- Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309204970
感想・レビュー・書評
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再読
川を渡る場面が印象的だった記憶があった。“鎖が切れた”つらい経験をして乗りこえるためには想像を絶する苦しみがあるけれど、復讐(攻撃)は必要ない。
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3巻を読みようやく、「西のはての年代記」が力を授かった子どもたちの物語だけではなく、詩句や歴史、抑圧から自由を獲得する物語なのだと理解した。ル=グウィンの作品が信頼できるのは、登場人物が作者の分身ではなく、育った環境に影響を受けたひとりの人間だからだ。私たちは小さなころ無条件に親を信じていたけれど、しだいにそれは間違っていたと気づく。主人公が性に未熟な男の子だったおかげでこの話のつらさが多少は緩んだ。権利を主張できない女をどんな悲劇が襲うか、彼女の筆は容赦ない。つらい物語だけれど終わって欲しくなかった。
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前2作と変わりない世界観だが、本作を読むと前2作が準備段階だったことがわかる。本作の主人公ガヴのギフト(能力)は予言とか予知、それと記憶能力の2つ。同じ単語が種族によって違う意味で使われていることとか、ギフトを持っていても使う人で意味が変わるとか、設定が大変示唆的。タイトルのPowersのメインシームはスレイバリー(Slavery)とパワーであることは明白だが、経済力、政治力、軍事力、肉体物質的な力、信じる力、裏切りの力、カリスマの力。1巻のGifts(特殊能力)、Voices(声の力、伝える力)とと合わせて、非常に意味のある力。ラストにオレック、グライ、シタール、それに大人になって美女になったメムーが登場する。この先が読みたいとも思うが、いいラストではある。
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ゲド戦記のファンです。
西のはての年代記は話はゲド戦記とは関係ありませんが、内容・雰囲気はゲド戦記の後半と近いです。
淡々とした語り口、自由への望み、人間の悪意、女性への蔑みと尊敬・・・
この本も何度も読み返して、その良さが深まっていく予感です。 -
自由。自分の生きてきた中でしか人はものを考えられない。今の生き方が正しいのか、間違っているのか、人はたくさんの経験をすることで自分のあり方を考えることができる。自身の経験もあり、人から聞いて学びこともあり、本を読むことによって学ぶこともできる。ガウィアとともに旅して、そんなことを考えました。
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奴隷とはいえ教育を受け、優秀ゆえに将来も保証され、親身に面倒を見てくれる屋敷の主人を信頼していた少年ガヴィアは、姉の悲惨な死によって初めて自分のおかれた立場が虐げられたものであるか知り絶望の中屋敷を逃げ出します。放浪の末に悩み苦しみながら自分の生きる場所を得る主人公に共感できました。『ゲド戦記』にも垣間見えた著者のフェミニズムが今作にも現れている気がします。皆が自由であるはずの理想郷ですら、慰み者として生きるしかない女性達や「ギフト・ガール」という名の性の奴隷としての姉の人生など。自由に生きる立場でこそおかしい、と思えることも、それが当たり前と思って生きている人たちがいまだ世界各地にいることを思うとつらいです。
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まさか三部作とは…もっと長いシリーズになるものとばかり
超超名作なのはもちろんだけど、オレックの登場がまたしても(笑)
また続編書いて欲しいなぁ
奴隷の少年 沼地の人々 -
三部作の完結編ということです。
奴隷として育った少年ガヴの運命の転変を丁寧に描いて、何とも読み応えのある書きっぷり。
西のはての都市国家エトラ。
水郷の民から幼いときにさらわれて、アルカマンドという裕福な一家の奴隷となった姉のサロと弟のガヴィア。
家族的なあたたかい暮らしの中で教育も受け、奴隷制には疑問を持たずに暮らしていましたが、幻を見る力があることだけはひた隠しに。
戦争の時期の奴隷の扱いに悩み始めます。一家の長男ヤヴンのギフトガールとなった姉も幸せそうだったのですが、理不尽な急死。ガヴは衝撃を受けて、館を出奔。
森での自由民の暮らしに加わり、学問のある若者として期待されますが、そこでも中心人物のバーナと問題が起きて、出身地の水郷の里へ。
親族を見いだしますが、おばの幻視で追っ手がかかっていることを知り、また出て行くことに。
森で再会した少女メルを連れての逃避行のはて、奴隷のいない国ウルディーレへ。
一作目の切なさや、二作目のダイナミックさを兼ね備えて、人生と世界を感じさせます。
2007年の作品、2008年8月、翻訳発行。 -
主人公・踏みつけにされる弱い者たちのひりひりするような辛さがこれでもかと展開されます。
オチに意外性はありませんが、最後に主人公のいられる場所がやっと見つかって、やっとほっとして本を閉じられました。