み重ね」「蓄える」という意味があるらしく、そこから蘊蓄とは「十分研究を積んでたくわえた、学問・技芸上の深い知識」(広辞苑)を意味することになるらしい。それ自体に否定的な意味はない筈だが、しばしば煙たがられる状況を作り出しかねないものでもある。インターネットで時に交わされる即席の解説を投げつけ合うような遣り取りに対する「ウンチクがウザい」というような反応は論外としても、豊富な知識が披瀝された際の反応の振れの間に引かれる境界線のようなものは常に曖昧だ。書評などでしばしば博覧強記と評されている場合も、純粋にそこに肯定的な響きだけを聴き取ってよいものか判断がつかないこともある。本書もまたそんな一冊かも知れない。

    古今東西の絵画の背景まで読み取り尽くして立ち上げる空想の物語をして「13の名画に隠された、驚きの謎、恐怖――秘密が明かされた時、あなたは戦慄する」(河出書房新社)とするのはややミステリーへ偏重した紹介のように思うが、確かに絵画には語られて然るべき物語があることを作家は改めて読者に知らしめる。しかもその語り口は、同じ調子を嫌うかの如く軽妙に変化し、時に深刻に、時にナンセンスに物語を展開させる。各々の絵画によって披(ひら)かれる世界も卑近な男女の関係から公国の滅亡の歴史まで、正に縦横無尽に変化する。

    一つひとつは短い物語であるものの読み進める内に、この作家には諸々強い拘りがあることを感じずには居られないのだが、それは外来語の漢字表記にも認められるところだろう。その拘りは、供される蘊蓄と相俟って何か触れてはいけないものの存在、秘められた狂気さえ連想させもする。その意味では確かに「戦慄する」というのは的を射た評なのかも知れない。

  • 名画にまつわる、短編小説。ミステリーだと思って読んでいたが、どちらかと言えば、幻想小説のように感じた。
    中には怪奇小説?という趣のものもあり。
    「美姫と野獣」「東洋一の防疫官」「女殺し屋と秘密諜報員」「孤高の文士」「孤高の文士2」はギャグ?のような話だった。
    その前の「旧校舎の踊り場」でゾクっとしたので、ちょっとほっとひと息、と思ったら「六人姉妹」でまたもゾクリとさせられる。このオチは看破したかった。ヒントは散りばめられていたはずなのに。
    「父の再婚」は心温まるお話。このオチは予測できた。それでも地味深い料理を味わうような気持が持てた。

    「祖母緑の少女Ⅰ」「祖母緑の少女Ⅱ」はとても素敵なお話だった。アンネ=ゾフィーに幸あれ、願う。

    冒頭の「後宮寵姫」と最後の「葡流后の塔の上で」は絵の中のモデルとの交流のお話。ミステリアスで神秘的。ブルゴーニュとハプスブルクの話も知ることが出来て、楽しかった。

    紹介されていた絵画で知っていたのは「グランド・オダリスク」「女の三段階と死」「四人の使徒」くらいでした。もっと知っていたら、もっと楽しく読めたのになあ。

  •  芸術ミステリを得意とする深水黎一郎さんの新刊は、実在の名画13点をモチーフにした短編集である。1編辺りの長さは抑えられ、掌編集と呼ぶべきか。ご本人曰く、切れ味で勝負したという。

     13点の名画は、中世ヨーロッパの作品からわずか数年前という近代の作品まで、バリエーションに富んでいる。当然、これらから生み出された各編の作風も、バリエーションに富んでいる。正統的芸術ミステリは、むしろ少数派なのだった。

     「後宮寵姫」。この絵は当時叩かれたというが、叩かれた理由をこのようにアレンジするとは。ルーブル美術館を舞台とした最初の1編が正統的芸術ミステリだったので、てっきりこういう作風で統一していると思ったんだよねえ。

     2編目「旧校舎の踊り場」。なるほど、この怖い絵は、怪談に打ってつけ。そして3編目ではっちゃける「美姫と野獣」。ディズニーに喧嘩を売っているのか? 「東洋一の防疫官」。あまりにも有名なこの絵から、なぜこんな話が生まれた?

     タイトルがそのまんまな「女殺し屋と秘密諜報員」。男女の夜は更けていく。本作の一押しは「孤高の文士」。読み終えてググりました。続いて「孤高の文士2」。身に覚えがある作家はいるのでは? これもそのまんまな「六人姉妹」。そのまんまだってば。

     「父の再婚」。唯一、温かい気分になる作品か。「ぼくのおじいさん」。たまたまその画家と絵は知っていた。知らなければ、受け止め方が違ったかもしれない。「祖母綠(エメラルド)」の少女 I」「祖母綠の少女 II」は、宗教画への突っ込みの嵐の後、予想外の結末が…。

     最後に、本作中ではやや長い「葡流后の塔の上で」。ようやくと言うべきか、あの男が登場し、正統的芸術ミステリで幕となる。それにしても、最初と最後だけが正統的芸術ミステリとは。改めて、一筋縄ではいかない作家であることを実感した。

  • ドミニク・アングル「グランド・オダリスク」:パリ、ルーヴル美術館でスリに遭った主人公におこった不思議(「後宮寵姫」)。ハンス・バルドゥング・グリーン「女の三段階と死」:転校生の夏姫は、新しいクラスメイトから、よくある学校の怪談を聞くのだが(「旧校舎の踊り場」)。藤田嗣治「つばめと子供」:取材で訪れた見知らぬ土地で、公園で遊ぶ女の子たちと知り合った私だったが(「六人姉妹」)。架空の美術館(本書)に収蔵された、13の絵画と小説。

  • いわゆるジャケ買いをした本。
    絵画をモチーフにした短編集だが、わざとと分かるほど海外の国名や人名を漢字で表記していて、時代設定がいつなのか混乱しながら読み進めた。その表記の理由は最後の1話で納得ではあるのだが……
    文章は読み難いということはないが、時々こちらが驚いてしまうほど砕けた文体に変わり、そのたびにこちらの先入観を崩された。
    コミカルなもの、ちょっとホラーテイストのもの入り混じり、ある意味飽きない本だった。

    著者の『最後のトリック』に出てくる、「手紙」の部分と読んだときに文章の印象は近かった。

  • 1時間20分

  • 絵画の種類の豊富さ、

    短編ごとの設定が面白かった。

    知らない絵も多く、読み応えもあった。
    表紙と最初の数ページで買ったから
    先入観なく読めたのでとても満足。

  • タイトルに惹かれて読みはじめたものの、想像と違う内容に拍子抜け。名画にからめた短編集だけれど、こども向けの小噺、といった感じ。芸術的要素はなし。

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著者プロフィール

1963年、山形県生まれ。2007年に『ウルチモ・トルッコ』で第36回メフィスト賞を受賞してデビュー。2011年に短篇「人間の尊厳と八〇〇メートル」で、第64回日本推理作家協会賞を受賞。2014年、『最後のトリック』(『ウルチモ・トルッコ』を改題)がベストセラーとなる。2015年刊『ミステリー・アリーナ』で同年の「本格ミステリ・ベスト10」第1位、「このミステリーがすごい!」6位、「週刊文春ミステリーベスト10」4位となる。

「2021年 『虚像のアラベスク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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