- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309030364
感想・レビュー・書評
-
「逃亡くそたわけ」の続編。
今回の舞台は富山県。
花ちゃん(正確には花田姓ではないが)となごやん、それぞれ伴侶と子供がいる。その二人が富山県で再会するとは。
二組の家族でキャンプをすることになったのだが、なごやんの愛犬が行方不明に。二手にに分かれて探すことになり、花ちゃんはなごやんの車に乗り込む。
再び珍道中?と思えば、そうはならず、だが富山県の様々な場所を舞台に花ちゃん家族の日々が描かれる。なごやん家族との交流も時折ある。
気になっていた花ちゃんとなごやんの体調だが、好不調の波はありつつもなこやんは仕事をしているし、花ちゃんも時々アルバイトをしながら家事と育児とをやっている。何よりそれぞれの伴侶が良い。特に花ちゃんの夫・アキオのキャラクターや娘・佳音の聡明さには救われる。
後半はコロナ禍の日々。あの頃の混乱は花ちゃんやなごやんだけではない。何が正しいかの物差しもどこに向かえば良いかの地図もない状態で皆がそれぞれの信じることで自分や家族や大切な人を守ろうと必死だった。
その一方で作家さんの思うところを花ちゃんやなごやんに代弁させたようなところもあり、頷きながら読んだ。
『うちの家族って、みんな真面目だよね』
佳音の言葉にこの作品の意味がが集約されていた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに絲山秋子さんを読みました。「まっとうな人生」、彼女の最新作のようです。十数年前に気に入った作品の、続編(?)でしたが、懐かしい登場人物たちが、なんとか「まっとう」に生きようというしてきた、している姿に胸打たれる思いでした。
あれから、新しい命も誕生し、誕生した新しい命が、母や父といったおじさんおばさんたちの「まっとうな人生」を支えている姿を書く絲山秋子の「まっとうな」書きぶりに拍手!でした。
ブログにも感想書きました。よろしければどうぞ。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202208280000/ -
コロナの事も書いてあるからか、小説と言うよりエッセイとか日記を読んだ様な感覚。
福岡や、金沢に住んでた事があるので、方言や地名を懐かしく感じた。 -
帯に「逃亡くそたわけ」の数十年後とある。
題名のとおり、2人は伴侶に恵まれ普通の生活を送っている。舞台はコロナ禍、お隣の県富山。
富山の文化や方言、知っていたようで知らないことも多く、なかなか興味深かった。
アキオちゃんの金沢への対応も笑えたし。
前作、ずいぶん前に読んだので記憶が定かでないけれど、かなりぶっ飛んでた内容だったのに。
歳を重ねるということ、家族を持つことなど、人となり・・・まっとうな人生になっていくのだろう。 -
2005年に刊行された『逃亡くそたわけ』の17年振りの続篇。前作は文庫本を購入し読んだが、非常に曖昧な記憶しかない。
花ちゃんとなごやんはそれぞれに家庭を持ち、平和に暮らしている。双極性障害ともなんとか折り合いをつけながら生きていたが、そこにコロナが襲いかかる。特にドラマチックな展開があるわけではないが、あの頃の先行き不透明な世界が見事に描出されていて、当時を思い出して息苦しくなった。
絲山さんの作品は各地の名所や名産品が魅力的に描かれていることが多いが、今回は富山のあれこれだった。 -
『逃亡くそたわけ』を再読してから、待望の続編を読む。
病院から抜け出し九州を南進した2人が帰ってきた。
それぞれに家族を持ち、元気に暮らしていてくれただけでも嬉しい。
富山での再会、家族ぐるみでの付き合いで生まれるあれこれ。
物語にはコロナ禍も描かれる。
後半は、コロナ禍の絲山さんの思いが吐露されているかのよう。 -
『逃亡くそたわけ』の
あの逃亡から十数年、
花ちゃんとなごやん、二人の再会に歓喜!
今この現代を共に生きている共感が嬉しい。
胸の内で覚えのある感覚が言語化され、
言葉のパズルがぴたりとハマるような
絶妙な表現が小気味良い。
弾むようなテンポで踏み越えていく軽快さと、
スッと胸を刺すような真っ直ぐな鋭さのバランスが
最高なのです。 -
Amazonの紹介より
名古屋出身の「なごやん」と繰り広げた九州縦断の脱走劇から十数年後――。富山県のひょんな場所でなごやんと再会した「花ちゃん」。夫のアキオちゃんと娘・佳音の成長を愛おしむ日々に、なごやん一家と遊ぶ楽しみが加わった。しかし、新型コロナ・ウイルスの感染拡大でその生活が一変!! 押し寄せる不安の波に押しつぶされそうになりながら、花ちゃんが出会ったもうひとりの自分とは?
「逃亡くそたわけ」の続編だそうで、そちらの方は未読でしたが、富山を舞台にコロナ禍での暮らしぶりが、懐かしくもあり、色々なことを思い出せてくれました。
前作のレビューを見る限りでは、なかなかアグレッシブなことをしているなという印象でしたが、それとは裏腹に穏やかな暮らしが描かれているので、この作品を読み終わった後、過去にこんなことをしていたことに驚きでした。
穏やかな暮らしを描きつつも、今、主人公がどう思っているのか。微妙な心の揺れ動きを的確な表現で書かれている印象があって、より読み手に伝わりやすく書かれている印象がありました。
コロナが発生してから、もう2年以上経ったことに時の流れは速いなと思いました。あの時、どんな事があったのか?どんなことを思っていたのか?
あんなことあったな、こんなことあったなと読んでいて色んなことを思い出しました。物語はフィクションですが、リアルにどこかの家庭を映しているようでもあり、今でもどこかで生きているのではとも思ってしまいました。
それでいて、コミカルに書かれているので、心が軽い感覚で読んでいました。
富山の「空気」を感じつつ、コロナ禍で色んな出来事があっても、明るく振る舞っている姿に頑張り過ぎず、肩の力を抜いていこうと思いました。