- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309029771
感想・レビュー・書評
-
絵画をめぐるショートショートですね✨
166Pで13編の構成です。
名画小説と言うよりも名画小咄と言いたいくらいにウィットに富んだ語り口で紡ぎ出されて来たように感じました詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『考えてみてもらいたい。一つの同じ演奏会場の中で、帕莱斯特里納(パレストリーナ)と莫札特(モーツァルト)と史特拉汶斯基(ストラヴィンスキー)の楽曲が、生で同時に奏でられていたならば、たとえ人間が耳を自由に開閉することができたとしても、遅かれ早かれ頭がおかしくなることだろうが、大美術館ではそれに近いことが平気で起きるのである』―『後宮寵姫』
蘊蓄の蘊という漢字は「積み重ね」「蓄える」という意味があるらしく、そこから蘊蓄とは「十分研究を積んでたくわえた、学問・技芸上の深い知識」(広辞苑)を意味することになるらしい。それ自体に否定的な意味はない筈だが、しばしば煙たがられる状況を作り出しかねないものでもある。インターネットで時に交わされる即席の解説を投げつけ合うような遣り取りに対する「ウンチクがウザい」というような反応は論外としても、豊富な知識が披瀝された際の反応の振れの間に引かれる境界線のようなものは常に曖昧だ。書評などでしばしば博覧強記と評されている場合も、純粋にそこに肯定的な響きだけを聴き取ってよいものか判断がつかないこともある。本書もまたそんな一冊かも知れない。
古今東西の絵画の背景まで読み取り尽くして立ち上げる空想の物語をして「13の名画に隠された、驚きの謎、恐怖――秘密が明かされた時、あなたは戦慄する」(河出書房新社)とするのはややミステリーへ偏重した紹介のように思うが、確かに絵画には語られて然るべき物語があることを作家は改めて読者に知らしめる。しかもその語り口は、同じ調子を嫌うかの如く軽妙に変化し、時に深刻に、時にナンセンスに物語を展開させる。各々の絵画によって披(ひら)かれる世界も卑近な男女の関係から公国の滅亡の歴史まで、正に縦横無尽に変化する。
一つひとつは短い物語であるものの読み進める内に、この作家には諸々強い拘りがあることを感じずには居られないのだが、それは外来語の漢字表記にも認められるところだろう。その拘りは、供される蘊蓄と相俟って何か触れてはいけないものの存在、秘められた狂気さえ連想させもする。その意味では確かに「戦慄する」というのは的を射た評なのかも知れない。 -
ドミニク・アングル「グランド・オダリスク」:パリ、ルーヴル美術館でスリに遭った主人公におこった不思議(「後宮寵姫」)。ハンス・バルドゥング・グリーン「女の三段階と死」:転校生の夏姫は、新しいクラスメイトから、よくある学校の怪談を聞くのだが(「旧校舎の踊り場」)。藤田嗣治「つばめと子供」:取材で訪れた見知らぬ土地で、公園で遊ぶ女の子たちと知り合った私だったが(「六人姉妹」)。架空の美術館(本書)に収蔵された、13の絵画と小説。
-
いわゆるジャケ買いをした本。
絵画をモチーフにした短編集だが、わざとと分かるほど海外の国名や人名を漢字で表記していて、時代設定がいつなのか混乱しながら読み進めた。その表記の理由は最後の1話で納得ではあるのだが……
文章は読み難いということはないが、時々こちらが驚いてしまうほど砕けた文体に変わり、そのたびにこちらの先入観を崩された。
コミカルなもの、ちょっとホラーテイストのもの入り混じり、ある意味飽きない本だった。
著者の『最後のトリック』に出てくる、「手紙」の部分と読んだときに文章の印象は近かった。 -
1時間20分
-
絵画の種類の豊富さ、
短編ごとの設定が面白かった。
知らない絵も多く、読み応えもあった。
表紙と最初の数ページで買ったから
先入観なく読めたのでとても満足。 -
タイトルに惹かれて読みはじめたものの、想像と違う内容に拍子抜け。名画にからめた短編集だけれど、こども向けの小噺、といった感じ。芸術的要素はなし。