ミルクとコロナ

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309030005

感想・レビュー・書評

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  • 前作に続いて白岩玄さんの著書を読んだ。
    今回は小説ではなく正確には白岩玄さんと山崎ナオコーラさんの往復エッセイだ。

    『『野ブタ。をプロデュース』の白岩玄と『人のセックスを笑うな』の山崎ナオコーラ。共に20代で作家になり、現在二児の親でもある二人が、手紙をやりとりするように綴る、子育て考察エッセイ!』河出書房新社HPより

    タイトルからわかる通り、これはコロナ禍での育児を綴ったエッセイだ。
    特に白岩さんは二番目のお子様の出産がちょうど丸かぶりしたとのことだった。出産に立ち会う予定だったそうだがそれが叶わず、また上の子と一緒に面会することもできなかったらしい。
    私の友達にもコロナ禍で出産した子がいるし、私自身も祖母が入院して見舞いにいけないということがあった。
    会えたい

    白岩さんと山崎さんのやり取りを読んでいて、もっとほっこりとするものかと思っていたけどこれもたしかに変なイメージだよな、と反省した。
    白岩さんと山崎さんの母親、父親、そもそもそれらの概念への取り扱い。
    違う認識や価値観を持ちながらも、それらをぶつけ合うわけではなく自分がなぜそう考えるようになったかをつまびらかにしながら育児を考えていく。

    それらは世の中でよく言われるようなものとは異なり、白岩さん山崎さんのそれぞれの家庭事情にカスタマイズされた子育て論だった。
    でもそう考えてみると子どもなんて、子育てなんて各家庭によって違いがあって当たり前で子育て雑誌や本やなんかで一括で語られるものではない。

    こうして色んな子育てのスタイルや捉え方がもっと知られて、子どもとは子育てとはという世間のイメージが少しでも薄くなるといい。
    それで子育てをしている人が少しでも呼吸しやすい環境になってほしい。

  •  ほぼ同期の作家2人の育児にまつわる往復書簡。白岩玄さんは男性による育児界の肩身の狭さ。山崎ナオコーラさんは性別にこだわらず「1人の人」として子供と向き合う姿勢。2人の育児に対する迷いや、それに対する互いの考えを尊重し合っていて、とてもいい反響をし合っているなと思った。
     人を育成するということは、基本的な考え方も教えていく必要がある。教えていくにあたり、その親が持っている考え方=哲学が色濃く反映してしまう。その濃淡について世の中の親はこんなに考え尽くして、悩んで育児にあたっているんだと、尊敬する。



    「親だけでなく、時代や文化や環境だって育児をしている」
    「ウイルスは悪意を持ってない。人類を滅ぼそうとしているのではない。ただ人間とウイルスが交わると、病気が起こるだけのこと」
    「経済格差、ルッキズム、差別、いじめは、決して個人の問題ではなく、社会の問題であり、個人は変わる必要がなく、社会が変わるべきなのだ、と考えていきたい」

  • デビューが同期だという白岩玄さんと山崎ナオコーラさんの育児エッセイ。2018年1月から2021年10月にわたるコロナ生活記録でもある。

    コロナについても育児についても自分の心情についても、何となくでごまかさない真摯な2人のやりとりが続く。
    少し前のことなのに、もう忘却の彼方で、懐かしい気持ちで読んだ。小さな子を育てる不安、コロナの全貌がわからない不安、急激に変化する社会の空気への戸惑い。私にもたくさんあったことを思い出した。

  • 『野ブタ。をプロデュース』の白岩玄さんと『人のセックスを笑うな』の山崎ナオコーラさんによる往復育児エッセイ。まるで交換日記のようでおもしろい。
    ひとつめは、お互い、第一子のときは、「育児の責任感」とか理屈っぽく子育てしてる風なエッセイが、後半にコロナ禍で第二子が生まれてからは「原始の人が初めて服を着てからは服が不可欠になったように、この子達もマスクなしでは恥ずかしいとか思うようになるのかもしれない」「マスク・手洗いネィティブ」など、自然で生活感あふれる子育てエッセイに変わるのが、共感ポイント多くおもしろいです。
    もうひとつには、「個人の出来事を社会の出来事だと捉え直すことが仕事だ。(中略)個人の出来事が持つ社会性を信じるのだ。」という、山崎さんのポリシーに共感して、ぐっと作品に対する興味が深まりました。

    折しも第六波がピークに差しかかる今日この頃。子育てとコロナについて切り口いろいろに考えられてて、幸か不幸かぴったりハマりました。

  • 山崎ナオコーラさんと白岩玄さんによる、コロナ禍での出産・育児についてのエッセイ。

    コロナ禍という特殊な状況で、色んな方面に気をつかいながらも、その時々に思ったことや悩んでいることが綴られていて大変興味深かった。
    社会とは個人の集まりであり、個人的な話は社会の話ともいえる。だから個人的な話を書くのだ、というナオコーラさんのスタンスをかっこよく感じた。

    2020年から2021年にかけての日本社会がどうだったか、という記録になるような本だったと思う。
    非常事態宣言や自粛要請が続くなかで、親と子どもはどんなふうに過ごしていたか。親は日々、何を考えていたのか。
    アフターコロナという時期が来るのであれば、この本はきっと重要な資料になるはず。

    でも、今後もマスク着用必須の社会は続くんじゃないかな、とも思う。変異株は次々に現れる。我々はワクチンを打つ。それでも感染者は増えたり減ったりする。
    いつまでも続くような気がする。

  • とてもいい本だった。
    コロナ前とコロナ禍での子育てについてのエッセイだが、コロナ後に子育てする自分にも参考になる視点がたくさんあった。
    ナオコーラさんの言うように、感染症流行下における子育てについては「自分なりの考えを、それぞれ大事にしていいんじゃないか、…みんながそれぞれ、自分なりのストーリーを見つけるしかない(p122)」のだと思う。私もこれから、自分がどういう子育てをしていきたいかを一番に考え続けようと思う。

  • 山﨑ナオコーラさんと白岩玄さんによる、子育て交換エッセイ。(「往復書簡的な」とも書かれている)
    山﨑さんと白岩さんは同じ年にデビューしたそうで、山﨑さんは唯一の「同期」と呼んでいる。年齢は山﨑さんの方が年上だが、2人とも同じ頃に子どもを持ち、作家業をしながら子育てをすることについて、「before corona」と「under corona」の二部編成で綴られている。

    私は子どもがいないので、子育てには直接関係がないのだけれど、だからこど、自分には直接的に関わらない分野だからこそ、読みたいと思って手にとった。タイトルに「コロナ」という言葉があったことで、コロナ禍の子育て事情かな?とも思った。

    白岩玄さんといえば、「野ブタ。をプロデュース」でデビュー作がドラマ化され一躍有名になった方。(ドラマはちら見してたけど、当時原作には興味なく・・・)
    私の記憶では、「たてがみを捨てたライオンたち」で男性が男性らしく生きていくことに苦悩する社会人男性の話を書いた人という情報しかなかった。しかも、読んでない。(読みます)

    白岩さんご夫婦は共働き。3か月の育休も体験し、子育てをまるごと自分で抱えるという経験をしたのは良かったとのこと。それでも、夫婦間で日々いろいろ話し合っている様子が垣間見れ、子育てや家族構築のうえで、夫婦で共通の考え、思いが通っているように思う。夫が子育て経験をすることで、この共通認識は持ちやすいと思う。(私の知り合いも、夫さんが2か月の育休を取得したことで、子どもに関する基本的な情報共有ができるようになったといってたので)
    コロナ前の話は、「ふ~ん」「へ~」と思いながら読んでだんだけど、コロナ禍で緊急事態宣言後に、都会のマンションで住んでいた白岩さん家族はかなり疲弊したという話は、なんかもう、子育て中でマンション暮らしの人は全員共感すると思う。子どもの面倒をみながら仕事なんてできない!リモートといえども、画面の後ろでは子どもの泣き声とか入るし。仕事のオンライン会議とかにも子どもが出てきても和むくらいの日本社会であってほしいように思う。(コロナ前のイギリスの記者さんが、自宅からオンラインで参加した背景で子どもたちが部屋に入ってきちゃう動画は一時拡散されたっけ)
    また、コロナ禍でも出産や、マスクを嫌がる子どもを連れた外出する大変さ。こういうのは、子育て世代だけでなく、子育てしいない世代の人にも知ってほしいと思う。

    ところで、山﨑ナオコーラさん。彼女の小説はいくつか読んだことがあって、ご本人も性別を公開していないことなど、「女性らしさ」とかいう社会的に求められるジェンダーにはかなりアンテナがある人と思っていたので、さらに日常考えていることが分かり、なるほど~と思うこともあり面白かった。一人目を出産されたあと「母ではなく、親になる」というエッセイを出されていたのは知ってるんだけど、まだ読んでなくて、読んでない本が多すぎてすみません。

    だらだら書いているけど・・・
    一番お二人のいいなあと思ったことは、子どもたちと工夫して遊んでいること。
    山﨑さんは、「自然公園」にいって、目隠しをしあって、手を引っ張り木を触ってもらい、「さて、その木だったでしょう?」という遊び。自然に触れて、その観察もできるし、お金がかからない!(雨の日とか酷暑の夏はあかんけど)。室内ではぬいぐるみのかくれんぼごっご。まだ幼稚園ぐらいの子どもだからできる遊びではなるけど、楽しそう。
    そう、山﨑さん家族も白岩さん家族も基本的に、インドア派で、自宅にいることが苦にならないタイプだっだので、コロナ禍もそれなりに楽しそうに過ごしていた。
    それに、コロナ禍に双方とも引っ越しをされて、それで環境に変化があったことも良かったのかも。(誰でもすぐに引っ越しはできないけど)

    白岩さんが子どもたちを連れて、見渡す限りの菜の花を見に行ったとき。息子さんが、「息子はどこまでも続く黄色い花畑を目を細めながら歩き、てんとう虫を見つけて手の平の上を歩かせていた」というのが、気持ちよさそうでうれしくなった。

    このエッセイを読んで、白岩玄さんの考え方はかなり好きだなと思った。子どもに向きあう姿とか、子どもとしてというより、一人の人間として向きあっているから、相手が大人であったとしても、この向き合い方は初心に返らされました。

    とりあえず、「たてがみを捨てたライオンたち」を読んでみたい。

  • 白岩さんと山崎さん。共に作家で二児の親。手紙をやりとりするように綴っていくお互いの思考。人の意見を聞いて気づくことや考えさせられること。自分のいたらなさもお互いの違いも真摯に受け止めるからできること。考えは深まる深まる。コロナ前とコロナ禍。親としても考えさせられるよね。ミルクとコロナな。

  •  育児エッセイとされているが、前半のbefore corona のあたりは、子どものことより暮らしの中で感じてきたことを書かれている印象だった。
     お二人のバックグラウンドによる考え方、特に「競争」や「席とり」については同じような気持ちになるので、とても身近に感じた。
     

  • こどもについて、生きている社会について、よくよく考えて過ごすおふたりの考えの応酬がとても興味深かった。
    やり過ごすことは簡易だけど、ふたりはよく立ち止まって考える。それがとても刺激にもなるし自分が抱えていたもやもやを言語化してもらえたところもある。
    追いかけるように一緒に考えたくなった。

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著者プロフィール

1983年、京都市生まれ。2004年『野ブタ。をプロデュース』で文藝賞を受賞し、デビュー。同作はテレビドラマ化され、70万部のベストセラーになった。著書に『空に唄う』『愛について』『未婚30』など。

「2019年 『ヒーロー!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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