孔子の哲学 (シリーズ・道徳の系譜)

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (139ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309242934

作品紹介・あらすじ

『論語』はアンチ・ヒューマニズムのブルースだ。「中庸原理主義」を扇動する不穏な思想家・孔子。

感想・レビュー・書評

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  • 独創的なスタイルの文芸批評を展開している著者が、現代にまでとどけられた孔子の声に耳を傾け、思想的対話を試みている本です。

    本書は、「仁のパラドックス」と著者が呼ぶ問題をめぐって議論が展開されていきます。このパラドックスは、一方で「子の曰はく、仁遠からんや。我れ仁を欲すれば、斯に仁至る」といわれながら、他方では「曾子の曰はく、士人は以て弘毅ならざるべからず。任重くして道遠し。仁以て己れが任と為す、亦た重からずや。死して後已む、亦た遠からずや」と述べられていることにもとづいています。つまり一方では、仁はたやすいものとされながら、他方ではそれに達することはきわめてむずかしいとされているのです。

    著者はこのパラドックスを解くにあたって、アレンカ・ジュパンチッチのカント解釈を参照していますが、著者の考えはとくにジュパンチッチの議論を迂回する必要はなく、むしろ「為すべきなるがゆえに為し能う」という、カント倫理学の中心的な考えに共鳴しあうもののように思えます。

    もちろんこうした著者の議論は、孔子の思想を歴史的に位置づけるようなものとはまったくかけ離れたものですが、井上靖や山本七平のように孔子を近代人にしてしまうような解釈と同一視するべきではないと考えます。むしろ著者は、現代とはまったく異なる歴史的な位置にある孔子の思想が、これほどまでに現代のわれわれを動かすような力をもっているのはなぜなのかという問いに向きあい、孔子のことばの重みを体験することによって、孔子の提出している「仁」をめぐる問いに参究しようとする著者自身の足取りが示されているように感じられます。

    とにかく、型破りな本ではありますが、たいへんおもしろく読めました。

  • [ 内容 ]
    『論語』はアンチ・ヒューマニズムのブルースだ。
    「中庸原理主義」を扇動する不穏な思想家・孔子。

    [ 目次 ]
    第1章 人生の根源的な“容易さ”について(「狂」としての孔子;「仁」の内面的解釈;「仁」の外的解釈 ほか)
    第2章 仁者はさまざまな人間的「領域」を駆け巡る(「仁」とは人間性をはみ出すものだ;どんな行為にも「仁」にかなったものとそうでないものがある;「中庸」原理主義者であれ! ほか)
    第3章 世界のただ中にあって「仁」をもって人生をまっとうする(孔子と老荘哲学;人生をゲーム化し美しくプレイする)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 孔子を哲学するとこうなるようです。主に「仁」について、色々な思想家の例をだして解説しています。哲学は良くわからないので著者の語っていることの半分もわかりませんでしたが、論語には色々な読み方があるという事がわかりました。

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