- Amazon.co.jp ・本 (100ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309207278
作品紹介・あらすじ
ビヨンセを始め全米が称賛したTEDスピーチ、待望の邦訳! ディオールのパリコレでも同名のロゴTシャツが登場、話題沸騰中!
感想・レビュー・書評
-
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ。「なにかが首のまわりに」で初めて知った、舌を噛むようなこの名前。今はアディーチェさんと気楽に言える。
現代の世界文学界のスター的な「女性」作家です。2013年に『アメリカーナ』で全米批評家協会賞を受賞。1977年生まれだから現在は未だ43歳か。これは2012年のTEDの講演記録。
非常に短くて直ぐに読めるが、ジェンダー問題の核心を突いて説得力がある。この講演があったから『82年生まれ、キム・ジヨン』が生まれたのか?と思えるくらい日常のさりげない性差別をキチンと突いている。
「何かをくり返しやっているうちに、それは当たり前のことになります。何かをくり返し見ているうちに、それは当たり前のことになります」(21p)
確かに文明生活が始まって以降、男性が権力の中心に座ることが普通になっていた。
「これは千年前ならうなずけます」とアディーチェは言う。
「当時、人類は身体が強靭であることこそ生き延びるための最重要特質とする世界に生きていたから」。
現代は?
「指導力のある人とは必ずしも身体的に強い人では「なく」て、むしろより知的で、知識が豊富で、より創造的で、より革新的な人です。こういった特性にホルモンは関係がありません。男性も女性も同じように知的で、革新的で、想像的です。私たちは進化したのです。ところがジェンダーをめぐる考えはそれほど進化していません」(29p)
アメリカとアルジェリアを往復し、格差と貧困、戦争と平和、黒人と白人、男と女、多くの問題で、彼女は積極的に発言をしていると言う。言っていることと、やっていることの統一性は、おそらく保たれているのだろう。1人の女性の中に、人類の多様性が存在しているように思える。ずっと注目していきたい作家である。
-
フェミニズムを語る人は正直苦手でした。
たまたま自分の目に触れた人だけかもしれないけど、テレビや新聞でフェミニズムを語る人は、どこか攻撃的だったり、ヒステリックな印象が強く、ネットはもっとひどい。で、そのフェミニズムに異を唱えるネット上の意見も、大概はフェミニズムを嘲ったりバカにしたようなニュアンスが入っているから、もうどうしようもない。
言っていることは分かるけど、言い方や議論の仕方がどうしても受け付けなくて、とりあえず距離を置く。それが自分のフェミニズムやジェンダー論に対するスタンスでした。
それが変わってきたのが、たぶん昨年にチママンダ・ンゴズィ・アディーチェという作家の作品を読んでからだった気がします。ジェンダーだけでなく人種、国、家族、様々な差別や、ステレオタイプな思い込みに関する違和を、ヒステリックに叫ぶでなく、物語に織り込ませることで、何かがおかしい、何かが間違っていることをそっと気づかせてくれる。
ジェンダーをはじめ様々な差別が、現在進行形の問題なのだと、改めて気づかせてくれました。
そんなアディーチェの2012年のフェミニズムに関するスピーチを、書籍化したのがこの『男も女もみんなフェミニストでなきゃ』
ページ数は100ページほどで、文字も詰まっておらずゆったりとしたスペース、フォントや大きさで書かれているので、すぐに読めます。
アディーチェの小説で描かれる差別というものは、とてもエピソードが具体的で想像しやすいのだけど、このスピーチもそれは健在。
具体的な話を織り交ぜつつ、平易な言葉で。感情を込めつつも、落ち着いた瑞々しくしなやかな語りで、社会に埋め込まれた女性に対する思い込みを、さらには男性観も社会に既定されていることを明らかにしていきます。
『フェミニストとは、社会的、政治的、経済的に両性が平等だと信じる者』
アディーチェの引いた辞書にはこう書かれていたそう。そしてアディーチェ自身はフェミニストを『男性であれ、女性であれ、「そう、ジェンダーについては今日だって問題があるよね、だから改善しなきゃね、もっと良くしなきゃ」という人』と定義します。
この本を読んで、今までのフェミニズムやジェンダーに関する言説の、違和感の正体が分かった気がします。それはたぶん女性の権利や搾取、社会的限界ばかりが強調されて、両性の平等の概念が無かったこと。だからそこから出てくる言説は攻撃的だし、ヒステリックに見えてしまったのだと思います。
女性が歴史的にも不利な位置にいたというのは間違いなく事実だし、それが今も続いているのも事実だし、確かにそれは正されないといけない。でもその先にあるのは、女らしさ、男らしさを越えて、それぞれが本当にやりたいことをして、真の自分を解放することが許される社会なのだと思います。
だから女性がフェミニズムを語るのはもちろん、男性も語らないといけない。なぜならフェミニストは、女性の息苦しさだけでなく、男性の息苦しさをも取り除き、社会に新たな可能性を与えるかもしれないからです。女性であれ男性であれ、規定された文化からの解放を目指す人が、真のフェミニストなのだと思います。
最近、二項対立が多すぎて嫌になります。政治を語れば左翼か右翼かとすぐに敵認定され、アメリカは白人・黒人の人種問題で揺れ、国際関係はどこもかしこもきな臭い。宗教は主流から外れた過激派が暴力で語り、環境問題ですら、温暖化はデマ・たいしたことない派とそうでない派で争っている。
人と意見が違えば、すぐに敵と認定されまともな話し合いが出来なくなる。そんな状況だから中立的な立場から物事を考えたい人や、穏やかに問題を語りたい人は、声すら上げられず、議論の場から去って行く。残るのは結局過激な意見ばかり。自分がジェンダー論やフェミニストに背を向けたのもそのせいです。
アディーチェの言葉を借りれば「改善しなきゃね、もっと良くしなきゃ」という気持ちはあるはずなのに、なんでこんな争いばかりなのか、本当に嫌になる。
この本を読むときも、実は少しだけ緊張しました。小説を読む限りは大丈夫だとは思っていたけど、もしアディーチェも今まで自分が見てきたような、「フェミニスト」だったら、素晴らしいと思った彼女の小説の見方が、変わってしまうと思ったからです。でも、アディーチェは間違いなくアディーチェでした。本当によかった……
アディーチェのこの本での姿勢には、救われた気がします。「フェミニズムは女性観だけでない、男性観にも問題がある。だからみんなで考えないといけない」この姿勢です。
きっと大事なのはどちらの立場にも、何か問題点があり、それを互いに一緒に解決しようという気持ちなのだと思います。世界もそして自分ももっと穏やかに、そして大人にならないといけないのだと、この本を読んで考えました。 -
わたし自身の、フェミニストの定義は、男性であれ女性であれ、「そう、ジェンダーについては今日だって問題があるよ」、だから改善しなきゃね、もっと良くしなきゃ」という人です。
女も男も、私たち「みんな」で良くしなければいけないのですから。
ー本文より引用
著者はアフリカ人小説家。彼女の著者で私が読んだことがあるのはパープルハイビスカスだけだが、その本が良かったので、また著書を事前に読んで受け取ったメッセージから、本書の本題「フェミニスト」を彼女がどのように取り上げて語るのか。興味があったので読んだのです。
とても読みやすい!明朗快活に自身のフェミニストとしてのあり方を語っている。
「男嫌いではなく、男性のためではなくて自分のためにリップグロスを塗ってハイヒールを履く、ハッピーなアフリカ的フェミニスト」
皮肉をこめつつチャーミングに自身をそう語る。
改めて、フェミニストという言葉の本質を教えてくれる本だと感じた。
短くて読みやすいので、気になる方はぜひ読んでみてほしい。
私は彼女の他の本もまた読んでみたくなった。 -
「そう、ジェンダーについてつらい思いをしてる人いるよね。だから良くしなきゃ」
そう思ってる人はみんなフェミニストだと、私も思う。
言葉のリセット、賛成です。 -
この本はアフリカのナイジェリア出身のチママンダ・ンゴズィ・アディーチェさんがTEDスピーチ(動画で見られる)で語った内容を翻訳したものだ。
彼女は「人間を取り巻く環境は1000年前と明らかに違うのに、性別による役割は変わることなく人々に観念として根付いている」と語っている。
なぜ女だから、男だから'こうするべき'という考えにとらわれ続けてしまうのだろうか。
男も女もジェンダーの問題があることを一緒に考えよう、と伝える彼女は、新時代のフェミニストだ。
彼女が書いた、「アメリカーナ」も読んでみたい。
図書館便りで紹介した。2018.1.18 -
男も女もみんなフェミニストでなきゃ。チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ先生の著書。フェミニストという言葉は素晴らしいけれど、日本ではどこかネガティブなイメージも残っている。フェミニストを自称する男性は他の男性から変わり者扱いされることもあるようだし、フェミニストを自称する女性は自己主張の強い面倒くさい人間というレッテルを貼られがち。でも、男性も女性もより幸せになれる世界を作るためには全員がフェミニストになることが一番の近道。フェミニストという言葉を改めて考えさせらる良書。
-
ああ、僕は男だからフェミニストにはなれないんだな、と日本のフェミニズムの本を読んで強く感じさせられた。それをはっきりと告げている本もあったし(どの本だったかは忘れてしまったが)、言外に匂わす本もあった。
いずれにせよ、「これは私たちが勝ち取ったもの、育ててきたもの、男には渡さない」、そんな感じだ。
そして彼女たちの言動についていけないな、という感じがどんどんと強くなった。
それと同時に、「フェミニズム(フェミニスト)」という語が、急速にその効力を失っていくのも感じていた。
「もう十分男女平等じゃん、これ以上何を望むの?」
ネットはそんな言説で溢れかえっている。
しかし、僕はやはりそうだとは思わない。かといって、今の日本のフェミニズムには共感できない。
そんな僕に、この本の極めてシンプルなメッセージは懐かしいものに感じられた。僕が最初に感じた些細な違和感みたいなものこそが、大事なのだと再確認できた。残念ながら今僕は自分のことを「フェミニスト」だと言うことはできない。でもやっぱり、少しはそうなのだと思いたい。そう考え直した。 -
-
ドイツのアンゲラ・メルケル首相、ついに「私はフェミニスト」宣言 | カルチャー | ELLE [エル デジタル]
https://www.e...ドイツのアンゲラ・メルケル首相、ついに「私はフェミニスト」宣言 | カルチャー | ELLE [エル デジタル]
https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a37535077/angela-merkel-i-am-feminist-210910/2021/09/10
-
-
フェミニストって何?って聞かれるとワンピースのサンジみたいな感じじゃない?って思っていた私にとって、フェミニストとは、をちゃんと教えてくれた本。
この頃女性専用車両についてSNSでもめたり色々あるけど、皆この本読んだらいいんじゃない?アフリカの女性の方の本だから、そんな文化あんのかーと他人事が少し入りつつ読めるので、男の人もわがままな日本人女性の主張!みたいな感じじゃなくて気軽に読めると思う(誤解を恐れず言うと、同じ言語・文化を持つ男女ではお互い少し貶す気持ちが出てしまうと私は感じる)
本を読んだ私から女性専用車両のことをいうとすると、女だけ特別視するのはおかしい、じゃなくて女にも電車を安心して利用してもらうため、という男女の平等を図るため になるかなぁ
男の人が痴漢されるケースは女の人に比べて明らかに少ないと思うし…… -
図書館で。
暫くの間ずっと貸出中だったからどれだけ厚い本なんだろう?と思ったら演説をまとめたものなのですぐ読める本でした。
フェミニストと言う言葉に対するイメージが悪いのは何故なんだろうなぁとは思います。女性の方が歴史的にも今も男性に比べて不当な扱いを受けているという事は程度の差こそあれ、女性だったらそうだよな、と納得するとは思うのだけれども男性でどれだけの人がそれをわかってくれるかと言ったら難しいだろうな、と思います。
ただ、女性だって男性の、社会や家族からかけられているプレッシャーを本音の部分でわかってあげられるか、と言われたら難しいだろうなぁと思うわけです。
男性が、女性が、ではなくその人の得意な分野や秀でている面で協力しあって共存できる社会というものを作ることが一番大事なんだとは思うんですけどね。そう言う意味では女性も男性も互いを尊重して認め合う必要があるとは思います。
まあとはいえ、一部の男性が女性という性を徹頭徹尾、否定するのは何でなんでしょうかねぇ?とは思います。彼らは自分は木の股からでも生まれたかもしくは父の頭から生まれたとでも思ってるんですかね?そういう意味ではやはりフェミニストが増える事の方が世界的には重要かもしれません。
「舌を噛むようなこの名前。」
エスペランサの部屋: 「チママンダ」は創作された名前だった! わお!
https:...
「舌を噛むようなこの名前。」
エスペランサの部屋: 「チママンダ」は創作された名前だった! わお!
https://esperanzasroom.blogspot.com/2021/01/blog-post_6.html
ありがとうございます。
よくまあ、こんな情報拾ってこれますね。
でも舌噛んだのは、ンゴズィの方かな(こちらは本名)。
チママン...
ありがとうございます。
よくまあ、こんな情報拾ってこれますね。
でも舌噛んだのは、ンゴズィの方かな(こちらは本名)。
チママンダも伝統的な名前のようだし、筆名変えるのは理解出来るし、そんな驚きません。
あーそうですよね、ンで始めないですけら、、、
あーそうですよね、ンで始めないですけら、、、